DHAやEPAなど身体に良い栄養素を含み、健康食とされる魚介類。
お寿司やお刺身など生で食べることが好きな人も多いのではないでしょうか。
ところで、アニサキスという言葉を聞いたことはありますか?
アニサキスとは魚介類に潜み、激痛を伴うアニサキス症という食中毒の原因となる寄生虫です。
この寄生虫による食中毒は近年増加傾向にあり、厚労省も注意喚起をしています。
また、アニサキスによる食中毒は、諸外国と比較すると日本人に多い食中毒であることも特徴的です。
日本では年間7000件以上のアニサキス症患者が出るのに対して、
1960年から2005年までの累計では、欧州が約500件、米国が約70件となっています。
これは、アニサキス症の感染経路が、日本人には好きな人が多い「あるもの」であるという特徴が一つの原因と言われています。
アニサキスはどこからやってくる?
アニサキスは、普段、魚介類の内臓に寄生しています。
寄生している魚介類を人が生もしくは生に近い状態で食べると、アニサキスは人の身体の中では生きられないので、
外へ逃げようとして、胃腸や腸壁に潜り込んでしまい激痛を生じさせます。
アニサキスによる食中毒の症状は、大きく2つに分けられます。
まず1つ目は、アニサキスの寄生する魚介類を食べて2~8時間後に身体に異変が現れる胃アニサキス症。
症状としては、激しい腹痛・吐気・嘔吐が特徴で、時には吐血することもあります。
2つ目は、アニサキスの幼虫が寄生する魚介類を食べて10時間以降に身体に異変が現れる腸アニサキス症。
症状としては、おへそのあたりを中心とした局所的な痛みから徐々に腹部全体に痛みが広がっていくことが特徴です。
なお、アニサキス症はアニサキスの寄生に加えて、食べた人のアレルギー反応によっても起こるといわれています。
そのため、同じ魚介類を食べても、症状が出る人と、出ない人がいます。
アレルギー反応がある人の場合、くり返しやすいのも特徴ですので注意しましょう。
治療方法としては、アニサキスが胃に入り込んだかどうかは、内視鏡で見ないと分からないため、まずは内視鏡で確認が必要です。
その上で、内視鏡により取り除くか、対処療法にて様子を見ることとなります。
アニサキスによる食中毒を防ぐために
アニサキスによる食中毒防止のためには、下記の方法が有効です。
〈加熱・冷凍〉
アニサキスの駆除には、中心部までしっかりと熱を通すこと・冷凍してしまうことが効果的です。
60度で1分以上
マイナス20℃以下で24時間以上(2000年以降の製造であれば家庭用冷凍庫にて可能)
が最低限必要です。
これが一番確実な方法です。
〈鮮度の徹底〉
アニサキスは、鮮度が落ちるとともに内臓から筋肉へと移行するため、鮮度の落ちた刺身を食べるほうが危険だといわれています。
ただし、サケ科の場合は最初から筋肉内にアニサキスが寄生していることが多く、鮮度はあまり関係ありません。
〈内臓を生で食べない〉
アニサキスは、鮮度の高いうちから内臓に潜んでいます。
そのため、どんなに新鮮な物でも内臓を生で食べてしまうとアニサキスに感染することが考えられます。
〈目で確認〉
アニサキスは2センチから3センチで細い糸くずのような形をしています。
見つけたら竹串などで取り除きましょう。
ただしこれは確実ではありません。
〈よく噛んで食べる〉
よく噛んで食べることにより、アニキサスを砕き胃や腸で寄生することができない状況にさせることができます。
ただし、これも確実な方法ではありません。
なお、お刺身などと一緒に食べると殺菌効果があるとされている酢・お酒・わさび・味噌・醤油では死滅することができないので注意が必要です。
アニキサス症を予防して魚をおいしく食べよう
冒頭にも述べたように、生魚を食べる習慣のある日本で暮らしている私たちは、アニサキス症の発生リスクは諸外国に比べて高くなっています。
ただし、アニサキスを寄生させない方法を知っておけば防ぐことは可能です。
アニサキスの寄生を予防して、身体に良い栄養素が豊富に含まれている魚を積極的に食べましょう。
また、これからの時期はアニサキス以外の食中毒にもかかりやすい時期ですので、併せて注意してください。