「発達障害」という言葉、近年よく聞くようになりました。
障害についての説明は以前も産業保健新聞で取り上げられていますが、今回は職場で発達障害の疑いのある従業員への対応をどのようにすればいいか、について考えてみたいと思います。
大人の発達障害は10人に1人とも
実は、発達障害は軽度のものを含めると、大人子供にかかわらず10%ほどいると言われています。
うつ病などのメンタル不調などを併発することが多いため、心の病と混同されがちですが、発達障害は脳機能の発達が偏っているために起こるものです。
誰しも得意不得意があるように、脳の発達は個人差があります。
そして、発達障害を持つ方々も職場の配慮や周囲の協力によって、他の方々と同様に問題なく働いているケースも多いです。
発達障害の社員に対し職場ができること
10人に1人は発達障害の社員がいるという事は、皆さんの会社の中にも発達障害の可能性のある方がいるということです。
もし、同僚や社員が発達障害であると診断された場合、職場でどのような配慮をすべきかという点が多くの方が悩むところではないでしょうか。
以下に配慮事項の例を紹介します。
・ 可能であれば発達障害の特徴や社員の能力にあった仕事内容に配置転換させる
・ パニック・不安発作を起こしそうなときに一人になれるクールダウンタイムやスペースを準備する
・ パニック・不安発作を起こしそうなときに、発達障害を理解してくれる人・専門職などへのホットラインを作る
・ 仕事・作業は得意なこと、不得意なことを考慮し、職場内での役割分担を行う
・ スケジュールを机の上やノート・壁などに記載し、見える化する
・ 大きな声や非難・叱責はしない
・ 気が散りやすく、集中できないので働くオフィスは比較的視覚刺激が少ない静かな部屋にする
・ 期限が守れず先延ばし傾向があるので、期限前に声掛け、進捗確認する
ジョブコーチ制度を活用しよう
どのような配慮をすればいいか悩んだときは、ジョブコーチ制度を利用しましょう。
ジョブコーチとは発達障害に限らず、障害者が職場に適応できるよう職場に出向き、2~4ヶ月継続的に支援をしてくれる制度です。
<障害者への支援例>
・仕事に適応する(作業能率を上げる、作業のミスを減らす)ための支援
・人間関係や職場でのコミュニケーションを改善するための支援
<職場への支援例>
・障害を適切に理解し配慮するための助言
・仕事の内容や指導方法を改善するための助言・提案
<家族への支援例>
・対象障害者の職業生活を支えるための助言
発達障害は、仕事をしていく中で誰もが関わることがあるほどに、本来とても身近なものです。
そのため、「障害」というワードから重症さやマイナスな印象を与えないよう、発達障害のことを「発達アンバランス症候群」と呼ぶよう提唱する人もいます。
発達障害ではなくても人にはできる・向いている仕事と、できない・向いていない仕事があるものです。
自分にあった仕事をみつけることがその人の人生を豊かにし、そういった従業員を増やすことが会社の業績向上にもつながっていきます。
障害があるからと敬遠するのではなく、共に働く仲間として受け入れ、配慮を行うことのできる職場を目指していきましょう。
参考文献:
星野 仁彦『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社、2016年)