2023年12月22日、厚生労働省は「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」を公表しました。
本結果は、2023年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計したものです。
今回は本結果からわかる民間企業の現状と、2024年4月1日以降の障害者雇用促進法の変更点を解説します。
2023年の障害者雇用状況
障害者雇用促進法では、事業主に対し常時雇用する従業員の一定割合以上の障害者を雇うことが義務づけられており、従業員43.5人以上の企業では法定雇用率は2.3%が定められています。
本結果によると、雇用障害者数は64万2,178.0人(対前年差2万8,220.0人増加、対前年比 4.6%増加)、実雇用率は2.33%(対前年比 0.08 ポイント上昇)でともに過去最高を更新しています。
また、法定雇用率達成企業の割合も 50.1%で対前年比 1.8 ポイント上昇しています。
雇用者のうち、身体障害者は360,157.5人(対前年比0.7%増)、知的障害者は151,722.5人(同3.6%増)、精神障害者は130,298.0人(同18.7%増)と、いずれも前年より増加しています。
身体障害者と知的障害者にくらべて、特に精神障害者が大きく伸びています。
また、精神障害者雇用の伸び率は、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇入れからの期間等に関係なく1カウントとして算定できる特例の延長(2023年4月以降)の影響も考えられます。
2024年4月1日以降の障害者雇用対策の変更点
以下では、2024年4月1日以降の障害者雇用対策の変更点をご紹介します。
障害者の法定雇用率の段階的に引上げ
現時点における民間企業の法定雇用率2.3%ですが、2024年4月からは2.5%に、また対象事業主の範囲も従業員数40人以上に拡大します。
現行 | 2024年4月~ | 2026年7月~ | |
民間企業の法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
対象事業主の範囲(従業員数) | 43.5人以上 | 40人以上 | 37.5人以上 |
一部の週所定労働時間20時間未満の方の雇用率への算定
障害特性により長時間の勤務が困難な障害者の方の雇用機会の拡大を図る観点から、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の方を雇用した場合、特例的な取扱いとして、実質雇用率上、1人を0.5人として算定できるようになります。
これからも法定雇用率が引き上げられる可能性はゼロではありません。
障害者の法定雇用率にとらわれない職場の環境作りを心がけていきたいですね。
そのほかの変更点
今回は、民間企業の障害者雇用状況と2024年4月1日以降の障害者雇用促進法の変更点を紹介しました。
また、雇用以外の分野では、障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日以降は「合理的配慮の提供」が事業者に義務づけられるようになるのも大きな変更点です。
これに伴い、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が示されたときには、負担が重すぎない範囲で対応することが求められます。
2006年に国際連合で採択された「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)によれば、合理的配慮とは、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」としています。
さらに「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)では「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない」としています。
改めて「知らなかった」とならないように企業で共有し、早めの行動や環境作りを心がけましょう。
<参考文献>
・ 厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」
・ 厚生労働省「障害者雇用対策」
・ 内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」
・ 外務省「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)」