どうして睡眠は必要?今さら聞けない「眠りのキホンAtoZ」

私たち人間は毎日睡眠をとっていますが、なぜ、睡眠をとらないといけないのでしょうか?
このコラムでは、睡眠全般の基本的なことをわかりやすく解説します。

睡眠の役割・メカニズムとは?

まずは睡眠の役割・メカニズムをおさらいします。

睡眠の役割

睡眠は、以下の役割を担っています。

・  「脳」と「身体」に「休息」を与える
・ 「記憶」を整理して定着させ、「情動」整理を行う
・ 「ホルモンバランス」を調整する
・ 「免疫力」を上げて病気を遠ざける
・ 「脳の老廃物」をとり、細胞を再生させる

睡眠のメカニズム

睡眠パターンは、レム睡眠とノンレム睡眠の2相によって構成されています。
入眠から30分ほどで深い睡眠(ノンレム睡眠)に入り、その後は周期的に深い睡眠と浅い睡眠(レム睡眠)を繰り返しています。

・ レム睡眠:記憶の定着時間や、骨格筋疲労回復時間(身体の休養時間)と呼ばれており、眼球が動いており、脳は起きている時間となります。夢を見るのも、このレム睡眠の時間です。
・ ノンレム睡眠:血管や神経等の身体のメンテナンス時間、神経細胞の修復等の脳の休養時間でもあります。眼球は動いておらず、呼吸や心拍数、体温、血圧を下げて、全身のメンテナンスを行います。

出所:厚生労働省e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」

必要な睡眠時間

必要な睡眠時間は6~8時間といわれていますが、個人差があります。
睡眠時間の目安としては、日中眠くて困らない程度がいいと言われていますが、働く世代の皆さまには最低6時間は確保するようお勧めしています。
6時間を切ると、生活習慣病や心疾患、脳血管疾患の発症リスクが高くなったり、風邪など感染症に罹患しやすくなったり、メンタル不調になりやすくなったり、認知症になりやすい、といったように、心身に様々な影響を及ぼしやすくなります。

睡眠トラブル(不眠症)

不眠症状には、寝つきの悪い「入眠障害」、眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めて再度眠れない「早朝覚醒」などのタイプがあり、日中に倦怠感や意欲低下、食欲低下などの不調が出現することを不眠症といいます。
不眠と日中の不調が週に3日以上あり、それが3カ月以上続く場合は慢性不眠症、3カ月未満の場合は短期不眠症と診断されます。
不眠症は国民病といわれており、一般成人の30~40%が何等かの不眠症状を有していると言われています。
加齢とともに不眠症状は増加し、60歳以上では半数以上の方で不眠症状が認められていますが、不眠症は特殊な病気ではなく、よくある病気なのです。

質の良い睡眠をとるには?

人間は睡眠に関わるホルモン「メラトニン」が分泌されています。
日中は分泌が減り、夜暗くなると分泌量が増えます。
私たちが夜、自然と眠たくなるには、この「メラトニン」の分泌によるものです。
そしてメラトニンの分泌を増やして、自然に眠くなるには光のコントロールが大切になります。
自律神経ケアや生活習慣チェックも含め、質の良い睡眠をとるための3つのポイントを解説していきます。

① 光のコントロール

人間は光によってサーカディアンリズム(体内時計)を整える必要があります。
サーカディアンリズムは24時間と15分あるのですが、この15分をリセットするために、朝の光を浴びることはとても大切です。

・ 朝はしっかり明るく、夜はしっかり暗く(コンビニの光は太陽光レベルと言われているため、夜の買い物は手短に)
・ 目覚める前から光を浴びることで起きやすくなる
・ 「朝起きたら、カーテンを開けて光を浴びる」でもOK
・ 積極的に光を浴びることで睡眠ホルモンの前駆物質(セロトニン)が分泌される
・ 自宅でも部屋の照明をオレンジ色にしたり、電気を少し暗めにする
・ スマホは寝る1時間前から触らない(「どうしても触りたい!」ということであれば、ナイトモードに!)

② 自律神経ケア

眠れないときはどう過ごしていますか?
寝付けないまま、色んなことを考えたり、スマホを触っていると、交感神経が優位になり、光刺激でメラトニンが抑制されてしまいます。
ですので、寝付けない際はいっそ布団から出ましょう!
そして、身体がリラックスするように、真っ暗のままか、薄暗い光のもとで、以下のようなことを試してみましょう。

・ ヒーリングミュージックを聴く
・ ストレッチ
・ 人に話す
・ マインドフルネス呼吸法
・ 今日の良かったことを書き出す

生活習慣チェック

寝る前にカフェインやお酒を飲むことはありますか?
実は、寝る前のカフェインやお酒を飲むと、睡眠への影響度は高いと言われています。
アルコールを飲むと、寝つきはよくなりますが、途中で喉が渇いたり、トイレに行きたくなる等で、睡眠が分断されてしまい、睡眠の質が低下してしまいます。
また、カフェインを夕方以降に飲むと、睡眠障害の発生率が2.1倍に高まる傾向にあるので、夕方以降はカフェインが入っていないものを飲みましょう。
それに加え、喫煙も入眠を妨げてしまいます。
たばこに含まれるニコチンは、比較的強い覚醒作用があるためです。
喫煙により、血圧や心拍数が増加することで交感神経が優位になり、入眠を阻害してしまいます。
たばこは少なくとも寝る前1時間前までにしておく方が望ましいでしょう。

そして、お休みの日は仕事の日より遅く起きる方はいませんか?
私たちは日頃、仕事などのリズムに合わせて生活リズムを作っていますが、週末に遅く起きることで、軽い時差ぼけのような状態になってしまいます。
そのことを「ソーシャルジェットラグ=社会的時差ぼけ」と言います。
この現象が起きると、週の半ばまで眠気が強いという傾向にあるので、お休みの日でも同じ時間に寝ましょう。
それでも日中眠たくなる場合は20分程度のお昼寝も活用してみましょう。

睡眠管理には正しい知識が必要です。

・ 朝はカーテンを開けて太陽光を浴びる
・ 夕方以降はやさしい光の部屋で過ごす
・ 寝る前にはスマホ・テレビ・パソコンから離れる
・ 眠れないときは布団を離れてリラックス
・ 寝る前の飲酒・カフェイン・喫煙はNG

上記をぜひ本日から実践し、質のいい睡眠をとって、明日からも頑張りましょう!

<参考>
・ 厚生労働省e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
・ 厚生労働省「知っているようで知らない睡眠のこと(PDF)」
・ 厚生労働省e-ヘルスネット「不眠症」

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楠原 綾香株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学時代から公衆衛生看護学に興味を持ち、保健師を志していました。大阪の病院で消化器外科・内科、回復期リハビリテーション病棟に勤務し、患者さまと関わっていくなかで、予防医学への関心も高まったことから、産業保健師として活動すべくドクタートラストへ入社。
看護以外に、新人教育や対面での学習会の開催もしてきました。これらの経験を活かし、保健師として情報を発信していきます。
【保有資格】看護師、保健師、第一種衛生管理者
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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