
寒さが厳しくなり、冷えにお悩みの方も多いと思います。
「冷えは万病のもと」ともいわれますが、身体の冷えによって血圧が上がることをご存じでしょうか?
本記事では「身体の冷えと血圧」の関連についてお伝えしていきます。
なぜ冬に高血圧リスクが上昇するのか
人の体温は、常に一定に保たれるように自律神経によって調整されています。
身体には体温を保つためのさまざまな機能がありますが、そのひとつに皮膚近くの血管を収縮させて熱の放出を防ぐ働きがあります。
このとき、血管は収縮し狭まりますが、血液量は変わらないため、血管にかかる圧が強まり、血圧の値が上昇します。
以上のような理由から、春から夏にかけては血圧が下がり、秋から冬にかけて上がる傾向にあります。
気温が下がると高血圧性心疾患、心腎疾患は約2倍に増える
厚生労働省が実施した「令和5年人口動態調査」によると、月ごとの「高血圧性心疾患及び心腎疾患」を死因とする死亡数は、以下のグラフのように推移します。

1月が最も多く、6月が最も少ない結果となっており、気温の変動と反比例するように件数が推移しています。
つまり、気温低下による血圧の上昇によって、高血圧を起因とする疾患の発症リスクが高まっている可能性が考えられます。
また、室温が1℃低下すると朝の収縮期血圧(上の血圧)が0.863mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が0.342mmHg上昇するとの研究結果もあり、外気温と室温の両方が血圧の変動に影響を与えていることがわかります。
急激な温度変化によって高血圧性の心疾患などが起こることをヒートショックと呼びます。
この季節にはよくニュースなどでも取り上げられるため、耳なじみのある方も多いのではないでしょうか。
冷えによる血圧上昇緩和のために
それでは気温による血圧の変動を最小限にするためにはどうしたらよいのでしょうか。
今回は3つのポイントをご紹介します。
1.室温は18℃以上に
世界保健機関(WHO)が2018年に公表した「住まいと健康に関するガイドライン」では、心疾患・脳血管疾患を含む循環器疾患は室温が低い住宅で起こりやすくなると示しています。
その上で、健康被害を防ぐために室内の最低気温を18℃までに保つことを推奨しています。
リビングなどのメインで過ごす部屋は暖かくても、廊下やお手洗いが寒い、という場合も多いと思います。
できるだけ、どの部屋に行っても18℃以上が保てるように、空調がない部屋ではカーペットなどで足元からの冷えを防ぎましょう。
2.衣服の着脱で調整を
暖かい部屋から寒い部屋へ移動する際や、朝に布団から出るときなど、室内でも気温差が大きくなるタイミングがありますね。
このときにも、身体は気温の低下を感知して血圧が上がります。
そのため、羽織ものやスリッパ、厚手の靴下などを活用して、気温差を最小限にすることが大切です。
足元は特に直に冷たい床に触れることになるので、対策をとりましょう。
また起床時は、身体が活動できる状態にするために、気温にかかわらず交感神経が活発化し血圧が上昇するタイミングです。
気温差がある冬には、枕元に防寒のためのアイテムを用意しておくのがおすすめです。
そして、締め付けが強い衣服だと血流が滞り冷えを促進させる可能性があるので、ゆったりと着られるものを選びましょう。
3.冷えの改善効果がある栄養素を取る
冷えの改善に効果が期待できる栄養素には以下のものがあります。
・ビタミンB1:代謝を促進し、エネルギー産生を補助する作用があります。
【含む食材】豚肉、大豆製品、ナッツ、玄米など
・ビタミンE:抗酸化作用によって末梢血管を柔軟にする作用があり、血行促進効果が期待できます。
【含む食材】卵、アボカド、オリーブオイル、大豆製品など
・たんぱく質:自律神経機能を正常に保ち、エネルギー源として代謝されることで熱エネルギーを生み出す作用があります。
【含む食材】肉類、魚類、卵、大豆製品など
冷えが気になる季節には、以上のような栄養素を積極的に摂取するとよいですね。
そのほかには、気温に関わらず血圧上昇を予防するために減塩やカリウムの摂取が推奨されます。
また、喫煙習慣がある方はたばこの血管収縮作用でも血流が悪くなり、冷えの元となるため、極力控えることをおすすめします。
上記のようなポイントを押さえて、冬の血圧上昇を最小限にとどめましょう。
<参考>
・厚生労働省「令和5年(2023)人口動態調査」
・Tabara、Yasuharua,et al.「Effects of room temperature on home morning, evening, and sleep blood pressure: the Shizuoka study」(『Journal of Hypertension』44(1)p109-115、September19、2025)
・世界保健機関(WHO)「住まいと健康に関するガイドライン」





















