こんにちは、産業カウンセラーの冨田です。
新型コロナウイルスが落ち着かないまま、世の中は2回目の春を迎えました。
春といえば、仕事においては新年度のスタート。
人事異動や新入社員の入社など、職場の顔ぶれも少し変わるのではないでしょうか。
リモートワークであれば、それほど変化は感じないかもしれませんが、互いをよく知ることなく、一緒に業務を進めていく可能性もあります。
コミュニケーションの課題を強く感じた1年だったと思いますが、今日は日常的に起きやすいコミュニケーション問題「ダブルバインド」についてわかりやすく紹介します。
気付かぬうちに実はやっているかも
みなさん、新人さんを教育する中で、こんな会話をしたことがありませんか?
パターン1
先輩社員「わからないことがあったら何でも聞いてね」
新人「はい! わかりました!」
~1時間後~
新人「●●についてわからないので、教えてください」
先輩社員「いやいや、まずは自分で考えてみてよ」
新人「(ええ~……何でも聞けって言ったのに…)」
~1時間後~
新人「先ほど××について対応しました」
先輩社員「ええ?勝手に?なんで聞かないの??」
新人「(ええ~、何をしても文句を言われる……!)」
どうでしょうか?
以外によくある光景だと思います。
どちらの立場も経験があるのではないでしょうか。
パターン2
上司「●●社の件でミスがあったんだけど、理由を説明してもらえる?」
部下「申し訳ありません、実は急な依頼でチェックが漏れてしまい……」
上司「待て待て、言い訳しないで。ちゃんと反省している?」
部下「(言い訳って、原因を説明しようとしたのに)」
求められたとおりに対応したのに怒られる、矛盾したメッセージにストレスを感じますよね。
ダブルバインドとは
「ダブルバインド」とはその名の通り、Double(二重)bind(拘束)を意味し、文化人類学・精神医学研究者のグレゴリー・ベイトソンが発見した理論です。
最初に出された命令と、それと矛盾する命令が提示され、その矛盾した命令から逃れられない状況のことをいいます。
パターン1でいうと、①何でも聞いて(最初の命令)、②自分で考えて(①と矛盾する命令)、③どちらの命令を聞いても怒られる(矛盾から逃れられない状況)となります。
ベイトソンの説では家庭のコミュニケーションがダブルバインドであった場合、その状況に置かれた人が統合失調症に似た症状を示すようになるといいます。
ベイトソンの説は家庭というくくりになりますが、仕事においてもダブルバインドが日常的に繰り返されるならば、まったく関係ないとは言い切れないのではないでしょうか。
きちんと言語化していく
気付かずに矛盾したメッセージを発してしまうことはあり得ます。
きっと言葉にせずとも伝わるだろうといった期待や思い込みがあるのだろうとも思います。
また自分がダブルバインドを受けてきたことで、自分自身のコミュニケーションに取り込んでしまっている可能性もあります。
あ、これやってるかも……なんて思った方は、ぜひもう少しだけ言葉を増やしてみてください。
察してほしいと思っても、その能力のあるなしは個人差が大きいです。
「何でも聞いて」「自分で考えて」という一言指示ではなく、こういう場合はこうしてくれと伝えてみてはどうでしょう。