「健康経営優良法人2021認定」のスケジュール、認定基準は?
- 2020/9/3
- 健康経営
健康経営優良法人認定制度は、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度で、2017年度に始まりました。
年を追うごとに認定企業が増え、「健康経営」という言葉も定着してきているなど、注目が高まっている認定制度です。
このため、2020年度以前に取得されている企業にとっては「今年もこの時期がやってきた!」という状況で、以前より興味があった企業も「今年こそは」と関心を持っているのではないでしょうか。
今回は、「健康経営優良法人2021認定」のスケジュール、認定基準などをわかりやすく解説します。
健康経営優良法人2021認定取得までのスケジュール
申請区分
健康経営優良法人は「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つに申請区分が分かれています。
<大規模法人部門>
・ 卸売業:従業員数101人以上
・ 小売業:従業員数51人以上
・ サービス業:従業員数101人以上
・ 製造業その他:従業員数301人以上
<中小規模法人部門>
・ 卸売業:従業員数50人以下、または、資本金額などが1億円以下
・ 小売業:従業員数50人以下、または、資本金額などが5,000万円以下
・ サービス業:従業員数100人以下、または、資本金額などが5,000万円以下
・ 製造業その他:従業員数300人以下、または、資本金額などが3億円以下
※ 会社および士業法人以外は従業員数のみで区分します。
申請区分によって、認定取得までのプロセスが異なるので、どちらに該当するかをチェックしましょう。
申請までのスケジュール
以下では申請区分ごとに健康経営優良法人認定までのスケジュールを紹介します。
<大規模法人部門>
① 健康経営度調査の実施(2020年8月24日~10月16日)
② 健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定基準に適合しているかの判定を受け、申請書を受け取る
③ 健康経営優良法人申請書を提出(2020年11月中旬~12月上旬)
④ 認定審査
⑤ 認定取得(2021年3月頃)
「健康経営度調査」や調査表の入手方法などは、経済産業省のウェブサイトを参照ください。
経済産業省「健康経営度調査について」
<中小規模法人部門>
① 協会けんぽ支部や健康保険組合連合会、全国国民健康保険組合協会などが実施している「健康宣言」事業に参加する
② 健康経営優良法人申請書を提出(2020年8月24日~11月27日)
③ 認定審査
④ 認定取得(2021年3月頃)
「健康宣言」事業の詳細については、加入する保険者に問合せてください。
大規模法人部門、中小規模法人部門ともに、健康経営優良法人への申請の前段階のステップがある点は注意が必要です。
「健康経営度調査」や「健康宣言」が未実施の企業は、まずこちらへの対応をしていきましょう。
健康経営優良法人2021の認定要件
健康経営優良法人2021の認定要件は、それぞれ以下の通りです。
要件は毎年少しずつ異なりますので、必ず該当年度の要件を確認しましょう。
<大規模法人部門>
大項目 | 中項目 | 小項目 | 評価項目 | 要件 | |
1.経営理念 | 健康宣言の社内外への発信 | 必須 | |||
①トップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいる | ①~⑮から12項目以上 | ||||
2.組織体制 | 経営層の体制 | 健康づくり責任者が役員以上 | 必須 | ||
保険者との連携 | 健保等保険者と連携 | ||||
3.制度・施策実行 | 従業員の健康課題の把握、対策の検討 | 対策の検討 | 健康課題に基づいた具体的目標の設定 | 必須 | |
健康課題の把握 | ②定期健診受診率(実質100%) | ①~⑮から12項目以上 | |||
③受診勧奨の取り組み | |||||
④50人未満の事業場におけるストレスチェック | |||||
健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくり、ワークエンゲイジメント | ヘルスリテラシーの向上 | ⑤管理職、従業員に対する教育機会 | |||
ワークライフバランスの推進 | ⑥適切な働き方実現 | ||||
職場の活性化 | ⑦コミュニケ-ションの促進 | ||||
病気の治療と仕事の両立支援 | ⑧病気の治療と仕事の両立(⑮以外) | ||||
従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策 | 保健指導 | ⑨保健指導の実施、特定保健指導実施機会 | |||
健康増進・生活習慣病予防対策 | ⑩食生活の改善に向けた取り組み | ||||
⑪運動機会の増進に向けた取り組み | |||||
⑫女性の健康保持・増進に向けた取り組み | |||||
感染症予防対策 | ⑬従業員の感染症予防に向けた取り組み | ||||
過重労働対策 | ⑭長時間労働者への対応 | ||||
メンタルヘルス対策 | ⑮メンタルヘルス不調者への対応 | ||||
