介護現場におけるハラスメント対策
- 2019/7/25
- ハラスメント
皆さんは、老人ホームなどの介護福祉施設における職員から施設利用者への暴力行為や暴言などを報道などで目にしたことがありますか?
親戚や知人に利用者がいたり、両親・祖父母が該当するようなご年齢であったりする方はこういった報道を見て、不安になることがあると思います。
ですが、こういった加害行為は一方的なものなのでしょうか?
施設利用者は必ず被害者なのでしょうか?
利用者によるハラスメント被害の実態
実は、こういった介護福祉施設における加害行動は職員から利用者に向けられるのみだけではなく、その逆も非常に多いものなのです。
2018年に全国の介護職員からなる労働組合約8万人を対象として実施された調査によれば、7割を超える職員から、利用者やその家族からハラスメントを受けているとの回答が得られました。
ところで、介護現場におけるハラスメントとはいったいどのような行為を指すのでしょうか。
介護現場におけるハラスメント対応マニュアル
2019年4月、「介護現場におけるハラスメント対応マニュアル」(厚生労働省補助、三菱総合研究所が調査研究・作成)が公表されました。
同マニュアルでは、介護現場におけるハラスメントとして以下のような行為が例示されています(一部抜粋)。
① 身体的暴力(身体的な力を使って危害を及ぼす行為)
・ 蹴る
・ 首を絞める
・ 唾を吐く② 精神的暴力(個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為)
・ 大声を発する
・ 「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する
・ 家族が利用者の発言を鵜呑みにし、理不尽な要求をする③ セクシュアルハラスメント(意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為)
・ 必要もなく手や腕をさわる
・ 入浴介助中、あからさまに性的な話をする
ここでポイントとなるのは、暴力行為はもちろん、身体的接触のない発言やセクハラ行為、利用者の家族の過剰な要求等もハラスメントに該当するということです。
事業者として職員・施設利用者の双方を守るために
もちろん、施設利用者から職員へのハラスメントが発覚したからといって、過剰防衛や抵抗、憂さ晴らしの利用者への暴力行為が容認されることは決してありません。
同マニュアルにおいても、「ハラスメントはいかなる場合でも認められるものではないこと」「暴行罪等に該当しうる行為であること」「実際に怪我や病気となった職員、仕事を辞めたいと感じた職員がいること」などが述べられています。
施設利用者と介護職員、その双方が安全にサービスを利用・履行をするためには、お互いの領分(利用者としてやってはいけないことや職員としてできる領域)の理解、家族や施設管理者との細かな連携、管理者による利用状況や現場の把握など必要不可欠なことが多々あります。
事業者だけでなく、利用者、その家族、身近な人に利用者がいる方など、幅広い方がこの現状に関心を持つことが、何よりも重要なのではないでしょうか。
<参考資料>
三菱総合研究所「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」