法人代表者が自らの事業場の産業医を兼任することは禁止されます
- 2016/3/10
- 労働安全衛生法
厚生労働大臣は、3月8日、労働政策審議会に対して、
「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について諮問を行いました。
この諮問を受け、同審議会安全衛生分科会で審議が行われ、
同審議会から妥当であるとの答申がありました。
その労働安全衛生規則の一部とは、
「法人の代表者などが、自らの事業場の産業医を兼任することが禁止になる」という内容です。
厚生労働省は、この答申を踏まえ、速やかに省令の改正作業を進めるとのことです。
(平成28年3月公布、平成29年4月1日施行予定)
産業医の役職に制限はなかった
産業医の「選任」については、労働安全衛生法第13条の規定において、事業者は、
厚生労働省令で定められた医師のうちから選任することとされていましたが、
その一方、産業医として選任できる者の事業場等における「役職」については、
労働安全衛生規則で制限は設けられていなかったのです。
そのため、企業の代表取締役、医療法人の理事長、病院の院長等が
産業医を兼務している事例がみられることがありました。
今回の規則改正のポイント
先述の通り、産業医の役職に関しての定めは今までありませんでした。
しかしながら、労働者の健康管理は一定の費用を伴うものであるため、
事業者を代表する者や事業場においてその事業の実施を統括管理する者が
産業医を兼務した場合、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する観点から、
産業医としての職務が適切に遂行されない恐れが考えられます。
このために、事業者が産業医を選任するにあたって、一定の制限を設けることを定めたのです。
来春より施行予定
今回の改正をまとめると、
「事業者は、産業医を選任するにあたって、法人の代表者若しくは
事業を営む個人又は事業場においてその事業の実施を統括管理する者を選任してはならない」
という内容になります。
私も数年前、実際に、とあるクリニックの医局長から、
「医院長が産業医を兼務しているのだが、本来産業医は外部の第三者にお願いするべきだよね?」
との質問を受けたことがあります。
医局長の仰る通り、産業医は外部の医師にお願いするべきだと思います。
産業医は何よりも、第三者的立場から、事業主と労働者の中立のポジションに立ち、
職務を果たすことが大切だと思われます。
この規則改正の施行は、平成29年4月1日を予定されています。
病院を経営する企業や法人の中には、医院長や医局長が
産業医を兼務されているケースも多いのではないでしょうか。
施行まで1年と猶予はありますが、このタイミングで一度ご留意することをおすすめいたします。