ヘッドホン・イヤホンは最大出力の60%以下の音量に!「現在の習慣」が「将来の難聴リスク」に
- 2024/11/20
- 病状・症状
12~35歳の若年世代のうち、約半数の11億人が「難聴発症のリスクにさらされている」と世界保健機関(WHO)が警鐘を鳴らしていることを皆さんはご存知でしょうか。
若年世代が難聴のリスクにさらされている原因には、「ヘッドホン・イヤホン難聴」が影響しています。
ヘッドホン・イヤホン難聴とは
ヘッドホンやイヤホンで大きな音を長時間連続して聞き続けることによって、聞こえにくさや、耳鳴り、耳が詰まった感じがすることを「ヘッドホン難聴」、あるいは「イヤホン難聴」といいます。
正式には、「音響性聴器障害」や「騒音性難聴」といいますが、このような症状が出始めた場合、ゆっくりと進行し、最悪の場合、聴力を失う可能性もあります。
この病気の恐ろしい点は、時間をかけてゆっくりと耳の機能が衰えていき、「異変に気づきにくい」こと、そして「治らない」ことです。
なぜ聞こえにくさを感じるの?
まず、私たちが音を感じるためには、音の振動を脳に伝える内耳の「有毛細胞」の先端にある「聴毛」が音の振動をキャッチし、それを電気信号に変換して、脳に伝達する一連の流れが必要となります。
ところが、この聴毛は非常に繊細で、大きな音(=大きな振動)に長時間さらされることによって、抜け落ちたり、傷ついたりすることがあります。
そのため、音の振動をキャッチすることができなくなり、その結果、難聴の症状が現れるというメカニズムです。
内耳の入口部分は、高音をつかさどるため、ヘッドホン・イヤホン難聴は、高音が段々と聞こえづらくなります。
しかしながら、日常生活では大きく支障をきたすわけではないため、難聴が進んでいることに気づきにくいのです。
そして、一度傷ついてしまった聴毛や有毛細胞が再生することはないため、聴力の回復が難しいのですが、10年後、20年後に気づいた時には、手遅れとなっている場合が多いという状況になります。
つまり、大きな音量で音楽等を聞き続けている習慣がある方は、将来の難聴のリスクが非常に高いということなんです。
予防のためには「現在の習慣」を振り返りが大切です。
<こんな「習慣」になっていませんか>
① 通勤途中は、ヘッドホンやイヤホンをして音楽やラジオ等を聴き、周囲の音が気になる場合は、音量を上げている
② ヘッドホンやイヤホンを使用する際、音量を最大出力音量の60%以上に設定している
③ 日中はオンラインでの会議や講義、夜はゲームや動画、オンライン学習などで、ヘッドホンやイヤホンを長時間使用している
④ 特にゲームや好きなアーティストの曲を聴く際などは、音を大きくして臨場感を楽しむことがある
⑤ ヘッドホンやイヤホンを使用している際、周囲の声やアナウンス、車などの走行音が聞こえず、話しかけられても気づかないことがある
みなさまの「習慣」はいかがでしょうか。
これらの項目に1つでも当てはまった場合は、下記のポイントを参考に習慣を見直してみましょう。
将来難聴にならないために
難聴を予防するためのポイントはこちらです。
・ イヤホンやヘッドホンでの音楽鑑賞などは、音量を最大出力音量の60%以下にしましょう
・ イヤホンやヘッドホンでの音楽鑑賞などは、1日1時間以内にとどめましょう
・ ノイズキャンセリング機能の付いたヘッドホンやイヤホンを使用しましょう
・ 少なくとも1時間に1回、10分程度は耳を休めましょう
・ 耳の聞こえにくさや耳鳴りを自覚した場合は、ヘッドホンやイヤホンの使用をすぐに中止し、できるだけ早く耳鼻科を受診しましょう
WHOはヘッドホン・イヤホン難聴を予防するための安全な音量として、装着時は80dB(走行中の電車内くらいの音量)を推奨しています。
ヘッドホン・イヤホンの最大出力は100~120dBくらいですから、表示の60%以下の音量に設定するとよいということになります。
たとえば、ヘッドホン・イヤホンをしたままでも会話が聞き取れるくらいの音量であれば、ほぼリスクがないといわれる65dB程度ですので、これも目安になりますね。
ノイズキャンセリング機能がついたヘッドホン・イヤホンであれば、周囲の騒音を抑えてくれるので、より小さな音量で楽しむことができます。ぜひ試してみてください。
難聴になると、危険を察知する能力の低下や、周囲とのコミュニケーション不良、認知症のリスクを高めるなど、さまざまな社会生活に支障をきたしやすくなります。
難聴を予防するためには、生活習慣病の管理や、栄養バランスがとれた食事、適度な運動、規則正しい睡眠、禁煙も非常に大切です。
現在は影響を感じていない場合でも、長年悪い習慣を続けていれば確実に耳にダメージが蓄積していきます。
皆さんも音楽などの聞き方や音量、そして生活習慣についても、大切な「耳のために」という視点で一度見直してみてはいかがでしょうか。
<参考>
・ 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「Hear well Enjoy life. – 快聴で人生を楽しく」
・ 厚生労働省「ヘッドホン(イヤホン)難聴」