不妊治療と仕事を両立させるために企業ができること

菅首相が看板政策の一つにあげている不妊治療の保険適用拡大に期待が高まっていますが、不妊治療を行う上での壁は金銭面だけではありません。
男性も女性も、仕事との両立が困難であることが課題となっています。
今回は現在進行中の「不妊治療を受けやすい職場環境整備に向けた検討会」で示された今後の取組方針案をわかりやすく紹介します。

不妊治療と仕事との両立の難しさ

厚生労働省の調査では、仕事と並行して不妊治療を受けている人の87%が「両立は難しい」と感じていると回答しており、治療を断念した人が11%、両立できずに仕事を辞めた人が男女合計では16%、女性でみると23%もいました。
両立を難しくしているのは「通院回数の多さ」「精神面での負担の大きさ」「通院と仕事の日程調整の難しさ」が大きいようです。
また不妊治療していることを職場に伝えているか?という問いに対しては「一切伝えていない」という回答が最も多く、職場に知られたくない人もいるため、プライバシーに配慮しながら通院ができるような職場環境の整備が必要となっています。

今後の取組方針案

今回の検討会で決定した取組方針案は以下のとおりです。

社会的機運の醸成に向けた取組(企業・職場や社会の理解促進)

制度整備を促す前提として、職場の上司や同僚、会社のトップ、そして社会全体として理解・関心を深めるため、以下の取組があげられています。

・ 経済団体への要請 ・事業主等向けシンポジウム
・ 子育て応援コンソーシアムによる先進的取組事例の共有・横展開
・ SNSでの情報発信など

不妊治療と仕事の両立のための職場環境の整備(事業主の取組促進)

職場環境整備に向けて、企業に対し制度を導入・運用してもらうため、以下の取組があげられています。

・ 通院しやすい休暇・働き方の制度
①半日単位・時間単位の年次有給休暇制度
②不妊治療のために利用できる特別休暇制度(多目的・特定目的)
③時差出勤やフレックスタイム制等の柔軟な働き方
・ くるみん認定を取得するための事業主の計画策定項目(次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針)を改定し、整備推進を促す
・ 企業の取組支援:事業主向け休暇制度等導入支援セミナーの開催
・ 不妊治療を受けやすい職場環境整備に取り組む中小企業向け助成金
・ 都道府県労働局による周知啓発・相談支援

不妊治療等に関する情報提供・相談体制の強化

不妊治療は平均約2年と長期的な戦いとなります。
その中で専門の医療職や不妊治療経験者などのサポートを受けることができるよう、すでに窓口などの設置を行っていますが、より強化するための取組があげられています。

・ 不妊専門相談センター(全国81カ所に設置済)のきめ細かな整備を進め、不妊に悩む方等に対する情報提供・相談体制を充実・強化
・ 不妊治療と仕事の両立に関する相談についての不妊専門相談センターと都道府県労働局との連携体制の構築

実際に導入している事例紹介

2020年3月に厚生労働省が公表した「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」では実際に支援制度を導入している企業が紹介されています。
株式会社ダッドウェイでは「こうのとりサポート制度」という不妊治療および養子縁組の費用を12万円/年、最大5年間、60万円まで補助する制度を導入しています。
また「ファミリーサポート休暇」という、最大7日から最小1日の範囲で不妊治療だけでなく家族の介護・看護、また ペット・子ども・同居者関連の用事等でも取得可能な休暇制度も利用できるそうです。
他の紹介されている企業でも、「不妊治療休暇」という名称ではなく、プライバシーに配慮して使いやすい名称にしている企業が多いようです。
2017年の調査では、不妊治療を行っている従業員に対し、実際に何か支援・制度を導入している企業は3割程にとどまっていました。
今回の取組によって、制度導入が広まり、社会全体としても理解・関心が深まることを願います

<参考>
・ 内閣府「不妊治療を受けやすい職場環境整備に向けた検討チームについて」
・ 厚生労働省「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」

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須田 友梨佳株式会社ドクタートラスト 大阪支店

投稿者プロフィール

大学卒業後に入社した会社では「働き方改革」が足かせとなり、残業できず苦しむ社員や余計に仕事が増えてしまうような状態をみてきました。働く人達が、健康に前向きに働くことができる職場環境を目指して、勉強し発信していきたいと思います。
【保有資格】健康経営アドバイザー
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