一般社団法人日本経済団体連合会「2020年労働時間等実態調査」によると、副業・兼業を認めている企業は全体の22%にとどまり、決して多いとは言い切れません。
副業・兼業の容認が困難と考える理由としては、長時間労働につながる懸念や健康確保を課題として認識している企業が多いようです。
特に、建設業やドライバーに対してインターバル規制が設けられている運輸・郵便業などは、本業の心身への負担が大きいことが、導入を躊躇させる要因になっていると考えられます。
また、副業・兼業の導入を阻む要因には、企業側の懸念「副業・兼業を認めると、社員の転職・離職を誘発してしまわないか」があります。
リテンションとしての副業・兼業
しかし、副業・兼業を容認した企業をみると、施策の導入検討段階において優秀な社員の離職を懸念した企業もいる反面、人材採用で45.9%、離職防止で50.9%、モチベーション向上で50.3%、スキル向上で49.7%、社外人脈拡大で52.2%(株式会社パーソル総合研究所「副業の実態・意識調査」(2019 年5月))とむしろ優秀な人材の確保や定着などプラスの効果を実感している企業は多いようです。
人材を確保、維持していくうえで副業・兼業の容認は効果的といえます。
社内副業のすすめ
副業・兼業を推進していくにあたっては、健康課題に留意しつつ、多様な人事労務施策の一つと位置づけ、自社の実態にあわせて導入を検討していくことが肝要となります。
とはいえ、いきなり導入は難しいですよね。
たとえば、社外での副業・兼業を認めることが難しい場合には、働き手の自律性を重視した「社内副業」を検討することも一考の価値があります。
人材流出を防ぎつつ、人材の活用や社員の自己研鑽へとつなげられます。
社内副業の導入例「クロスジョブ制度」
こうした「社内副業」の代表例には株式会社ディー・エヌ・エー「クロスジョブ制度」があります。
クロスジョブ制度は、本人の希望により手を挙げ、社内の別事業にも最大3割まで兼務することができるいわゆる社内副業で、社員の自己研鑽・自己実現のサポートを目的としています。
2017年10月から始まり、ゲーム事業に従事するエンジニアが、キャリアを広げるため、管理部門で経験を積むというようなケースがあります。
最大3割というのはあくまで目安で、主務のA事業での業務がおろそかにならないようにという趣旨ゆえのこと。
主務がおろそかになる場合は、同制度の適用から外されます。
副業・兼業の導入を実施を検討している企業や、労働者の方はぜひ参考にしてみてください。
<参考>
・ 一般社団法人日本経済団体連合会「副業・兼業の促進」
・ 株式会社パーソル総合研究所「副業の実態・意識調査」