その肩こり、呼吸が関係しているかもしれません

皆さんは自分の呼吸を意識したことはあるでしょうか。
忙しい現代人にとって普段の呼吸を意識することは難しいですが、その「呼吸」が肩こりや頸こりの原因になっている可能性があります。
今回は呼吸様式と呼吸に関係する筋肉について解説し、簡単な改善方法をご紹介します。

腹式呼吸と胸式呼吸

呼吸は肺だけで行うと思っている人が多いのですが、実は、肺自体は自ら膨らんだり縮んだりできません。
肺は胸郭に囲われており、この胸郭が拡がると空気が入り、狭くなると空気が出ていき肺の収縮につながっていきます。
そして、胸郭を動かすのがその周りにある筋肉なのです。

人間の呼吸は、腹式呼吸胸式呼吸の2つに分けられます。
1つ目は、息を吸い込んだ時にお腹が膨らむ「腹式呼吸」です。
主に肺の下にある横隔膜という組織を使って呼吸をします。
2つ目は、「胸式呼吸」です。
激しい運動をしたあとなどには胸式呼吸となります。「肩で息をしている」とも形容される状態です。
胸式呼吸では、呼吸補助筋と呼ばれる頸から肩にかけての筋肉を使います。
そのため、胸式呼吸が長い時間続くと呼吸補助筋に負荷がかかり、肩こりや頸こりにつながってしまいます。

姿勢と呼吸の関係

呼吸は胸郭を拡げることで空気が入るため、肩が丸まって猫背になると胸郭が十分に拡がらず浅い呼吸(胸式呼吸)になってしまいがちです。
そのため、デスクワークなどでパソコンやスマートフォンを長時間使用することが多い人は呼吸が浅くなる傾向があります。

また、不安が多いと呼吸回数が増えやすい(呼吸が浅くなりやすい)こともわかっています。
喜怒哀楽の感情で変化する呼吸は情動性呼吸と呼ばれており、過度な緊張や不安・怒りによっても呼吸が乱れます。
経験したことがある方も多いのではないでしょうか。
逆に、不安などがなくリラックスした状態では、深くゆっくりとした呼吸(腹式呼吸)になります。

つまり、ストレスの多い現代人は呼吸が浅くなりやすいことが分かります。

腹式呼吸を意識する方法

これまでの話からも分かるように、おすすめの呼吸方法は腹式呼吸です。
下記方法で自分の呼吸を意識してみましょう。

① 両足をしっかり地面につけて立ちます
② 両手をお腹に添えて、鼻から息を吸い込みお腹が膨らむのを感じましょう
③ 口からゆっくりと息を吐き、お腹の空気を抜きます
④ 慣れてきたら、息を4秒かけて吸い、6秒かけて吐きます

上記方法で難しい人は、仰向けのほうがお腹の動きが分かりやすいので寝転がってチャレンジしてみましょう。

おすすめストレッチ

■肩のストレッチ
①足を肩幅に開き、立ちます
②鼻から息を吸いながら、両肩を前からゆっくり引き上げ、胸を拡げるように肩を後ろに回します
③口から息を吐きながら、肩の力を抜いて下ろします

■首のストレッチ
①足を肩幅に開き、立ちます
②片方の腕を右斜め後ろに伸ばします
③頭をその腕とは反対方向(左)に倒します
④この状態でゆっくりと鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐き、元の姿勢に戻ります
⑤左右交互に行います

※激しい痛みや持病がある場合には、主治医・専門家に相談するようにしてください。

この機会に、自分の呼吸をゆっくりと意識してみてはいかがでしょうか。

<参考>
・ Akae Kato、Koki Takahashi、Ikuo Homma「Relationships between trait and respiratory parameters during quiet breathing in normal subjects」(『The Journal of Physiological Sciences』68号、2018年)
・ 公益財団法人健康・体力づくり事業財団「呼吸筋ストレッチ体操と健康づくり」(『健康づくり』2023年2月号)
・ NPO法人安らぎ呼吸プロジェクト「呼吸を知る」
・ NPO法人日本ストレッチング協会「機能解剖一覧」

出演:横野凌(株式会社ドクタートラスト 保健師)

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砂川菜美株式会社ドクタートラスト 産業保健師

投稿者プロフィール

行政保健師として、乳児から高齢者まで幅広い世代の方々の健康に携わる中で、働く世代の健康増進の難しさと重要性を感じ、現在は産業保健師として活動しています。
健診事後措置や面談などの基本業務はもちろん、健康管理体制構築サポートや健康セミナーなど多方面で活動中。これまでの経験を活かし、それぞれのライフスタイルに寄り添った情報提供を行ってまいります。
【保有資格】看護師、保健師、第一種衛生管理者、健康運動指導士、人間ドック健診情報管理指導士、NARD JAPAN認定アロマアドバイザー
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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