業務上災害以外の理由で休むときは
業務上災害による休職に対し、業務以外の原因でケガをしたり病気になって休職することを「私傷病休職」といいます。
この場合、有給休暇を取ったり、病気欠勤の形で休みますが、休みが長期間に及ぶ場合、使用者に医師の診断書を添えて私傷病休職を申し出るのが一般的です。
私傷病休職については、法律上の定めがないため、各事業所が定めている就業規則の休職規定に従って休むことになります。
取得できる休職期間は事業所によりさまざまで、1ヵ月から3年程度と幅があります。
なかにはそうした休職制度がない事業所も少なからずありますので、まずはご自身の事業所の就業規則を確認してみてください。
私傷病休職中の賃金
休職中の賃金については、これも就業規則の定めによります。
3ヵ月から半年は全額を支払ってくれるという事業所もありますが、有給休暇を使い果たしてしまえばあとは無給というところがほとんどです。
こうした場合、健康保険法に基づく協会けんぽ・組合健保等に加入していれば、健康保険法第99条の定めに基づいて傷病手当金を受け取ることができます。
<健康保険法>
傷病手当金
第99条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第102条第1項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。
2 傷病手当金の額は、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の30分の1に相当する額(その額に、5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げるものとする。)の3分の2に相当する金額(その金額に、50銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、50銭以上1円未満の端数があるときは、これを1円に切り上げるものとする。)とする。ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が12月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の3分の2に相当する金額(その金額に、50銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、50銭以上1円未満の端数があるときは、これを1円に切り上げるものとする。)とする。
一 傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額(その額に、5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げるものとする。)
二 傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の30分の1に相当する額(その額に、5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げるものとする。)
3 前項に規定するもののほか、傷病手当金の額の算定に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。
4 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して1年6月を超えないものとする。
復職の申出書に、医師の診断書を添えて会社に提出します。(様式や手続き等は就業規則に定めがあればそれに従います)
復職させるかどうかの最終判断は会社が行いますが、産業医の診察を義務づけることがあります。
また、休職期間は終了したけれども働ける状態ではないとき、就業規則に退職、または解雇する旨が定められていれば、その規定により自動退職または解雇となります。
しかし、勤務の継続を希望していて、一定期間休職期間を延長してもらえれば復職可能という場合は、主治医、産業医、使用者に相談しましょう。
復職と異動・配置転換
復職にあたり、労働者がもとの業務に従事するにはまだ十分に回復していない場合、医師や産業医が労働者の健康を配慮して、軽易な職務へ配置転換を支持することもあります。
使用者には、労働者の生命・健康を保護する安全配慮義務(労働安全衛生法第71条)があるためです。
<労働安全衛生法>
国の援助
第71条 国は、労働者の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るため、必要な資料の提供、作業環境測定及び健康診断の実施の促進、受動喫煙の防止のための設備の設置の促進、事業場における健康教育等に関する指導員の確保及び資質の向上の促進その他の必要な援助に努めるものとする。
2 国は、前項の援助を行うに当たつては、中小企業者に対し、特別の配慮をするものとする。
原則として、リハビリテーションとしての配置転換は、労働者の体調が戻った際は元の職務に復帰できますので、問題はありません。
しかし、配置転換は労働者の職種の変更をもたらし、賃金の減額をもたらす場合は注意が必要でしょう。
特に、労働者が元の職場への復帰を希望した場合、使用者から職種変更を指示され、「職種変更に応じないと、あなたの戻る場所はないので、辞めてもらいたい」と言われた場合、労働者がこれを拒否できるかが問題となります。
このような告知を「変更解約告知」といいますが、裁判例では職種を限定した労働契約の場合には、解雇権の濫用や整理解雇の法理で解決できるものとされています。
復職にあたり、トラブルを抱えた場合は、社内の労働組合や、県の労働センター、弁護士などに相談をしてみましょう。
業務以外の原因でやむを得ず長期休職となった場合でも、業務上災害と同様に労働者を保護する制度があります。
困ったときにはぜひ参考にしてください。