昨今、トラックドライバーの人材不足が問題視されていますが、その原因としてドライバーの長時間労働が挙げられていました。
物流インフラは経済活動において重要な根幹です。
ドライバーに負担を強いることを続けていると、トラックドライバーになる人材がいなくなり、そのうち物流活動自体が維持できなくなるおそれがあります。
しかし、問題を解決するためには運送事業者単体では困難であり、荷主の協力も不可欠です。
そこで国土交通省が荷主と運送事業者が連携して実施した改善策事業の成果をまとめたガイドラインを発表しました。
ガイドラインにおける改善ステップ
ガイドラインでは7つのステップ設けて解説しています。
[ステップ1]
荷主とトラック運送事業者の双方で、トラックドライバーの労働条件改善の問題意識を共有し、検討の場を設ける
[ステップ2]
労働時間、特に荷待ち時間や荷役時間の実態を把握する
[ステップ3]
荷待ち時間の発生等、長時間労働の原因を検討、把握する
[ステップ4]
荷主、トラック運送事業者の双方で、業務内容を見直し改善に取り組む
[ステップ5]
荷主とトラック運送事業者間での応分の費用負担を検討する
[ステップ6]
改善の成果を測定するための指標を設定する
[ステップ7]
指標の達成状況を確認、評価することでさらなる改善に取り組む
ツールやシステムの導入による問題の改善
上記ステップの中で着目したい点は、ツールの活用やシステムでの管理を導入して問題の改善を図っていることです。
・スマートフォンのアプリなどで実態を簡便に把握するツール
・予約受付システムの導入
どちらもデジタル技術を活用することで、荷受けや出荷の作業効率向上がされてドライバーの待ち時間やタイミングが調節されます。それによりドライバーの総労働時間が短縮され、労働環境の改善につながります。
こういったツールやシステムを導入することは、ドライバーや従業員にかかる負担をなるべく少なくし、積極的に利用できるようなしくみを構築することが重要と考えられます。
改善事例
[業種]
金属製品製造業
[課題]
貨物の集荷時間が事前に把握できず、着荷主の多くに着時刻の指定があるため、待機時間が長く、拘束時間が長時間になる傾向だった
[問題点]
①出荷場が狭い
②作り置きがない
③集荷時間が読めない
④待機時間が長い
[改善点]
①外部倉庫の活用
②外部倉庫に定番品の作り置き
③入退場、進捗管理システムを導入
④出勤時間の調整
[改善結果]
外部倉庫と情報システム活用により待ち時間の大幅削減の達成
→これによってトラックドライバーの待ち時間短縮・出勤時間の調整によって、実労働時間が短縮できて環境改善につながりました。
運送業に限らず人材不足は深刻
運送業に限らず、他業界でも人材不足の深刻化は社会問題として取沙汰されています。
今回の運送業の取組のガイドラインを見ると、特に以下の3点が必要であると読み取れます。
①発注元と発注受けの相互協力
②ツールや仕組みの導入
③PDCAを回し改善していく
これまではコストや発注主への交渉などに阻まれ、現場レベルで問題や改善を行う事だけでは、大幅な状況改善が行えないのが現状でした。
しかしここに来て人材不足という問題から喫緊の課題として動かざる終えない状況になったというのが現実かとは思いますが、企業全体として改善に取り組み、発注主とも協力をすれば問題が改善できるという事例ができた事は大きな前進であるといえます。
今後、こういった改善を模索し、人材不足の対策を行っていかなければその業界自体の死活問題となりえるため、他業界でもこういった取り組みが進むことを願います。
<参考>
・厚生労働省労働基準局労働条件政策課、国土交通省自動車局貨物課、公益社団法人全日本トラック協会「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」
・厚生労働省労働基準局労働条件政策課、国土交通省自動車局貨物課、公益社団法人全日本トラック協会「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン事例集」