知っておきたい!令和2年「労働安全衛生調査結果」3つのポイント
- 2021/9/21
- 労働環境
厚生労働省より、令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果が公開されました。
この調査は、事業所が行っている安全衛生管理・労働災害防止活動およびそこで働く労働者の仕事や職業生活における不安やストレス、受動喫煙等の実態について把握し、今後の労働安全衛生行政を推進するための基礎資料とすることを目的として行われています。
今回は令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」のポイントについてお伝えいたします。
メンタルヘルス対策の取り組みは「職場環境改善」が増加
はじめに、メンタルヘルス対策への取組状況について解説します。
令和2年の調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は61.4%でした。
過去の調査とくらべても平成25年度からは約6割が取り組みを実施していると回答しており、今回の結果で大きな変化は見られませんでした。
一方で、今回の調査で大きく数値の変化が見られたのがメンタルヘルスへの取り組み内容についてです。
取り組み内容で1番多いのは「労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査(ストレスチェック)」で、こちらは今までと大きく数値は変わっていません。
しかし、その次に多かった「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック後の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」が前回の調査と比べると 32.4%から55.5%と、3.1ポイント増加していました。
1,000人以上の事業場に絞ると、平成30年の調査では取り組みを行っている事業場が6割だったのに対して、今回は9割の事業場が職場環境の評価および改善を行っていると回答しており、大企業ほど職場環境改善の関心が高まっていることがわかります。
また、ストレスチェックを実施した企業のなかで、集団分析を実施したのは78%で、多くの企業が集団分析を活用しているようです。
活用内容については、「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」が一番多く、次に「相談窓口の設置」「上司・同僚に支援を求めやすい環境の整備」などの回答が続きました。
「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」については、時間外労働の上限規制が2019年の4月から施行(中小企業への適用は2020年4月)され、労働時間や休日に関して見直しを行った企業が増えたことが予想されます。
その次に多かった「相談窓口の設置」についても、2020年6月のパワハラ防止法の施行が大きく影響していると考えられます。
パワハラ防止法により、大企業はすでに相談窓口の設置が義務化されていますが、2022年4月からは中小企業も大企業と同じく義務化の対象に入るため、今後も相談窓口や環境の整備については注目が高まっていくと予想されます。
どちらも法改正が行われたことが、取り組み実施への後押しとなったのではないでしょうか。
また、「産業保健新聞」を運営するドクタートラストでストレスチェックを実施いただいている企業さまの中でも、「形式だけのストレスチェックに課題を感じている」「ストレスチェックの結果を活用したい」という声をよくいただいています。
ストレスチェック制度の施行から6年が経過し、ストレスチェックを実施するだけではなく、その次の職場環境改善へ繋げたいと感じる企業が増えてきているのではないでしょうか。
敷地内の全面禁煙化を行う事業場は3割
次のポイントは「受動喫煙防止対策に関する事項」についてです。
同調査によると、事業所における禁煙・分煙状況について、屋外を含めた敷地内全体を全面禁煙にしている事業所の割合は30.0%で、平成30年の調査結果より16.3ポイント増加したことがわかりました。
同調査の個人調査結果でも、職場での受動喫煙が「ない」と回答した割合は前回が70.1%だったのにくらべ、今回は8.2ポイント高い78.3%となっており、喫煙への取り組みが強化されたことにより受動喫煙を受ける人が減少していることが伺えます。
敷地内の禁煙については、平成30年7月に設立された改正健康増進法により、飲食店や職場での原則室内禁煙が義務化されたことが大きく影響しているでしょう。
喫煙者もそうでない人も、「分煙・禁煙が当たり前」の世の中になってきていることが、職場環境にも反映されていると想像できます。
高年齢労働者に対する労働災害防止対策を実施している企業は8割
最後に、高年齢労働者に対する労働災害防止対策の状況についてお伝えします。
今回の調査によると、60歳以上の高年齢労働者が従事している事業所の割合は74.6%で、このうち高年齢労働者に対する労働災害防止対策に取り組んでいる事業所の割合は 81.4%でした。
少子高齢化や定年の延長などの時代の流れによって、今後も高年齢労働者の割合は増加していくといわれています。
高齢労働者は今までのスキルやノウハウを活用できる人材が多く、新しく若者を雇うより、いままで活躍してくれた高齢労働者にそのまま働いてもらうことをメリットに感じる企業も少なくありません。
そうした利点がある一方、高齢労働者による労災案件も年々増加しています。
これは、労働者における高齢者の割合が増加したことも関係してると思いますが、定年の延長などにより、高齢労働者がいままで行ってきた慣れた業務でも、腰や膝を痛めてしまったり、転倒してしまい労災につながった、というケースもあるのではないでしょうか。
今までは特に年齢に配慮していなかった業務も一度見直しが必要かもしれません。
労働安全衛生は時代背景や法改正によっても大きく変化していくことがわかります。
労働者に安全にいきいきと働いていくためにどうするべきなのか……お悩みの担当者は多いかと思いますが、小まめな情報集、そして従業員の意見をよく聞くということが一番の近道ではないでしょうか。