古い?まだ心配?結核という感染症

厚生労働省が公表した「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果」によると、2023年の結核罹患率(人口10万人に対して)は8.1であり、前年の8.2に比べ0.1の減少となっています、
2021年に結核罹患率は9.2と結核低まん延国の水準である10.0以下に達し、2023年も継続、アメリカなどの先進国の水準に年々近づき、近隣アジア諸国にくらべても低い水準にあります。
ただ、結核という感染症は、再興感染症(re-emerging infections diseases)に分類されるしぶとい病気ですので、油断は禁物です。

なお、再興感染症とは、「既知の感染症で、すでに公衆衛生上の問題とならない程度までに患者が減少していた感染症のうち、近年再び流行し始め、患者数が増加したもの」を指します。

結核ってどんな病気?

結核とは、結核菌による感染症です。
誰でもかかる可能性がありますが、治療により治る病気です。
感染症法により2類感染症に分類されており、診断した医師はただちに最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられています。
潜伏期間は、一般的に半年から2年程度と、長いのも大きな特徴です。
咳・痰・微熱などの症状が現れ、場合により、血痰、食欲低下、体重減少などがみられるようになります。症状がはっきりと現れにくい高齢者では、食欲低下や体重減少がサインとなる場合もあります。
その後、治療せずに症状が進むと、肺の病変が拡大して呼吸困難に陥ることがあります。また、骨や腸管、腎臓など肺以外の臓器にも病巣を作ることがあります。

感染と発病の違いと治療法

感染とは、吸い込んだ結核菌が肺に定着した状態を指します。
体内に結核菌が存在していますが、特に悪い影響を与えていない状態で、周囲へ感染させてしまう心配もありません。
感染した人が実際に発病するのは1~2割程度で、感染してから6ヶ月から2年後までの発病が多いです。免疫力が低下した時、体力が落ちたタイミングなどに発病することもありますが、一生発病しない方もいるのです。

発病とは、結核菌が体内で増えて病気を引き起こした状態をいいます。
発病の初期は、咳や痰の中に結核菌は出ません。しかし、結核の進行に伴い、咳や痰の中に結核菌が排菌されて、さらに排菌量が増えると他の人にも感染させてしまうようになります。

結核の治療は内服です。
抗結核薬を6ヶ月以上使用します。長期間にわたる内服が必要になりますので、服薬管理が非常に重要になります。
排菌がある場合も、一般的に薬を飲み始めて約2週間程度で周囲への感染の心配はほぼなくなります。
感染の心配がなくなっても内服を続けなければならない理由はなんでしょうか?
抗結核薬は、結核菌が主に分裂する時に殺菌効果を示しますが、結核菌は、他の菌と比較して分裂に時間がかかります。
そのため、排菌の有無に関わらず、症状が消えた後も長期間の服薬が必要になるのです。

結核の予防方法は?

結核の予防法については、予防接種、咳エチケット、定期健診があります。
予防接種は、BCGの定期接種制度があり、生後1歳になるまでにBCGワクチンの接種を受けることになっています。
定期健診については、胸部レントゲン検査を会社の健康診断などで実施しましょう。該当しない方は、自治体の健康診断などで定期的に受けましょう。

<参考>
・ 厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果」

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中山 真樹株式会社ドクタートラスト 産業保健師

投稿者プロフィール

看護師として病棟勤務を経て、現在は企業様を対象に保健師業務を行っております。企業の健康管理室に出向していた経験、また、現在訪問企業で実施している業務からヒントを得て、皆様が知りたいことをお届けしたいと思います。
【保有資格】看護師、保健師、第一種衛生管理者、養護教諭一種
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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