脱PDCAサイクル! 職場改善はOODAループで考える

PDCAサイクルをご存知でしょうか。
下記の4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善するための手法として、広く普及しているものです。

Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Act(改善)

しかしこのPDCAサイクル、職場改善を行うにあたっては必ずしも良い方法とは限らないという意見もあります。
今回はPDCAサイクルとはまったく違う考え方であるOODAループを利用する、少し変わった職場改善の手法をお伝えいたします。

OODAループとは

OODAループとは、軍事の研究家であったジョン・ボイド(John Boyd)が生み出した理論で、下記の4段階からなっており、常にこれを行うことでどのような事態にも対応できるようになるという考え方です。

Observe(みる・観察する)
Orient(わかる・状況判断をする)
Decide(きめる・意思決定をする)
Act(うごく・行動する)

「みる→わかる→きめる→うごく」と聞くと、何も特別なことのない、人間の基本動作であるかのように感じることと思います。
実際、この手法は何か特別なことをするわけではありません。
しかしそれゆえ、PDCAサイクルに比べて圧倒的にスピード感が異なります。

ではこのOODAループはなぜ職場改善に向いているのでしょうか。
それはPDCAサイクルに比べて、より現場に寄り添い動かすことのできる手法だからです。

OODAループが職場改善に向いている理由

職場改善を行うにあたって、もしPDCAサイクルを利用しようとした場合、およそ以下のような流れになると思います。

改善すべき課題「残業削減」

Plan(計画)

  • 衛生委員会で残業時間を減らすようにと衛生管理者(もしくは改善プロジェクトの担当者)に指示が出る
  • まず現状の残業時間を算出し、それを元に残業の多い部署を抽出
  • 対象の部署に1人あたり10時間の残業削減をさせるというプランが決定
Do(実行)
対象の部署に指示が下りる
Check(評価)
1ヶ月後、残業時間を衛生委員会で実施できたかを検証

Act(改善)

  • できていない部署にできなかった理由をヒヤリング
  • 達成させるためのプランを衛生委員会で検討し、残業が減るまで繰り返す

さて、これを見て、このPDCAサイクルのどこに問題があるのかわかりますか?
それは「Planを考えたりCheckを行っているのが、実際に削減を行う現場の人ではない」という点です。

では同じ問題をOODAループで取り組んだ場合どうなるかを考えてみましょう

Observe(みる・観察する)

  • 課題である残業時間が多いという状態をまず現場の人間が認識
  • それについてデータを収集。その際、こういう理由だから残業が多いのだ、といった仮説は立てず、なにが起きているのか、ありのままの状況を観察

Orient(わかる・状況判断をする)

  • 集めたデータから何が起きているのかを分析
  • 現状の作業フローの中に削減できるフローを見つけたり、業務の偏りがあることがわかる
Decide(きめる・意思決定をする)
課題解決のために、行動を起こすという決定をする

Act(うごく・行動する)

  • 部署長やチームリーダーの権限で行える範囲でフローの削除を行ったり、業務の再分担を即行う
  • また、権限がないものに関しては改善するための提案を行う

このように、現場で考えさせ、問題解決に向けて行動を起こさせることで、現場外の人が考えた無茶な計画を実行させるなどの事態やストレスを発生させません。
さらに、現場の人員を同じ目的に向かって自分自身で考えて行動させることで、チーム全体で目的に向かって動くことができ、解決までの時間が早まります。

OODAループとPDCAサイクルの違い

そもそもこの2つは得意分野が大きく異なります。
PDCAサイクルは、サンプルに個体差がなかったり基準が決まっているものに関して、改善を実施していく場合とても有効です。
主に管理者や経営層等が大きくプロジェクトを動かしていくためにはとてもよい手法です。

対してOODAループは個人や担当者、チームリーダーといった、より小さな集団が個々を改善するのに有効な手法といえます。
なぜなら計画を立てる、といった準備を必要とせず、目で見て観察したことに対して即対応をすることを目的としている手法ため、問題に気付いたら即対応に乗り出すことができます。

さらに、OODAは現場の担当者にある程度のことは判断させる役割もあります。
そのため、目的に向かって進むための判断力を持った社員の育成にもつながります。

現場で個人個人から改善させる職場改善を

映画「踊る大捜査線」の劇中に「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているだ」という有名なセリフがあります。
それと同様に、改善すべき問題が起きているのはあくまで現場です。
職場改善を行っていくためには、実際に働いている人たち全員の意識を課題に向けさせ、1つひとつが小さくともどんどん行動を起こさせることに鍵があると私は考えます。

「残業を減らせ」と指示をするのではなく、「今日、1時間早く帰るためにはどうしたらいいか」という意識を持たせ、個人個人に判断させて行動をさせること。
こうした積み重ねが職場改善に繋がります。
PDCAサイクルのように大きな計画を立てて動くのではなく、OODAループを使って、今日できることをみんなで改善することから始めてみませんか?

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大沼 泉株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所

投稿者プロフィール

結婚・出産・育児といったライフイベントを乗り越えながら女性がいきいきと働くには、どんな職場環境が望ましいのか。ブラック企業から転職し、産休育休を経た経験をもとに、産業カウンセラー、そして働くママ社員の立場からさまざまな情報をお伝えしてまいります。
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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