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「安全配慮義務」はフリーランスにも適用される?
- 2022/7/26
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2022年5月25日、フリーランスの女性ライターが業務委託先の代表取締役からセクシュアルハラスメントを受け、その企業と代表取締役に対し慰謝料や不払いの報酬を求めた訴訟で、支払いを命じる判決が出ました。
個人的に意外に感じ、かつ気づきを得たニュースでもありました。
意外に感じた理由
現在ハラスメント対策が義務化され、多くの企業が、研修を行ったり、相談窓口を設置したりと、体制の整備に取り組んでいます。
企業が責任を負うポイントとしては、法律で「安全配慮義務」が事業主に義務づけられているからです。
しかし、安全配慮義務は「事業主」から「労働者」に対して求められるイメージがありませんか。
「産業保健新聞」運営元のドクタートラストも産業保健サービスを提供する企業として、安全配慮義務という言葉を聞かない日はありません。
これまでは健康管理等の対象範囲として「雇用する従業員」「派遣社員(派遣先・派遣元どちらも)」「出向者」等と考えがちですが、今回の判例でそこがまた大きく変わる可能性が出てきました。
判決のポイント
今回裁判所が認定したハラスメント行為は以下の通りです。(一部)
・ 打ち合わせ時に性的な質問をする
・ 施術中に胸を見せるように要求する、下半身を触る
・ 記事の質が低いなどといい、正当な理由なしに報酬支払いを拒む など計10個
ハラスメント行為を行った代表取締役とともに、契約先である企業に対しても安全配慮義務違反が認められるとし、慰謝料など150万円の支払いを命じました。
個人が訴えられるのはもちろん、注目したいのが、企業に対しても支払い命令が出たことです。
安全配慮義務とは?
安全配慮義務とは、労働契約法5条に下記のように明記されています
(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法
企業は従業員の健康や安全について配慮する義務があるということです。
罰則はないものの、民事上の損害賠償の責任(債務不履行(民法415条)や不法行為(民法709条)や使用者責任(民法715条))を負うこととなり、損害賠償請求の対象になるので、十分に気を付けておかなければなりません。
<参考>
・債務不履行による損害賠償(民法415条):債務者(事業者)がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる
・不法行為による損害賠償(民法709条):故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
・使用者責任による損害賠償(民法715条):ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う
安全配慮義務の範囲
安全配慮義務には職場環境への配慮というものを含まれており、今回のケースでいうと、フリーランス(=業務委託契約)であっても、元請けと下請けの関係のように、指揮命令下に置かれたうえでの業務だった、ということから適用されると判断されたようです。
つまり「雇用関係があるかどうか」が安全配慮義務発生の決定打とはいえないということです。
企業が考えていくべきこと
この判例をもとに、今後フリーランスとの業務委託契約においても、安全配慮義務が発生するとみなされる場面は増えてくると考えていいでしょう。
企業としては、どんな雇用関係であるかを判断材料にするのではなく、契約形態にかかわらずハラスメントを禁止することを強く示していく必要があるのではないでしょうか。