「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書が公表されました~キーワードはニーズの変化への対応~

「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書が公表されました~キーワードはニーズの変化への対応~

「労働時間制度」の今までとこれから

現在は、新型コロナウイルス感染症第7波のさなかとされています。
以前のように行動制限などが行われる予定は本稿執筆時点ではないものの、コロナ禍はまだまだ続きそうですね。
さて、コロナ禍になり働く皆さまの周りではテレワークなど、出社するしないにこだわらない、多様な働き方が急速に広まったことと思います。
2022年7月15日、厚生労働省の「これからの労働時間制度に関する検討会」の報告書が公表され、労働時間に関する今後の考え方や課題が示されました。
今回はこの報告書の内容を大切なところをピックアップしながら解説していきます。

日本は少子高齢化が進み、生産年齢人口がどんどん少なくなっていることから、企業間の人材確保競争が激化すると予想されています。
また、産業構造の変化やデジタル化の加速もあり、働く人々の意識や働き方、企業が求める人材にも以下のような変化が出ています。

・ 時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のニーズが高まる
・ デジタル化の進展に対応できる、創造的思考などの能力がある人材が求められる

重要なのは「コロナ禍でニーズがあったから●●を導入しました」だけで終わるのではなく、その導入した制度が労使のニーズや社会的要請に適応しているのか、常に検証を行う必要があるということです。
片方のニーズだけを叶える制度ではいつか綻びがうまれますし、情勢が変われば必要なものも変わります。

・ 労使双方の多様なニーズに応じた働き方であるか
・ 労使当事者が十分に協議したうえで、その企業や職場、職務内容にふさわしい制度を選択、運用できるか

上記の視点で労働時間制度は考えましょう。
もちろん、労働者の健康が守られるかどうかは必ず土台にしましょう。

さまざまな「労働時間制度」の現状と課題

「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」では以下9つの労働時間制度の現状と課題についてまとめています。

1 法定労働時間、時間外・休日労働等
2 変形労働時間制
3 フレックスタイム制
4 事業場外みなし労働時間制
5 裁量労働制
6 高度プロフェッショナル制度
7 適用除外(管理監督者等)
8 年次有給休暇
9 その他(勤務間インターバル制度など)

報告書の10~14頁にかけて、それぞれ現状と課題について記載されているので、皆さまの会社で運用中の制度についてはぜひ確認してください。

ちなみに、各労働時間制度の適用労働者の割合推移は以下の図のとおりです。

 

変形労働時間制が上位にいますが、ここ数年は伸び悩んでいます。
かわりにフレックスタイム制がじわじわ伸びてきていますが、フレックスタイム制も変形労働時間制の一種ではあるので、両者に共通する、業務量に合わせて労働時間をフレキシブルに設定できるという点が、現状のニーズに合っているのかもしれません。

フレックスタイム制についてはこちらの記事もご覧ください。

裁量労働制のこれから

さて、報告書では特に「裁量労働制」について詳しく記載されています。
務遂行手段や時間配分等を労働者の裁量に委ねて労働者が自律的・主体的に働くことができるようにすることによって、労働者自らの知識・技術を活かし、創造的な能力の発揮を実現することが制度の趣旨ですが、先の図にもあるように適用労働者は非常に少ないです。
なかなか適用労働者が増えない、企業内で導入が進まないこの裁量労働制について、検討会は制度の趣旨に沿った運用ができれば、労使ともにメリットがある働き方ができると指摘しています。
当たり前ですが、趣旨に沿っていない運用は濫用につながるため防止する必要があります。
運用を見直す軸として4つ挙げられており、可能なものは速やかに実施してほしいとしています。

1 対象業務
2 労働者が理解・納得したうえでの制度の適用と裁量の確保
3 労働者の健康と処遇の確保
4 労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保

裁量労働制適用労働者の1日の平均実労働時間は非適用労働者よりも若干長いと報告されていますが、制度適用への不満は少なく、健康状態が悪化するともいえない結果です。
労使コミュニケーションをきちんと取り、労働者が制度について十分理解したうえで適用される仕組みにすることが重要なようです。

今後の課題

労働者にニーズに沿った多様な働き方が選択できるようになった、その大きな追い風になったのが新型コロナウイルスの感染拡大なのは間違いないのですが、柔軟な働き方の整備に関しては2019年4月から「働き方改革関連法」として順次施行されています。
この働き方改革関連法は施行5年後(2024年)に施行状況等をふまえた制度の検討を行うこととされていますが、労働時間制度についても、将来を見据えた検討を行う必要があります。
たとえば、とにかくいろんな制度があれば労働者が選べるでしょう!といろいろ導入したはいいものの、複雑化してわかりにくくなっていませんか?
労使と双方にとってシンプルで分かりやすいものにしていくことが重要で、そのための体制整備はしっかり行いましょう。

あるいは、制度の導入に必死になり、その制度で働く労働者の健康確保がおざなりになっていないでしょうか?
労働生産人口の減少もさることながら、働き方の多様化が今後も見込まれる中で、働く人たちの健康確保はより重要になってくるでしょう。
多様な働き方に対応した労働時間の状況の把握の在り方、労働者自身が行う健康管理を支援する方策等について、検討を行っていく必要もあるでしょう。

そもそも、さまざまな労働時間制度を導入する理由は「働く人がより働きやすく、生産性を向上させるために、その人にあった働き方を選択できるようにするため」なので、正しく適用されれば労使双方にメリットがあるはずです。
その趣旨を忘れずに、導入できそうな制度からぜひ検討してみてください。

<参考>
・ 厚生労働省「『これからの労働時間制度に関する検討会』の報告書を公表します」

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中川果穂株式会社ドクタートラスト 広報

投稿者プロフィール

幸福度や労働生産性が高いと評される北欧(ノルウェー)へ留学した際、仕事に対する日本と北欧の良いところ悪いところをひしひしと感じてきました。この良いところをお伝えすべく、北欧の労働環境などに関しての情報はもちろん、身近な話題や疑問を分かりやすくお仕えできるよう日々勉強中です!
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