働き盛りの方でも要注意!コロナ禍なのに梅毒が急増中~症状がないってほんと?~

梅毒の患者数が増加しているのをご存じですか?
2022年7月に国立感染研究所の発表によると、1~6月の上半期で患者数が5615人で、このまま増加傾向であれば年間で1万人となり、1999年の調査以来、過去最悪の人数になる予想です。
東京都では、女性は20代、男性は30代で多く、働き盛りの方にも「自分と関係がない」とは言い切れない状況です。
今日は改めて梅毒について簡単に紹介していきます。

コロナ禍なのに梅毒?


以前の梅毒の記事では、2018年にも梅毒の患者数が増えていることから、原因の一つとして「海外からの渡航や海外への渡航が増えている」可能性があると紹介しました。
しかし現在は海外の渡航も減り、来日観光客も少ないのはご存じの通りです。

コロナ禍で「非接触」、「三密回避」となっているにも関わらず、一体なぜでしょうか?

明かな要因はわかりませんが、SNSでの不特定多数との関わり、いわゆる「パパ活」の流行や不景気などが関係している可能性があります。
また、コロナ感染を懸念して慎重になっているなかで、異常があっても病院に行きづらく、受診控えに繋がった方もいるかもしれません。

そもそも梅毒とは

梅毒は細菌である「梅毒トレポネーマ」が感染することで生じる感染症のことです。
主に性行為で粘膜や傷から感染します。
慢性の感染症の一つであり、自然に治癒することはなく、治療を行わないと10年進行が続くこともあります。
症状がなくても人を感染させることがあり、膣や肛門だけでなく、キスや口腔性交でも感染し、性行為の経験があれば誰でも感染する可能性がある病気です。
感染しても免疫ができないため、梅毒を完治しても、何度でも感染してしまいます。

また、妊娠前・妊娠中に梅毒に感染してしまうと、おなかの赤ちゃんも梅毒に感染してしまうこともあり、死産・早産・新生児死亡・障害をもって生まれることがあります。
妊娠時の初期の健康診断で検査を行いますが、検査後にも感染のリスクがあるので、心配なことがあれば主治医に相談しましょう。

そして、早期に抗生物質を使用すれば治りやすい病気です。
抗生物質の内服で治療することが多く、場合によっては入院を行い、点滴で抗生物質の治療を行うことがあり、抗生物質を確実に飲み切ることが必要です。

<梅毒の症状>

症状が出ても痛みがない、症状がないこともあり、感染後の経過した期間によって症状の出る場所や内容が異なります。

感染後約1か月で、感染した場所(性器、肛門、口など)にできもの、しこり、ただれができたり、痛みがない口内炎ができることもあります。
治療しなくても、数週間で症状が消えてしまいますが「治った」と言うわけではありません。
なお、感染力がもっとも高い時期ともいわれています。

その後、治療をせずに過ごすと、約3か月後では、手のひらや足の裏など全身に発疹が出てきます。
小さなバラの花のようなので、通称バラ疹と言われています。こちらも治療しなくても数か月で症状は消えてしまいます。

さらにその後、治療を行わないと、症状がないまま皮膚や内蔵で静かに進行し、心臓、血管、神経の異常が現れることもあります。

検査はどこで?予防は?

梅毒に感染しても症状が出ない人もいるため、検査を受けないと感染したかどうかはわかりません。
パートナーが梅毒になった、など気になることがあれば検査を行いましょう。検査は感染したと考えられる期間から4週間以上経過してから行うのがポイントです。
診断は細菌の検出や血液検査で行います。

検査を受けられるのは保健所やクリニックなどです。
保健所では無料で匿名の検査を受けることができ、自治体によっては平日の夜間や土日にも受けられるところがあります。
なお、クリニックの受診先としては、皮膚科、性感染症内科のほか、男性だと泌尿器科、女性は産婦人科です。
口腔内で異常を感じる場合は耳鼻咽喉科でも差支えありません。

少しでも気になる症状が出ている場合は必ず受診をしましょう。
受診時には感染の可能性がある時期や予防の有無(コンドームの使用等)について医師に伝えるので、受診前に情報をまとめておくとスムーズです。
不安が少しでもあれば、保健所で相談ができます。
また、企業によっては、梅毒とHIVに関する検査を社員が匿名で受けられ、かつ企業側では確認できないような取り扱いを行い、個人情報に配慮して対策を行っていることもあるようです。

以下のサイトで梅毒に関して動画やeラーニングで学ぶこともできます!
★東京都性感染症ナビ「Webで学ぶ梅毒」★

加えて予防についてです。
100%効果があるわけではありませんが、感染した部分と粘膜や皮膚が直接接触しないように、コンドームを使用することは感染予防には有効です。
しかし、コンドームが覆っていない部分の皮膚等でも感染がおこる可能性があります。

少しでもおかしいな、心配だなと感じることがあれば、後回しにせず検査を受けてください。

<参考>
・ 東京都性感染症ナビ「梅毒」
・ 国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報ダウンロード2022年「2022年第28週(第28号)」

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中森チカ株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学病院の病棟勤務(循環器内科・糖尿病内分泌科)を経て、地域包括支援センターの保健師として高齢者総合相談、介護予防事業などに従事。ドクタートラスト入社後は、セミナーの実施や年間100件超の保健指導やカウンセリング業務に携わっている。
セルフケアやレジリエンス、アンガーマネジメントの研修、またこれまでの経験から、生活習慣病に関するセミナーが得意。
「楽しく元気に働ける人を世の中に増やしていく」が保健師としての目標。心身の健康や予防が大切だと痛感したことから、「行動が変わる、考え方が変わるきっかけ作り」に邁進中。
また育児や治療、介護と仕事の両立をサポートし、よりきめ細かく対応できるよう、思いやりの心を持って働いている。
【保有資格】保健師、看護師、公認心理師、国家資格キャリアコンサルタント、第一種衛生管理者、人間ドック健診情報管理指導士
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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