2022年6月2日、厚生労働省は2020年度の「特定健診・特定保健指導の実施状況」を公表しました。
本結果によると2020年度の40歳以上の人を対象とした特定健診の実施率は53.4%、特定保健指導の実施率は22.7%。
ともに2019年度よりも低下しており、国が2023年度までの目標として掲げている70%以上(特定健診)と45%以上(特定保健指導)にはまだ道のりは遠いようです。
特定健診の実施率が2019年度とくらべてさらに低下
特定健診は、メタボリックシンドロームに着目し、糖尿病や高血圧などの生活習慣病予防のための保健指導を必要とする人を抽出するために40〜74歳を対象として実施されています。
身長や体重、腹囲、血圧、尿、血液検査(血糖、中性脂肪、HDLコレステロールなど)などが健診項目となっており、年に1回受ける健診です。
特定健診は市町村や健康保険組合などの医療保険者に実施する義務がある一方で、実施率の低い状態が続いています。
2020年度の特定健診の実施率は53.4%と、2019年度と比較して2.2ポイント下がっており、初めて前年度を下回りました。
厚生労働省は受診率低下の要因として、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による外出自粛等の影響であるとみています。
また、実施率自体は特定健診が始まって以降、年々上がっており、2020年度では実施初年度(2008年度)と比較すると14.5ポイント上がっているものの、国が掲げている2023年度までの目標である70%以上を達成するまで、まだ大きな差がある状況です。
2020年度の特定健診実施率を年代階級別で見ると、45〜49歳で最も高く、59.9%でした。
また、性別では男性は58.9%、女性が48.0%で、男性のほうが高いという結果でした。
男性・女性ともに見られた特徴として、60歳以上で低くなる傾向があり、その背景には企業の定年退職が関係していることが考えられます。
一般的に、企業に勤めている間は健康保険組合や協会健保に加入し、退職後は国民健康保険(国保)に加入しますが、国保の特定健診の実施率は全ての保険者種別の中で一番低いという現状があります。
特定保健指導の実施率は2023年度の目標値より依然と遠い
一方の特定保健指導とは、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる方に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポートを行うものです。
特定健診結果をもとに、生活習慣病のリスクに応じて保健指導対象者のレベルが分けられ、支援が行われます。
2020年度に特定健診を受けた人のうち、特定保健指導の対象になった人が18.1%で、2019年度と比較すると0.7ポイント上がっていました。
しかし、2020年度の特定保健指導の実施率は22.7%であり、2019年度と比較して1.5ポイント下がっており、こちらも厚生労働省は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために保健指導が一時中止となった等の影響とみています。
また、国が掲げている目標の45%以上には依然と大きな乖離がある状況です。
メタボの該当者及び予備群の減少率は過去5年で最小
特定健診と特定保健指導はメタボリックシンドローム該当者・予備群を減らす目的で実施されており、実際にメタボ該当者・予備群の対象者数は、実施が義務づけられた2008年とくらべて減っています。
しかし、2020年度のメタボ該当者・予備群の減少率(対2008年度比)は、10.9%であり、2019年度と比較して2.6ポイント減少しました。
厚生労働省の行った調査によると新型コロナ感染拡大後は体重とBMIともに優位に増加する傾向がみられた一方で、身体活動量が有意に低下していたことから、在宅勤務などの働き方の変化や外出自粛が体重増加につながった可能性があると考えられます。
また、2016年度~2020年度のうちでは、減少率(対2008年度比)が一番少なく、国が掲げている目標である25%以上の減少より遠のいた結果となりました。
メタボリックシンドローム該当者・予備群を減らす対策として特定保健指導の推進があります。
対象者の関心の低さ等により実施率が未だに低いという現状があるため、企業として、特定保健指導の実施場所の提供や就業時間内の実施への配慮等、可能な範囲で特定保健指導の実施をサポートすることが大切です。
特定保健指導は保健師や管理栄養士などの専門家より食事や運動などを見直すサポートを受ける機会となるため、受ける対象者の方にもメリットは大きいです。
特定保健指導を受けた結果、体重や腹囲(おなか周り)が減り、健診結果も改善したなどの効果が多くの方にみられ、実際に 「健康や生活習慣を見直すきっかけになった」「自分だけで取り組むと途中で挫折していたが、受けることで運動する習慣が身につけることができた」などの感想もあります。
特定保健指導の実施率を上げることは、社員の生活習慣病リスクの低減や健康の保持増進につながります。
実施率に伸び悩んでいたり外部委託を考えている企業は「産業保健新聞」運営元のドクタートラストをはじめ、専門会社や機関への相談をお勧めします。
<参考>
・ 厚生労働省「2020年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況」
・ 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症流行下における生活習慣の変化について(PDF)」