運転業務はほかの仕事とくらべて、労働時間の算出にやや複雑な面があります。
―――ドライバーの運転業務以外の移動時間は、休憩時間として扱ってよいか?
―――シフトを組むときや産業医面談の対象者を選ぶとき、ドライバーの勤務時間は、運転時間だけを考えればよいのか?
こうしたポイントに関してあいまいなところがないよう、人事労務担当者は確認しておきましょう。
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
運転業務は本来業務が間欠的であり、労働時間中においても手待ち時間があり、実作業時間が拘束時間と一致しないのは当然のことです。
また、場合によっては長時間にわたる拘束や連続勤務なども考えられます。
このような特性をもつことから、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成12.12.25労告120号)により、自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間等について一定の基準が設けられています。
この基準は、自動車運送事業を①一般乗用旅客自動車運送事業、②貨物自動車運送事業、③一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業の3つに分類し、それぞれについて拘束時間、休息期間、運転時間、連続運転時間などについて規定しています。
今回は特に③一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業の中でも、送迎など運転を業務とする従業員の労働条件を、厚生労働省が示している「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」をもとにして見直してみることにしましょう。
拘束時間とは? 労働時間とは?
拘束時間は、始業から就業までの時間で、「労働時間と休憩時間(仮眠を含む)の合計」です。
労働時間は、「運転・整備等の作業時間と手待ち時間(客待ち等)の合計」です。
手待ち時間は、労働者が自由に利用することができる時間であれば休憩時間ですが、完全に労働から解放されず使用者の指揮監督下にあり自由利用ができない場合には、労働時間として取扱うことになります。
休息時間は、「勤務と次の勤務の間の時間」で、労働者の生活時間として全く自由な時間です。
1日の休息は継続8時間以上必要
4週間を平均し、1週間当たりの拘束時間は原則として65時間が限度です。
始業時刻から起算して24時間を1日とし、拘束時間は13時間以内が基本となります。
延長する場合であっても1日16時間が限度です。
ただし、13時間から延長する場合、15時間を超える回数は1週間につき2回が限度です。
1日の休息時間は継続8時間以上必要です。
整理すると以下の通りになりますね。
通常 ⇒ 24時間=拘束時間(13時間以内)+休息時間(11時間以上)
週2回までOK ⇒ 24時間=拘束時間(16時間以内)+休息時間(8時間以上)
ここで注意が必要なのは、たとえば月曜日8時から21時、火曜日6時から22時までの勤務となっている場合です。
1日24時間は、「月曜日8時」を起算として考えることになりますので、月曜日の拘束時間は月曜日8時~21時までの13時間と、火曜日6時~8時までの2時間。
13+2=15時間となります。
火曜日は、始業時間は6時のため、1日の起算が6時からになります。
拘束時間は6時から22時まで、16時間です。
つまり、休息時間を8時間以上確保するためには、水曜日は6時以降の勤務となります。
この場合、月曜日、火曜日で15時間を超える勤務となっていることにも注意が必要です。
長時間労働になりやすいから、休憩確保が大切
休日は、休息時間+24時間の連続した時間をいい、いかなる場合も30時間を下回ってはなりません。
休日として取り扱われるためには、拘束時間が終わる就業時刻から8時間+24時間の連続した時間を確保しなければいけません。
また、運転時間は、原則として4週間を平均した1週間当たり40時間が限度です。
運転開始後4時間以内または4時間経過直後に、運転を中断し30分以上の休憩を確保してください。
ただし、運転を中断しての休憩について、少なくとも1回につき10分以上としたうえで分割することもできます。
ドライバー業務は、労働時間や休憩時間が細かく決められており、また拘束時間が長く長時間労働になりやすい仕事です。
雇用主側として、しっかりとドライバーの休憩、休息時間を確保し、健康管理・事故防止に努めましょう。
労使協定や特例が認められている勤務形態もあります。
また、タクシーやハイヤードライバーに関しては別に基準がありますので、詳細及び不明な点については、最寄りの都道府県労働局、労働基準監督署にお問い合わせください。