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企業側に課される「安全配慮義務」、従業員側に課される「自己保健義務」とは
- 2022/2/22
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「安全配慮義務」を遂行すべく産業医を選任したり、衛生委員会を開催したり、働きやすい職場環境づくりを意識をしている企業が増えてきていますが、一方では、企業だけでなく、従業員にも「とあること」が義務づけられているのはご存じでしょうか。
それが「自己保健義務」といわれるものです。
企業は従業員に「安全配慮義務」「自己保健義務」を周知し、使用者側、従業員側双方で協力して、働きやすい環境をつくっていくことが望ましいです。
今回は「安全配慮義務」と「自己保健義務」をわかりやすく解説します。
企業側に課される「安全配慮義務」とは
安全配慮義務とは、労働者が安全に働けるような環境を提供する配慮や対策を行う、企業の責任を指し、労働契約法5条で定められています。
(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法
安全配慮義務は、一人でも労働者と雇用契約を結んで従業員となる場合に必ず課されます。
労働災害が起こらないように対策、改善をすること、またメンタル面においても、不調になる前に予防を行ったり、不調になった際に対処したりすることが求められています。
従業員のメンタル面、フィジカル面の不調が、企業の安全配慮義務に違反していると認められ、損害賠償が求められた事例もあります。
従業員側に課される「自己保健義務」とは
自己保健義務とは、「安全配慮義務」とは反対に労働者が負う義務で、労働安全衛生法で定められています。
(事業者等の責務)
第4条 労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。(健康診断)
第66条
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。(保健指導等)
第66条の7
2 労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。(健康教育等)
2 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。
労働安全衛生法
労働者は、従業員の安全を守るため、安全配慮義務の観点から必要事項を決定し、それに対し、従業員は企業の措置に協力する義務が発生するのです。
企業も働きやすい環境を作る必要があるのですが、従業員自身の健康については従業員から発信をしないと気づけないケースも多々あるため、義務とされているのは以下の通りです。
会社が実施する健康診断を受診する義務
健康診断の検査項目である自覚症状の有無の申告も義務とされています。
自覚症状は本人の申告がなければ知ることが困難で、申告がなければ企業も適切な対応を取ることができません。
健康管理措置への協力義務
会社が健康管理措置を実施する際、労働者側の協力なしには目的を果たせない場合があるため、従業員は会社の措置に協力する義務があるのです。
たとえば、騒音の大きな現場で会社が健康障害の防止のために必要な耳栓を使用するよう指示している場合には、労働者はそれを使用する義務があります。
療養専念義務
病気やケガの療養のため休職している場合、労働者は療養に専念しなくてはなりません。
療養中に病気やケガを 増悪させる行為をしたり、回復を妨げる行為をしたりすることは自己保健義務に違反することになります。
こういった事項については企業側が就業規則、またその他規則に規定し、労働者に周知することが重要です。
ストレスチェックの実施
企業が抱える問題の大きな一つが、メンタル不調者の対応ではないでしょうか。
これまで述べた、安全配慮義務、自己保健義務について、企業でも、従業員でも対策事項を確認しやすい手段の一つがストレスチェックです。
従業員数50名以上の事業場に実施が義務づけられるストレスチェックですが、これは上記にあるようにメンタルヘルスの予防のための安全配慮義務、および、自己保健義務の観点からも実施させること、実施することが重要になります。
ストレスチェックの実施に対し、それを受検するかどうかは従業員の意思にゆだねられており、本来任意での受検となります。
しかし従業員にも自己保健義務が発生している以上、企業が規則にストレスチェックの実施を定めているのであれば、受検をすることが望ましいでしょう。
ストレスチェックの実施後については結果をもとに、安全配慮義務の観点から企業は改善すべき点を改善することが必要となります。
従業員は、自分の結果をもとに、メンタル面でのセルフケアを行い、健康に働くための対策を行うことができるため、健康経営を行っていくうえで、状況把握、および対策を行うための適切な手段となるのです。
企業は従業員が働きやすいよう環境を整える義務が発生し、従業員は自己の安全に必要な発信をする。
双方の協力のもとに生産性向上にも直結する職場環境を整えましょう。