「職場のハラスメントに関する実態調査」から見るハラスメントの傾向と課題 ~企業に求められる取り組み~

2024年5月、厚生労働省から「職場のハラスメントに関する実態調査」が発表されました。
これは全国の企業を対象に、2023年12月~2024年1月に実施された調査で、ハラスメントの発生状況や傾向、ハラスメント対策の取り組み状況や課題が明らかになりました。
本記事では、調査結果に基づいて最近のハラスメントの傾向と課題についてお伝えします。

ハラスメントの発生状況と傾向

過去3年間の相談件数の推移をハラスメントの種別ごとにみると、「セクハラ」以外は「件数は変わらない」が最も多い割合でした。
「セクハラ」は「減少している」が最も多く、要因としては、近年「セクハラ」「パワハラ」といったキーワードが浸透しており、社会全体として意識が高まっていることが挙げられます。

一方で「顧客からの著しい迷惑行為」、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は唯一「件数が増加している」が「減少している」より多い結果でした。
増加傾向にある点については、まだ認知度も少なく、加害者となる顧客側の意識がそこまで高くないことが予想されます。
また、「お客様は神様」という考え方が浸透した日本のサービス業界では、ハラスメント対策に踏み切りにくいことも理由の一つでしょう。

企業のハラスメント対策と課題

パワハラ予防・解決の取り組みの実施有無に関する調査結果では、全体の9割以上が「取り組みを実施している」と回答しました。
企業規模が大きくなるにつれて「実施している」と回答している割合が大きい傾向にありましたが、99名以下の企業でも88.4%と高い割合で何かしらの対策が行われていることが分かりました。

具体的な取り組み内容については、「相談窓口の設置と周知」が最も多く、7割以上の企業が実施しています。
その他では、「ハラスメントの内容、職場におけるハラスメントをなくす旨の方針の明確化と周知・啓発」、「行為者に厳正に対処する旨の方針・対処の内容の就業規則等への規定と周知・啓発」が多いようです。
ハラスメント予防の取り組みについては、2020年に施行された「パワハラ防止法」が大きく影響していると考えられます。
2020年は大手企業を対象に、そして2022年からはすべての企業を対象にパワハラ防止のための必要な措置を講じることが義務付けられました。
具体的には「パワハラに対する社内方針の明確化とその周知・啓発する」「相談窓口を設けて、相談者に対して適切な処置を講じる」などがあり、取り組み内容の割合として多かったものと一致することから、法制度の整備をきっかけにハラスメントの取り組みをはじめた企業が多いと考えられます。

一方で、取り組みを進めるうえでの課題としては「ハラスメントかどうかの判断が難しい」が最も多い結果となりました。
ハラスメント種別ごとにみると、セクハラ・パワハラは「ハラスメントかどうかの判断が難しい」、「ハラスメントに対応する際のプライバシーの確保が難しい」、「発生状況を把握することが困難」、「適正な処罰・対処の目安がわからない」といったハラスメントが発生した場合のオペレーションに関する悩みが多く挙げられました。
「パワハラ防止法」には対応したが、実際にハラスメントが発生した場合にどうしたらいいかわからない、対応できる人材が不足しているという課題が浮き彫りになりました。

今後企業に求められる取り組みとは

今回の調査結果から、ハラスメント対策を講じている企業が大多数ではあるものの、ハラスメントが発生した場合の具体的な対処法が分からない、ノウハウを知る人材がいないなどの課題を抱えていることが分かりました。
また、パワハラ防止法では「社員研修・講座などの実施」「職場環境改善のための取組」などが努力義務とされているにもかかわらず、ハラスメントの予防策にあたる「マニュアルの作成や研修など」は比較的実施率が低く、ハラスメント対策は講じているものの、予防や社員への意識啓蒙の取り組みには手が伸ばせていない企業が多いようです。

しかしハラスメントの発生状況に関する調査結果では、「過去3年間の相談件数は変わらない」という結果が多数で、ハラスメントの発生件数の減少にはまだ繋がっていないようです。
「まだうちは相談がないから大丈夫」と思っている企業でも、実際には既にハラスメントが発生している、もしくは今後発生する可能があるかもしれません。

このことから、今後企業に求められる取り組みとしては、実際にハラスメント発生した場合の対処法の学習、またはノウハウを持った人材の確保・育成が必要だと言えます。
しかし、結局具体的に何をしたらいいかもわからず、また専門的な人材の確保や教育にも膨大な時間・労力がかかるため、なかなか重い腰があがらないという担当者も多いと思います。

そこでオススメしたいのが、「外部相談窓口」の設置です。
外部相談窓口の設置は比較的にすぐに対応できるうえ、ノウハウを持った人材の確保や教育の必要がありません。
最近ではハラスメントの種別も増え、より複雑な案件も増得ていくと予想されることから、より総合的な対策が求められてきます。
まずは手軽であり、信頼度も高い外部相談窓口の設置から検討してみるのはいかがでしょうか。

<参考>
・ 厚生労働省「『職場のハラスメントに関する実態調査』の報告書を公表します」

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信定祐希株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学卒業後、飲食業界に入社し、従業員満足度と顧客満足度のつながりが強さを実感してきました。お客さまを幸せにするためには、従業員自身の幸福度が高くないと実現ができません。しかしそれはどの業種においても言えることだと思っています。
ワークライフバランスを整え、活き活きとやりがいのある仕事ができる社会を目指して発信していきたいと思います。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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