2024年春「時間外の上限規制」がドライバーに導入!何が変わる?何を変える?

生活・交通を支えるバスやタクシーの運転手、物流を支えるトラック運転手に代表される自動車運送事業では、長時間運転や、健康課題に向き合ってきており、それによって交通事故の件数は近年減少傾向がみられます。
しかし、まだまだ課題は残っており、その筆頭格が「長時間労働」です。

自動運送事業場抱える課題

自動運送事業の現場における共通した課題には、労働時間数、所得、従業員数の減少、従業員の高齢化などが挙げられます。
このうち「従業員の高齢化・高齢化」では全国のトラック運転者の年齢構成上、45~59歳が45%%超、29歳以下が10%にとどまっています。
一方では、近年のECサイトの発展により、宅配便の取扱件数はここ10年で16億個も増加しました。
新型コロナウイルスの拡大により在宅勤務者が増加、再配達の件数が一気に激減をしたものの、ここ数年では増加傾向が見られます。
また、平均年間所得額は、全産業が平均489万円であるのに対して、バスの運転手は404万円(2022年)と乖離が見られることも大きな課題です。
さらに、女性の進出、若年層を獲得していくといった観点でも、事業全体として課題を抱えており、改善をすることにより、一人ひとりの働きやすい環境を整えるだけでなく、生活水準を上げて、労働者を増やしていくための対策が必要となります。

2024年4月施行!改善基準告示の改正

トラック、バス、ハイヤー・タクシー等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間の上限、休息期間について基準等が設けられた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた1997年以降、改正は行われていませんでしたが、2022年12月に「自動車運転者の健康確保等の観点」により見直しが行われ、拘束時間の上限や休息期間等が以下のように改正されました(2024年4月1日施行)。

トラックの見直し内容

現行2024/4~
拘束時間/年3,516時間原則:3,300時間
拘束時間/月原則:293時間
最大:320時間
原則:284時間
最大:310時間(1年間の拘束時間が3,400時間を超えない範囲で年6回まで)
※284時間超が3ケ月超連続しないこと
※時間外・休日労働/月が100時間となるよう努める
休息時間/日継続8時間継続11時間を基本とし、9時間下限
※長距離・泊付きの運行の場合は、運行を早く切り上げ、まとまった休息をとれるよう例外を規定

バスの見直し内容

現行2024/4~
拘束時間/年3,380時間原則:3,300時間
拘束時間/月【4週平均1週間】
原則:65時間(月換算:281時間)
最大:71.5時間(月換算309時間)
【1ケ月の拘束時間】
原則:281時間
最大:294時間
※281時間超が4ケ月超で連続しないこと
※4週平均1週の拘束も同水準で存置
休息時間/日継続8時間継続11時間を基本
※下限:9時間

タクシーの見直し内容

現行2024/4~
拘束時間/月<日勤>
299時間(年換算:3,588時間)
<隔勤>
原則:262時間
最大:270時間(年6回まで)
<日勤>
288時間
<隔勤>
現行どおり
休息時間/日<日勤>
継続8時間
<隔勤>
継続20時間
<日勤>
継続11時間を基本とし、9時間下限
<隔勤>
継続24時間を基本とし、22時間下限

基本的にはトラック・バス・タクシー共通して、運転手の拘束時間(労働時間+休憩時間)と、使用者の拘束を受けない休息期間の変更が行われました。
たとえば、トラック運転者だと、現行の拘束時間が3,516時間だったのが、改正により、原則3,300時間に変更となり、216時間減少します。
休息時間とされる、「業務終了時刻から次の始業時刻まで」がこれまで継続して8時間であったところも、継続11時間を基本とし、9時間を下限とすることとなります。

企業での改善取り組みと私たちが気を付けるべきこと

改正内容に合わせて急に業務内容を軽減させたり、業務量を調整させるのは難しいことが想定されます。
そのため、企業ごとにさまざまな工夫をして拘束時間の減少を目指しています。
運送会社の事例だと、荷物の積み替え作業により、従業員の労働時間が増加してしまうことを課題とし、作業を効率化させるためのアクションプランを作成したり、ミスが発生しやすい類似商品を多く扱う現場では、類似商品リストカードを全員に配布し簡単に積み荷時の確認ができるような工夫を取り入れています。
またITを取り入れてより正確な管理を行う企業も増えてきています。

これらのように、各企業で工夫をして従業員の負担軽減に向き合っているなかで、サービスを受けている私たちも工夫を取り入れることが求められます。
たとえば不在時に荷物が届いた時には再配達ではなく、コンビニや宅配ボックス、営業所での受け取りを行ったり、ECサイトで買い物をするときにはまとめ買いを行い、事前に受け取りやすい日時を設定するなど、一人ひとりが小さな工夫をすることで自動車運送事業の業務負担の改善につながり、業界全体のイメージアップや、従業員の獲得につながることが期待できるのではないでしょうか。

<参考>
厚生労働省自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

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越久田美穂株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

福祉業界出身です。働く世代の現在の健康が、何十年も後のその人らしい暮らしに大きく関わっていると感じています。現在から将来につながるような、実用的な情報をご提供いたします!

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