受動喫煙対策 | 受動喫煙対策 | 必須 | |||
取組の質の確保 | 専門資格者の関与 | 産業医または保健師が健康保持・増進の立案・検討に関与 | |||
4.評価・改善 | 取組の効果検証 | 健康保持・増進を目的とした導入施策への効果検証を実施 | 必須 | ||
5.法令遵守・リスクマネジメント | 定期健診、ストレスチェックの実施など | 必須 |
<中小規模法人部門>
大項目 | 中項目 | 小項目 | 評価項目 | 認定要件 | |
1.経営理念 | 健康宣言の社内外への発信 経営者自身の健診受診 | 必須 | |||
2.組織体制 | 健康づくり担当者の設置 | 必須 | |||
(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供 | 必須 | ||||
3.制度・施策実行 | 従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討 | 対策の検討 | 健康課題に基づいた具体的目標の設定 | 必須 | |
健康課題の把握 | ①定期健診受診率(実質100%) | ①~③から1項目以上 | ①~⑮から6項目以上 | ||
②受診勧奨の取り組み | |||||
③50人未満の事業場におけるストレスチェック | |||||
健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワークエンゲイジメント | ヘルスリテラシーの向上 | ④管理職、従業員に対する教育機会 | ④~⑦から1項目以上 | ||
ワークライフバランスの推進 | ⑤適切な働き方実現に向けた取り組み | ||||
職場の活性化 | ⑥コミュニケ-ションの促進 | ||||
病気の治療と仕事の両立支援 | ⑦病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み(⑭以外) | ||||
従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策 | 保健指導 | ⑧保健指導の実施、特定保健指導実施機会の提供 | ⑧~⑭から3項目以上 | ||
健康増進・生活習慣病予防対策 | ⑨食生活の改善 | ||||
⑩運動機会の増進に向けた取り組み | |||||
⑪女性の健康保持・増進に向けた取り組み | |||||
感染症予防対策 | ⑫従業員の感染症予防に向けた取り組み | ||||
過重労働対策 | ⑬長時間労働者への対応 | ||||
メンタルヘルス対策 | ⑭メンタルヘルス不調者への対応 | ||||
受動喫煙対策 | 受動喫煙対策 | 必須 | |||
4.評価・改善 | ⑮健康経営の評価・改善に関する取り組み | ||||
5.法令遵守・リスクマネジメント | 定期健診の実施、ストレスチェックの実施など | 必須 |
大規模法人部門、中小規模法人部門に共通しているのは、衛生委員会の活用や産業医、保健師と連携して各評価項目に取り組んでいくことが、認定への近道になっている点です。
産業保健新聞を運営するドクタートラストでは、受診勧奨の取り組みや教育機会の設定などの取り組みのお手伝いが可能です。
どのように取り組んでいこうが迷ったときには、ご相談ください。
健康経営優良法人2021の注意点
ブライト500
大規模法人部門中、特に健康経営への取り組みが優良な企業を認定する「ホワイト500」制度が健康経営優良法人認定制度が開始した2017年度より設けられています。
これに加え、2021年度は、中小規模法人部門で「健康経営の評価項目における適合項目数15項目中12項目以上の適合」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」を認定する「ブライト500」という制度が新たに誕生します。
新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、健康経営のために企画していたセミナーやイベントが行えず、今年の認定は難しいかもしれないと考えている企業もあるのではないでしょうか。
状況を受け、健康経営優良法人2021ではいくつかの配慮が行われることとなっています。
また、コロナウイルス感染症の流行により、社内の健康管理の見直しを迫られている企業もあると思います。
新型コロナウイルス感染症流行に併せて行った取り組みが、評価項目のうちの一つの「従業員の感染症予防に向けた取り組み」で評価される可能性がありますので、こちらも実施した取り組みを見直してみることをお勧めします。
健康経営優良法人認定に取り組んでいくということは、従業員が健康管理を重点項目としてとらえ、投資を行っている企業だといえます。
そのような企業では、従業員が健康的に働くこと、職場環境が良好であることへとつながっていき、生産性の向上や業績の向上へとつなげていくことができます。
健康経営優良法人を認定している機関は「経済産業省」です。
つまり、認定されることで行政により健康経営について積極的に取り組んでいることを認められている企業ということになるため、採用活動や地銀・信金などからの融資の際のメリットにもなります。
<参考>
経済産業省「健康経営優良法人の申請について」