皆さまは「ゆでガエル理論」という言葉をご存知でしょうか?
これは主に企業経営やビジネスの文脈で用いられる言葉で、穏やかに進む環境変化に対応することの重要性と難しさを表すたとえ話のひとつです。
ゆでガエル理論とは?
ゆでガエル理論(または、「ゆでガエル現象」「ゆでガエルの法則」)とは、カエルを熱湯に入れると驚いてすぐに飛び出すが、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくとその温度上昇に気が付かず茹で上がってしまう、という現象をビジネスに当てはめたたとえ話です。
このたとえ話を最初に用いたのは、アメリカの文化人類学者であるグレゴリー・ベイトソンだと言われています。
実際にはこのような実験を行うと、熱湯に入れた場合は即死し、常温の水から水温を上げていくと熱くなる前に逃げ出してしまうのですが、たとえ話だけ聞くとなんとなく納得してしまうところがありますね。
企業経営でいうと、外部の環境変化についていけなくなったり、会社の成長に合わせた業務改善ができていなかったりして漫然と業務をこなしていると、そのうち経営が立ち行かなくなる、ということになります。
企業によくみられるパターン
管理者クラス
特に営業職に多いのですが、管理者クラスになったにも関わらずプレイングマネージャーから脱却できずにいるケースです。
中小企業に多いケースであり、実際上手くマネジメントができない当人にとってもこれが一番安易なことなのです。たとえ話に出てくるぬるま湯と言えます。
これでは平社員と下部の管理職の差がほとんどなく、組織としてうまく機能しません。
役員クラス
かつて役員になる前までは経営トップに対して会社の改善について積極的に意見していたにも関わらず、役員に上がった途端保身に走り、あまり強く意見を言えなくなってしまうケースです。
今までは全社的な視点で最適な地点を目指していたのに、部分最適や個人最適を目指すようになってしまったとも言えます。
経営トップ
ワンマン企業で業績の上がっていた中小企業にありがちですが、「自分が今までやってきたやり方で結果を出してきたんだ!」と経営者が過去のやり方に固執してしまうケースです。
「社員がぬるま湯にいる」と思うことはあっても、経営者自らもぬるま湯に浸かっていることに気が付かない可能性もあります。
ゆでガエルにならないために
ゆでガエルの意味とよくあるケースについて説明してきましたが、ではどのように脱却すればいいのでしょうか。
三菱ケミカルHDの小林会喜光会長は、「ゆでガエルの意識を変えるのは簡単だ、蛇を放り込めばいい」と述べています。
三菱化学メディアでは「1年以内に再建に向けた結果を出さないと事業から撤退する」という方針を蛇としました。
これは蛇でもあり、またカエルに対して「今のぬるま湯はこれから沸かすぞ!」と強く伝えることでもあります。
また、定期的に多くの客観的指標で振り返ることも効果的で、売上などの会計指標はもちろん残業代や実際残業時間、労働時間の偏りなど、さまざまな指標で振り返ることが大切です。
カエルは水温計があれば脱出することができたかもしれません。
みなさまは現状のポジションやその居心地の良さに胡坐をかいてはいませんでしょうか。
体感のできない範囲でそのぬるま湯は徐々に水温が上がっているかもしれません。