その数値、単体で見ていませんか? 将来の脳・心臓疾患リスクと「二次健康診断等給付」

9月は「職場の健康診断実施強化月間」です。
健康診断は、病気を早期に発見するだけでなく、普段の生活では気づきにくい身体の変化を知り、これからの健康について考えるための大切な機会です。
一方で、健診結果を受け取っても、「A判定だから大丈夫」「少し数値が高いけれど、特に症状はないから問題ない」と、そのままにしている方もいるのではないでしょうか。
健診結果は、その年の「異常の有無」だけを見るものではありません。
前年までの結果と比較することで、自分の身体にどのような変化が起きているのかを知ることもできます。
今回は、健診結果を見るときのポイントから、血圧・血糖・血中脂質などが将来の健康とどのようにつながるのか、さらに、健診結果をきっかけに利用できる「労災保険二次健康診断等給付」についてご紹介します。

健診結果は「一つの数値」ではなく「組み合わせ」で見ましょう

健康診断では、血圧、血糖、血中脂質、腹囲・BMIなど、さまざまな項目を測定します。
ここで意識したいのが、一つの数値だけでなく、複数の項目を組み合わせて自分の健康状態を見ることです。
たとえば、以下のようなことがあるかもしれません。

・ 血圧が少し高いけれど、コレステロールは正常
・ 血糖値が少し高いけれど、体重はそれほど変わっていない

一つひとつの数値だけを見ると、「少し高いだけ」と感じることもあるでしょう。
しかし、高血圧、高血糖、脂質異常、肥満などが重なると、血管に負担がかかり、動脈硬化が進みやすくなります。
動脈硬化が進行すると、血管が硬くなったり、血管の内側に脂質などがたまったりすることで、血液が流れにくくなることがあります。
こうした変化が脳や心臓の血管に起こると、脳卒中や心筋梗塞などのリスクにつながります。
また、動脈硬化は自覚症状がないまま進行することが多くあります。
そのため、「特に体調が悪くないから大丈夫」とは限りません。
そこで、健診結果を見るときには、その年の判定だけでなく、以下の点にも注目してみましょう。

・ 血圧は前年とくらべてどう変化しているか
・ 体重や腹囲は増えていないか
・ 血糖や血中脂質はどう変化しているか
・ 複数の項目で変化が重なっていないか

健診結果は、「正常か異常か」を確認するだけでなく、自分の身体の変化や、今後気をつけたいことを知るための材料として活用できます。

健診結果に表れる変化から、脳・心臓疾患のリスクを考えましょう

前の章でご紹介したように、血圧・血糖・血中脂質などの健診項目は、それぞれを単独で見るだけでなく、全体の変化を見ることが大切です。
では、なぜこれらの項目が健診で確認されているのでしょうか。
その理由の一つが、将来的な脳・心臓疾患のリスクと関係しているためです。
脳卒中や心筋梗塞は、「ある日突然起こる病気」というイメージがあるかもしれません。
確かに、発症時には突然症状が現れますが、その原因となる血管への負担や変化は、日々の生活の中で少しずつ積み重なっています。
高血圧、高血糖、脂質異常、肥満などの状態が長く続くことで血管への負担が積み重なり、動脈硬化が進行することがあります。
つまり、先ほどご紹介した「血圧」「血糖」「血中脂質」「腹囲・BMI」は、それぞれの数値を確認するだけでなく、将来的な脳・心臓疾患のリスクを考えるうえでも重要な情報なのです。
さらに、喫煙、運動不足、過度な飲酒、睡眠不足などの生活習慣が重なることでも、健康への影響が大きくなる場合があります。
脳卒中や心筋梗塞は高齢者だけの病気ではありません。働き盛りの世代であっても、健診結果や日頃の生活習慣を振り返り、早い段階からリスクを減らしていくことが大切です。
たとえば以下のようなできることから始めてみましょう。

・ 塩分の取り過ぎを見直す
・ 野菜や食物繊維を意識して摂る
・ 日常生活の中で身体を動かす
・ 飲酒量を見直す
・ 喫煙している場合は禁煙を検討する
・ 十分な睡眠をとる
・ 健診で異常を指摘された場合は医療機関を受診する

すべてを一度に変える必要はありません。
まずは健診結果から、「今の自分が一番見直したいところはどこなのか」を知ることが第一歩です。
そして、健診結果から脳・心臓疾患のリスクが高いと考えられる場合には、さらに詳しく身体の状態を確認できる制度があります。

健診結果が気になったら、労災保険二次健康診断等給付を活用しましょう

健診結果を確認して、「自分の健康状態をもう少し詳しく知りたい」「将来の脳・心臓疾患を予防するために、何かできることはないだろうか」と感じる方もいるかもしれません。
そのような場合に知っておきたい制度の一つが、「労災保険二次健康診断等給付」です。この制度は、脳血管疾患や心臓疾患の発症予防を目的としたもので、一定の要件を満たす方は、一次健康診断とは別に二次健康診断等を受けることができます。
主な対象要件の一つとして、直近の定期健康診断等において、以下4つすべてに「異常の所見」があると診断されていることが挙げられます。

・ 血圧検査
・ 血中脂質検査
・ 血糖検査
・ 腹囲の検査またはBMIの測定

ただし、対象となるにはこのほかにも要件があります。
一次健康診断で「異常なし」とされていても、産業医等が就業環境などを総合的に勘案し、「異常の所見がある」と判断した場合には、その判断が優先される場合があります。
そのため、「自分は対象になる・ならない」と自己判断せず、気になる場合は産業医や保健師、勤務先の健康管理担当者などに確認してみましょう。
二次健康診断では、血液検査や負荷心電図または心エコー検査、頸部超音波検査などによって、脳・心臓疾患につながるリスクをより詳しく確認します。
さらに、検査だけで終わらないこともこの制度の特徴です。二次健康診断の結果を踏まえて、医師または保健師による特定保健指導を受けることができます。
食事や運動、生活習慣について、自分の状況に合わせたアドバイスを受けながら、具体的な改善方法を考えることができます。


健康診断は、受けることがゴールではありません。
健診結果を確認し、前年からの変化や気になる項目を振り返り、その後の生活や健康管理につなげていくことが大切です。
9月の「職場の健康診断実施強化月間」をきっかけに、今年の健診結果をもう一度見返し、これからの健康について考えてみましょう。

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武内 しおり株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学卒業後より総合病院の総合集中治療室にて看護師として勤務するなかで、「産業保健」に興味を持つようになりました。皆様の「気になる」を産業保健の視点から情報発信できるよう努めてまいります。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者
【詳しいプロフィールはこちら】
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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