2020年9月24日、日本商工会議所ならびに東京商工会議所は「多様な人材の活躍に関する調査」集計結果を発表しました。
「多様な人材の活躍に関する調査」は、新型コロナウイルス感染症の影響による雇用や就業環境の変化を踏まえ、年々減少している生産年齢人口を補うために期待されている「女性」「外国人」「高齢者」といった人材の活躍に関する実情を知り、今後に活かすために実施されており、以下の3つのポイントでまとめられています。
① 女性の活躍推進への対応
② 外国人材の受入れ
③ 高齢者の就業機会の確保
今回は「多様な人材の活躍に関する調査」集計結果を上記3つのポイントからわかりやすくご説明します。
ポイント① 女性の活躍推進への対応
2016年4月に女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が施行されたこともあり、女性の活躍推進については、比較的取り組まれている印象です。
「多様な人材の活躍に関する調査」の集計結果をみると、女性の活躍を推進している企業の割合は81.5%に達しています。
しかし、「推進している」と答えたうちの約半数が「課題がある」としており、まだまだ試行錯誤の段階だといえます。
では、「課題がある」と答えた企業は、どんなことに課題を感じているのでしょうか。
集計結果によると、トップ3は以下の通りです。
<多様な人材の活躍を推進していくうえでの課題>
1位 44.2%:幹部(管理職・役員)になることを望む女性がいない
2位 40.8%:女性の管理職比率が低い(向上しない)
3位 27.6%:出産・育児を気に女性社員が辞めてしまう
1位、2位の課題は、どちらも女性管理職についての課題で少し似ていますね。
「幹部(管理職・役員)になることを望む女性がいない」「女性の管理職比率が低い(向上しない)」と諦めるのではなく、どうして幹部になりたくないのか社内制度の確認と見直しが必要でしょう。
もしかしたら、3位の育児出産に関する制度が不十分で、幹部になることを諦めている女性もいるかもしれず、すべての課題はつながっていると考えられますね。
また、最近話題になった男性社員の育児休業取得の義務化については、「反対」「どちらかというと反対」と答えた割合は70.9%と高い数値でした。
特に、運送業・建設業といった人手不足感が強く、かつ男性が多い業種では「反対」と回答した割合が比較的多い結果です。
「ただでさえ人手不足なのに義務化されたらたまったもんじゃない!」という状況は容易に想像できます。
ポイント② 外国人材の受入れ
さて、「ポイント①女性の活躍推進への対応」で「人手不足」に触れましたが、次は外国人材の受入れについてです。
「外国人材の受入れニーズがある」と回答した企業の割合は48.7%ですが、人手不足の企業に限ると52.5%となり、半数を超えています。
また、「ある(すでに雇用している)」と答えた企業は23.5%で、2018年が16.3%だったので、外国人の雇用は着実に増加しているといえます。
業種別でみると、介護・看護業が最も「外国人材の受入れニーズがある」と回答しており、その割合は76.4%。
次いで、宿泊・飲食業が72.3%です。
前述の運送業や建設業では、そこまで外国人材のニーズはないようです。
なかなか難しいところですね。
ポイント③ 高齢者の就業機会の確保
2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されることにより、70歳までの就業機会の確保が努力義務となります。
企業は次のいずれかの措置を導入することで、70歳までの安定した雇用を確保するように努めなければいけません。
1. 70歳までの継続雇用制度の導入
2. 70歳までの定年引上げ
3. 定年の廃止
4. 70歳になるまで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5. 70歳になるまで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
「多様な人材の活躍に関する調査」集計結果によれば、現時点で講じる予定の措置は「1. 70歳までの継続雇用制度の導入」が最も多く56.4%でした。
一方で、「わからない」と回答した企業も21.9%あり、具体的な取り組みや対応を検討している段階の企業もまだまだ多い状況のようです。
70歳までの就業機会の確保に関する課題は、以下が挙げられています。
1位 45.4%:本人の体力的な面や疾病等の面で難しい
2位 31.9%:労災の増加が懸念される
3位 29.5%:若い年齢層の採用や活動の阻害になる
日本人の平均寿命が長いことは有名ですが、70歳までの就業機会の確保となると「健康寿命」が重要になってきます。
この機会に従業員への健康経営についても見直してみると良いかもしれませんね。
<参考>
日本商工会議所「『多様な人材の活躍に関する調査』の集計結果について ~女性、外国人、高齢者の活躍推進に向けての課題が明確に~」