成長できる人の脳のしくみとは?マインドセットを知って失敗を成長に変える思考回路を作ろう
- 2021/9/22
- コミュニケーション
トラブルが発生したとき、とらえ方は人によって異なるものです。
お手伝い中にコップを落としてしまった子どもの反応で考えてみましょう。
「こんなミスをするなんて私はダメな子なんだ」と落ち込んだり、「こんなお手伝い引き受けなければよかった」と思う子もいます。
ほかにも、「私はほかに得意なことがあるからこんな失敗別に気にしない」と目を背けたり、「私はどうして失敗してしまったのだろう」と失敗について考える子どももいるでしょう。
実はこれ、マインドセットと呼ばれる思考のくせによるもの。
幼少期から培われた思考のくせは、さまざまな場面で人の行動や精神的なストレスに作用することがわかっています。
育児書では「どう育てればよりよい思考回路になるか」という取り上げ方をされることの多いこのテーマですが、大人になってからも重要です。
今日はこのマインドセットを知ることで、しなかやに成長し続ける社員になる方法を考えていきましょう。
マインドセットとはなにか
マインドセットとは、端的に説明すると思考のくせのことです。
人によって異なり、それまでの人生の中で培った経験や教育などをはじめ、宗教観や倫理観、価値観や信念といったもの、そして生まれ持った性質も影響していると考えられます。
これらは基本的に無意識下で行われるため「その人特有の陥りやすい思考回路=思考のくせ」ととらえられます。
知能についてのマインドセットは大きく分けて2種類あります。
それは「硬直マインドセット」と「しなやか(成長)マインドセット」です。
硬直マインドセットは、自分自身の知能はすでに決まっており、これ以上伸びないという考え方。
しなやかマインドセットは、自分の知能はまだレベルアップが可能であり、これから伸びる余地があるという考え方で、失敗からの立ち直りも早いとされています。
一体それはなぜなのでしょうか。
脳からの動きから見る2つのマインドセット
こうしたマインドセットを脳の働きから分析した研究があります。
ミシガン州の6~8才の子ども123名に対して行ったもので、硬直マインドセットの子どもとしなやかマインドセットの子どもそれぞれにゲームを行ってもらい、ゲーム中の失敗に対しての脳波と行動を分析したものです。
結果としては、ゲームの失敗に対してはどちらの子どもも等しく「失敗した!」という脳の動きがあったことがわかりました。
つまり、失敗についてはどちらのマインドセットのグループも同じように認識をしているということです。
つまり失敗を失敗と思わないから立ち直りが早いということではないようです。
しかし、その後、失敗に対する個人の注目度を表す数値が硬直マインドセットにくらべてしなやかマインドセットのグループは高く、さらに、それにより失敗後の成功率も高くなったことがわかりました。
さらに、硬直マインドセットの子どもたちは自己否定やネガティブな発言をしたり、失敗から気持ちをそらしたりなどの反応も見られました。
しなやかマインドセットの子どもたちは脳の反応から「なんで失敗したんだろう?」と失敗について目を背けずに考えていたということがわかります。
しなやかマインドセットの子どもの中にも失敗に対する注目が少ない子どももいました。
しかしそれは「どうすれば成功するのか」という成功に目を向けている可能性があるようです。
失敗をどうとらえているのかポイント
6~8才の子どもたちの段階でこんなに差が出るなら、大人になってからでは遅いのではないか、と思った人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
マインドセットは前述のとおり「思考のくせ」に当たる部分です。
自らの思考のくせを把握することで、大人である私たちは意識的に行動を変えることができます。
自分が失敗してしまった時のことを思い返してみてください。
見なかったことにしたり、自己嫌悪に陥ってしまい数日引きずる、ということはありませんか?
そんな時はどんなにつらくても意識的に「なんで失敗してしまったのか」に深く注目してみましょう。
それにより、「つらい」というストレスでしかなかった問題についてのとらえ方が変わります。
ここを直せばもうつらい思いをしなくても済む、という気づきにつながり、「この程度の問題だったのか」と失敗のつらさからも解放されるようになります。
大人になったからこそ、思考のくせを理解することで、より自分自身と付き合いやすくなります。
そして、それが自分の成長や部下の成長にもつながるとしたら、こんなに良いことはありませんのよね。
物事に対する人のとらえ方はさまざまです。
でも自分を育児するつもりで改めて自分自身と向き合ってみることで、自分自身を大きく成長させることにつながることもあります。
あなたは失敗したとき、その失敗をどんな風にとらえていますか?
どんな風にそのストレスと向き合っていますか?
ぜひ一度見つめなおしてみてはどうでしょうか?
<参考>
Hans S.Schroder、Megan E.Fisher、YanliLin、Sharon L.Lo、Judith H.Danovitch、Jason S.Moser「Neural evidence for enhanced attention to mistakes among school-aged children with a growth mindset」(「Developmental Cognitive Neuroscience」vol24、April2017)