近年は、パワーハラスメント(パワハラ)が社会問題の一つとなっており、皆さんのなかにも見聞きした、受けたことがある方という方もいるのではないでしょうか?
今回は、パワハラに関する法改正について紹介します。
パワハラ防止義務化
厚生労働省は、2019年2月14日の労働政策審議会(厚生労働省の諮問機関)分科会で、企業へのパワーハラスメント防止の取り組み義務化やセクシュアルハラスメント対策の強化を盛り込んだ女性活躍推進法などの改正案要綱を示し、了承されました。
今後、今国会で成立、2020年4月にも義務化を盛り込んだ改正法が施行となる予定です。
一方、中小企業は公布日から3年以内に義務化するとし、それまでは努力義務にとどめられる見込みです。
残業時間の上限規制など働き方改革関連法の対応に追われるため、経営側が中小への準備期間を求めていたことに配慮されました。
具体的に、改正案で義務付けられる企業のパワハラ防止措置は、相談窓口の設置やパワハラをした人の処分規定を設けることなど、既に防止義務化されているセクシュアルハラスメント等と同等の規制となる予定です。
増加するパワハラ
都道府県労働局等に設置した総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加し、2012年度には相談内容の中でトップとなり、増加傾向にあります。
また、2016年以降は、民事上の個別労働紛争相談件数の割合も20%を超過しており、社内設置の相談窓口でも、パワハラが最も相談が多いテーマと厚労省調査で発表されています。
厚生労働省「平成28年職場のパワーハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に「パワーハラスメントを受けたことがある」と回答した者は回答者全体の32.5%、「パワーハラスメントを見たり、相談を受けたことがある」と回答した者は、回答者全体の30.1%で、いずれも約3人に1人が該当している状況です。
一方、「パワーハラスメントをしたと感じたり、したと指摘されたことがある」と回答した者は11.7%でした。
上司以外からのパワハラも
同じく厚生労働省の調査で、パワーハラスメントの加害者と被害者の関係は、上司から部下へのケースが圧倒的に多く、先輩から後輩へ、正社員から正社員以外と続きます。
強い立場の者から弱い立場の者へ行われることが多いイメージですが、単に上下関係の「職務上の地位」に限らず、部下から上司へ、正社員の同僚同士も発生しています。
また、勤務者同士だけでなく、カスタマーハラスメントと呼ばれる顧客や取引先からの悪質なクレームに関しては、パワハラ防止措置の対象外ではあるものの、「職場のパワハラに類するもの」と判断され、対応のための望ましい措置を関連法成立後に指針などの形で定めるべきだとしています。
<参考>
明るい職場応援団「パワハラ基本情報」データで見るパワハラ(厚生労働省)