感染者急増中! 梅毒ってどんな病気?

梅毒は昔の病気?

梅毒というと「昔の病気」というイメージがありますが、近年梅毒にかかる人が急増しています。
平成22年頃までは年間600人という患者数で横ばいで推移していたのが、平成22年を境に増加に転じ、平成28年の報告では約4,500人、平成29年は暫定数で5,000人を超える報告がありました。
現在でも世界的にみると多くの人が感染していますが、その90%以上が発展途上国での発生で、それ以外の地域では世界的にも減少しているはずなのです。
ではなぜ、今「昔の病気」と思われていた梅毒が急増しているのでしょうか?

症状が出ても見過ごすことも

梅毒は梅毒トレポネーマによる感染症で、主に性感染によって広がり、妊娠時の感染によって母子感染を起こすケースもあります。
ペニシリンという抗生物質で治療できることが分かってからは劇的に死亡率が減りましたが、有効な治療が開発される以前は、何年にも渡って苦しみ、最後は全身に症状が出て死に至る病気として非常に恐れられていました。

梅毒にかかると、まず感染が起きた部分にしこりや潰瘍ができます。
また、足の付け根の部分のリンパ節が腫れてくることもあります。
この時期が最も人に移しやすい時期なのですが、しこりやリンパ節の腫れは、痛みを伴わないことが多く、特別に治療をしなくてもしこり・潰瘍自体は自然によくなってしまうため、梅毒と気付かず人に感染を広めてしまうことがあります。

このしこりや潰瘍などの症状は自然に治っても、体の中から梅毒トレポネーマは消えないので、症状がないまま病原体を体の中に持っていることになります。
このまま治療をせずに3ヶ月以上経過すると、今度は手のひら・足の裏・体全体に赤い発疹が出てきます。

しかし、この発疹もまた自然に治ることがあるため、体の中に梅毒があるけれど症状がないという状態が続くことがあるのです。
このような状態を治療しないまま繰り返していくと、段々と症状が悪化し全身の症状へと広がっていくというのが梅毒なのです。

梅毒の検査と治療

梅毒に感染しているかどうかは、血液検査などで簡単に診断することができます。
感染の初期ではうまく判定できないこともあるため、いくつかの項目を組み合わせて検査を行い診断しています。
現在男性では30〜40代、女性では20代の感染が特に多くみられています。
症状で当てはまることがあれば、早めに検査を行うことをおすすめします。
皮膚科ではもちろん女性なら婦人科、男性なら泌尿器科などで検査が受けられるほか、自治体によっては保健所などで血液検査を実施しているところもあります。

なぜ梅毒が増えたのか?

なぜこの7〜8年で梅毒が急増しているのか、実際のところはっきりとした原因はわかっていないのが現状です。
しかし、いくつか推測されている原因として、まず日本人全体が(医療者も含めて)「梅毒は昔の病気だから今さらかからないだろう」と考えていることがひとつ挙げられます。
先ほど述べたように、梅毒の初期の症状は治療しなくても自然におさまってしまうことがあるため、「ブツブツができたけど、自然に治ったから悪いものじゃないだろう」と判断してわざわざ病院に行かなかったり、医療者側も自然に治ったなら様子を見ようと思い、見過ごしてしまうことがあるのです。
そして、知らないうちに感染を広めてしまっていることがあります。

他に考えられる要因としては、ここ10年で海外からの渡航者数と海外への渡航者数が劇的に増えており、多くの人がさまざまな国を往来するようになり、感染する機会が増えたことも示唆されています。
いずれにしても現在では「梅毒かもしれない」と考える人の方が圧倒的に少ないのが現状で、梅毒という感染症に対して「気をつけよう」と考える機会が少なくなったことで、感染が拡大しているともいえます。

梅毒は適切に抗生物質を使用することで治療することができる病気です。
感染に気をつけることはもちろんですが、少しでもおかしいなと感じたら検査を受けて、感染をこれ以上広めないことがとても大切なのです。

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田中 祥子株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

企業の健康管理室で働いていた経験をさまざまなかたちで皆さまにお届けします。
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