未来ある命を守るために~子どもの自殺対策の推進~
- 2023/10/16
- 育児
みなさんは長期休みの後、「学校に行きたくない」「仕事をしたくない」などと思ったことはありますか。
厚生労働省は2023年9月8日に「こどもの自殺対策の推進のために」を公表しました。長期休み明けとなる時期には、不登校や自殺者数が増える傾向にあります。
また、2022年の小中高生の自殺者数は、統計を取り始めた1978年以降 最も多い514名でした。
こうした非常事態に対処するため、政府は、2022年10 月に新たな「自殺総合対策大綱」を策定し、子どもや若者の自殺対策のさらなる推進・強化を図ることとしました。これらも踏まえ、今後も引き続き関係省庁が連携して、子どもや若者の自殺対策を推進することを宣言しています。
子どもの自殺対策緊急強化プラン
今回公表された「こどもの自殺対策の推進のために」は、2023年6月2日に、子どもの自殺対策に関する省庁連絡会議においてまとめられた「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を改めて周知する目的もあります。
「こどもの自殺対策緊急強化プラン」のポイント
<リスクの早期発見>
1人1台端末の活用(心の健康観察)などにより、自殺リスクの把握など全国の学校での実施を目指す
<的確な対応>
多職種の専門家で構成される「若者の自殺危機対応チーム」の全国設置
参照元:こども家庭庁「こどもの自殺対策緊急強化プラン」
このうち「若者の自殺危機対応チーム」とは、学校と地域が連携して、児童や生徒などの自殺を防ぐための新たな取組です。
学校は危機対応チームのメンバーである専門家(精神科医や精神保 健福祉士、弁護士やインターネットの専門家)から、自殺リスクに関する緊急性の有無や当該生徒への支援のあり方などについて直接アドバイスを受けることができます。
児童や生徒の命を守るだけでなく、学校の教職員の負担軽減にもつながると期待されています。
ゲートキーパーとは
「専門家への相談」は一般にはどうしても敷居が高いと思われがちです。
しかし、専門家でなくても力になれる人「ゲートキーパー」という役割があるのはご存知でしょうか。
ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけてあげられる人のことです。
特別な研修や資格は必要ありません。
ゲートキーパーには、誰でもなれます。
周りで悩んでいる人がいたら、やさしく声をかけてあげてください。
声をかけあうことで、不安や悩みを少しでも和らげることができるかもしれません。
ゲートキーパーは「変化に気づく」「じっくりと耳を傾ける」「支援先につなげる」「温かく見守る」という4つの役割が期待されていますが、そのうちどれか1つができるだけでも、悩んでいる人にとっては大きな支えになるでしょう。
変化に気づく | 家族や仲間の変化に気づいて声をかける |
じっくりと耳を傾ける | 本人の気持ちを尊重し耳を傾ける |
支援先につなげる | 早めに専門家に相談するよう促す |
温かく見守る | 温かく寄り添いながらじっくりと見守る |
また、ゲートキーパーは「命の門番」とも位置付けられています。
悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して「孤独・孤立」を防ぎ、支援することが重要です。
1人でも多くの方に、ゲートキーパーとしての意識を持ってもらい、専門性の有無にかかわらず、それぞれの立場でできることから進んで行動を起こしていくことがゲートキーパーの第一歩につながります。
難しくとらえすぎる必要はありません。悩んでいる人に寄り添い、話を丁寧に聴くことは大きな心の支えになるはずです。困ったときには相談窓口や専門家に相談してみてください。
e-ラーニング教材や窓口
さらに、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターでは、2023年9月19日より新たにゲートキーパーに関するe-ラーニング教材を作成しています。
自殺対策では、悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して「孤独・孤立」を防ぎ、必要な支援につなげることが重要です。
1人でも多くの方に、このような役割を担う「ゲートキーパー」としての意識を持っていただき、専門性の有無にかかわらず、それぞれの立場でできることから行動を起こしていただけるよう、自治体職員を対象とした「ゲートキーパー」に関するe-ラーニング教材を作成しました。
引用元:一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター「自治体職員向けゲートキーパー研修 eラーニングについて」
自治体職員を対象に作成されたものですが、YouTubeに資料を簡単にまとめた動画もあり学ぶことで「リスクにつながるような悩みに気づき、声をかけ、話を聴き、必要な支援につなげ、見守る人」としての知識を得ることができます。ぜひ活用してみてください。
また、厚生労働省が運営しているウェブサイト「まもろうよ こころ」には、電話やSNSでの相談窓口を掲載しています。
子どもが当事者として相談することのできる窓口として、「チャイルドライン」や「子供のSOSの相談窓口」(文部科学省)や「子どもの人権110番」(法務省)などもあり、大人だけではなく子ども自身の悩みに焦点を当てた対策も多く見受けられます。
日本はG7で唯一、10代の死亡原因の第1位が自殺であり、子どもや若者の自殺対策が喫緊の課題となっています。
何気ない言葉や会話が救いにつながることも多くあります。ぜひ、身近な人、周囲の大切な人たちのことについて少しでも考える時間を増やしてみてください。
<参考>
・ 厚生労働省「こどもの自殺対策の推進のために」
・ 厚生労働省「ゲートキーパーになろう!」
・ 一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター
・ 厚生労働省「まもろうよ こころ」