古くて新しい感染症 結核! ~入国前結核検査が義務化~

長い間「国民病」と恐れられていた結核。
50年前までは、年間死亡者数も10数万人を超え、死亡原因の第一位を占めていました(厚生労働省「人口動態調査」より)。

結核は現代の病気です

現在の日本では、医療や生活水準の向上で完治する疾患となりましたが、依然として海外(特にアジアやアフリカなどの発展途上国:図1)では、年間約140万人が結核で亡くなっています。

また、諸外国からの訪日外国人旅行者は年々増加し続け、2017年度には約2,870万人(前年度比19.3%増:出典 日本政府観光局)となり、今後もますます増え続けるであろうと思われます。
このような背景から政府は、留学や就労などで、日本に3か月以上の長期滞在を予定するアジアなどの国々から日本を訪れる外国人に対して、日本指定の現地病院で事前に結核の検査を受けるよう求める方針を固めました。
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに態勢を整えるとされています。

<図1>
結核

現行の出入国管理法でも、結核患者の日本入国は認められていませんが、自己申告制であるため、感染していても自覚症状がなければ、申告せずに入国できてしまいます。
国際便が発着する空港などでは、体温を感知するサーモグラフィー検査も行っていますが、結核患者を把握することは難しい現状です。
今後の運用では、日本政府が指定した現地の医療機関を受診し結核感染の有無を調べて、感染していない場合は、非罹患証明書を発行してビザ申請時に提出し、感染している場合は完治した証明書を提出の上ビザを発行するといった事前検査制度が年内にも導入される見通しです。

結核はどんな病気

結核の初期症状ははっきりしたものがなく、風邪の症状に似ています。
しかし、風邪のようで風邪ではない、人から人へうつる「感染症」です。
咳やタン、倦怠感、微熱が2週間以上続いたり、体の具合が良くなったり悪くなったりを繰り返すところが風邪の症状と違います。
少しおかしいなと思ったら病院受診をしてきちんと検査をしましょう。
早期発見が適切な治療につながり、さらには集団感染を防ぐことにもつながります。

まとめ

アジアやアフリカ等のまん延国において、結核は深刻な健康問題ですが、日本においても現在の治療薬では効かない結核が増える兆しをみせており、決して他人事ではありません。
結核は昔の病気でもまん延国だけの病気でもなく、われわれ日本人にも身近な病気です。
普段から個々人が予防意識を持って、定期検診をきちんと受ける、咳が出るときはマスクを着用する、風邪のような症状が続いたら早めに病院にかかる、ということが現代の社会的マナーであり、結核を減少させることにつながるのではないでしょうか。

<参考>
・ 厚生労働省「人口動態調査」
・ 厚生労働省「厚生科学審議会(結核部会) 」
・ 日本政府観光局「訪日外客統計」

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