ニュースなどで取り上げられ、「過労死」という言葉はかなり広まりました。
過労死とは、長時間の労働や 業務における過多な肉体的・精神的な負担により死にいたることを言い、長時間労働が習慣的になっている日本企業における特徴的な現象として「karoushi」は英語でも通じるそうです。
過労死には大きく分けて2種類あり、一つは業務における過度な負荷による脳血管疾患・心臓疾患による死亡、もう一つは強い心理的負荷によるうつ病などの精神障害による自殺とされています。
今回は、先日厚生労働省で行われた「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において、過労死の判定基準について20年ぶりの改定案が報告書として公表されたのでご紹介します。
大幅には変わらず、基準が追加に
「長期間にわたる疲労の蓄積」と「発症に近接した時期の急性の負荷」が 発症に影響を及ぼすとする現行基準の考え方は変わらず、追加で新たな基準が取り入れられています。
① 残業時間
<現在>
・ 発症前1ヶ月間の時間外・休日労働時間が100時間超
・ 発症前2ヶ月~6ヶ月の平均時間外・休日労働時間が80時間超
+
労働時間以外の負荷
<追加予定>
現在の基準に至らないがこれに近い時間外・休日労働時間
+
労働時間以外の負荷
② 労働時間以外の負荷
<現在>
・ 勤務形態(不規則勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交代制勤務・深夜勤務)
・ 作業環境(温度環境、騒音、時差)
・ 精神的緊張(日常的に精神的緊張を伴う業務、発症に近接した時期における精神的緊張を伴う業務に関連する出来事)
<追加予定>
・ 勤務間インターバルが短い勤務
・ 休日のない連続勤務
・ 身体的負荷を伴う業務
③ 対象となる疾病
<現在>
脳血管疾患(くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、高血圧性脳症)
虚血性心疾患(心停止、心筋梗塞、狭心症、解離性大動脈瘤)
<追加予定>
重篤な心不全
残業時間の引き下げは行われず
WHO(世界保健機関)とILO(国際労働機関)は週55時間以上の労働、つまり月60時間以上の時間外労働で「深刻な健康被害をもたらす」との内容の報告書を発表しており、世界的にも長時間労働は問題視されています。
今回の検討会でも、労働問題を扱う弁護士などからは過労死ラインの引き下げが提案されていましたがそれは実現せず、考慮される事項が広がるにとどまりました。
WHO発表「長時間労働が原因で年間74万5000人以上が死亡」
WHOとILOの調査によると、2016年に長時間労働が原因の脳卒中や心臓疾患でなくなったのは74万5194人で、2000年に比べて29%も増加しています。
また、週55時間以上働いた場合と週30時間~40時間働いた場合を比較すると、週55時間以上働いた場合は脳卒中を起こす確率が35%高くなり、心臓疾患については17%高くなりました。
調査は2016年ですのでコロナの影響は含まれていませんが、最近の在宅勤務の急増や経済の減速したことで、長時間労働がより増えるのではないかとされています。
コロナ禍でテレワークが広まり、会社や管理監督者の目の届かないところでサービス残業をしたり、社内連携にかかる手間が増えて長時間労働になってしまっているような方もいるかもしれません。
過労死までいかなくとも、長時間労働による健康被害は他人事ではありません。
テレワークだけでなく、より効率化につながる働き方改革が求められるでしょう。