不登校支援のプロが教える!子どもが不登校に…どうしたらいい?
- 2023/7/19
- 育児
「不登校」の子どもの数は過去最高を更新し続けています。
2022年10月に文部科学省が発表した「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2021年度における不登校の児童生徒数は前年度から24.9%も増え、過去最高の24万4,940人に上りました。
私は学校などの教育現場に長く勤め、不登校の子供たちの居場所や学びの場となる教育支援センター(適応指導教室)にも勤めました。
当事者である子どもと関わることも、その保護者の方と関わる機会も多くありました。
皆さん口をそろえて、「まさか自分の子どもがこんなことになるとは想像もしていなかった」と仰っていました。
しかし最初にお伝えした通り、不登校の児童生徒数は増え続けています。
もしかすると皆さんや周囲の方々のお子さんが不登校になることがあるかもしれません。
子どもが不登校になると、保護者が仕事を休んで一緒に過ごしたり、学校や相談機関に行くために仕事を休んだり、仕事をしていても家での子どもの様子が気にかかり仕事が手につかなくなったり、大きな影響を及ぼします。
実際に子どもが不登校になったことが理由で仕事の時間を減らした、仕事をやめてしまったというケースも少なくはなくありません。
もし不登校になっても、保護者が安心して働ける環境を作ることも必要です。
社会全体で不登校への理解を深めていく必要があるといえます。
なぜ子どもたちが不登校になるのか
不登校の要因のひとつは、子どもの心のエネルギーが足りなくなってしまうことです。
心のエネルギーが減ってしまう原因はいろいろなことが考えられますが、一例としては以下のようなものがあります。
〇授業(学習や運動など)についていけない
〇対人関係がうまくいっていない(家族・友人・教員など)
〇いじめを受けている、いじめの現場を目撃した
当てはまらないこともありますが、不登校の陰にはこのようなきっかけが潜んでいます。
「この原因をとりのぞけばすぐに学校に行けるのでは?」とおっしゃる保護者の方もいます。
しかし子どもが学校に行けなくなった段階は、エネルギーをかなり消耗している状況です。
原因が解決してもエネルギー不足でなかなか学校に行けないこともありますし、行けたとしてもすぐにまた休んでしまうこともあります。
エネルギーがしっかりとたまるまで一定の期間は必要になるかもしれません。
不登校はサボり?
不登校はサボりではありません。
むしろ不登校になる子どもの多くは優しく思いやりがあります。
しかし、優しさゆえに周りに気を使いすぎて自分の心のエネルギーが足りなくなってしまうのです。
不登校の子ども自身も「学校には行くべき、行かないといけない」と思っていることが多く、行けない現実との板挟みになり、学校に行ってほしいという大人の気持ちを敏感に察知して自分を責めてしまいます。
また、中には発達障害などの特性を抱えている子どももいて、特性によってさまざまなトラブルや困りごとが起きてしまうため、心のエネルギーが足りなくなってしまうこともあります。
大人でも仕事が忙しかったり、対人関係がうまくいかなかったりすると心のエネルギーが足りなくなってうつ病や適応障害になります。
大人には休職や配置換え、転職などの自分を守る選択肢があります。
しかし子どもたちはクラスを変える、学校を変えるということが難しく、学校に戻るには時間がかかることが多いです。
子どもが学校に行きたくないと話したら
無理に学校に行かせず、まずはゆっくり休む
不登校の初期にはエネルギーが底をついて、部屋にこもったりずっと寝たりする子どももいます。
保護者としては不安に思うかもしれませんが、この時期はゆっくりと休んでエネルギーを回復させることが大切です。
また、学校に行かせるとかえって悪化することもあるため、無理強いをしないようにしましょう。
子どもの聞き役になる
学校に行ってほしい保護者からすると、子どもの言うことや考え方を否定したくなることがあります。
しかし外との関わりの少ない不登校の子どもが気持ちを吐き出せるのは、保護者です。
ぐっとこらえて、聞き役に徹してあげましょう。
自分の話を親身に聞いてもらえることは、自分を受け止めてくれる人がいることで自己肯定感の向上や自信につながります。
エネルギーをためるためにはとても大切なことです。
同時に保護者の気持ちを吐き出せる場も作りましょう。
保護者として学校に行かせたい気持ちや子どもへのモヤモヤがあるのも当然ですので、お一人で抱えずに誰かに話してみましょう。
家族や友人に話してみるだけでもスッキリしますし、なかなか人に話しにくい時には後述の専門家などを活用しましょう。
また、不登校の子どもがいる保護者が参加できる座談会があります。
最近ではオンラインでの開催や、匿名制のグループチャットなどがあり、参加のハードルが低くなっていますのでぜひご活用ください。
家を安心できる場所にする
不登校の子どもにとっては家がすべての居場所です。
安心できる環境で過ごすうちに、エネルギーがたまってくるでしょう。子どもの意見や考えを否定しないことは重要ですが、過保護にしすぎるのもよくありません。
家族の一員としての役割を果たせるようにしましょう。
お風呂掃除をする、犬のご飯をあげるなど、小さな役割をお願いするのも一つです。
続けられたということと家族の役に立っているということが自信につながるため、時には一緒にやって、感謝の気持ちを忘れずに伝えましょう。
家族だけで抱えず専門家に頼る
不登校は良くないことで、誰にも相談できないと考える保護者の方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、家族だけで抱えるのは子どもにとっても保護者にとっても大変なことです。
学校の先生や専門家に相談することで、保護者の方の心も楽になることがあるでしょう。
また、専門家の介入が必要な場合もありますので、気軽に相談してみましょう。
相談できる専門家には以下のようなものがあります。
どこに相談していいかわからない場合は、お住まいの自治体の状況に詳しい学校の先生やスクールカウンセラーに聞いてみることもひとつです。
【病院】
・ 小児科
・ 精神科
※精神科の予約には時間がかかることが多いです。小学生や中学生であれば、かかりつけの小児科に相談することも有用です。
【公的機関】
・ 保健所
・ 児童相談所、児童相談センター、児童家庭支援センター など
・ 発達障害者支援センター
【民間】
・ フリースクール
・ 親の会
・ その他支援団体
不登校は誰にでも起こりうることですが、家族の問題として家族だけで抱えがちです。
しかし、最近では不登校への理解も進み、サポートしてくれる相談機関も増えています。家族以外の相談機関を活用しましょう。
また、子育て世代に限らず、さまざまな年代や立場の人々が不登校への理解を深めることで、社会からのサポートをしていきましょう。
<参考>
・ 厚生労働省「こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト」
・ 文部科学省「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」