近年、日本企業の海外進出は増加の一途を辿っています。
現地法人を利用することもあれば、日本から従業員が出張して業務を行うこともあります。
「行く前にワクチン接種をしておかないと……」
何が必要なのか考えたとき、まず最初に思い浮かぶのは予防接種でしょうか。
しかし、途上国への海外出張も増え続けている今、予防接種以外にも心身に対して準備や健康フォローを必要とされるようになってきています。
今回はまず出国前に行っておくべきことについてご紹介します。
① 健康診断の実施(義務です!)
労働安全衛生規則にて、従業員を「6ヶ月以上」の期間、海外で勤務させる場合、健康診断の実施が事業主に義務づけられています。
中高年の方は人間ドックなども利用し、疾患の早期発見・治療を行うことが望ましいです。
※歯の治療も出国前に※
海外滞在中は日本と同レベルでの歯科治療が困難なケースが多いため、虫歯などについては日本にいる間に治療を完了させておきましょう。
※持病がある人※
産業医面談などを通して、海外滞在が可能か判断を行います。
出張が決まった場合も、今後の治療について企業や主治医などと相談しておきましょう。
特に高血圧や糖尿病など慢性疾患を持っている場合、ストレスや食生活の変化で、現地で悪化してしまうこともあり得ます。
(英文での診断書や病院の紹介状が必要になることもあります)
② 予防接種
海外滞在中の感染症を予防するためにはワクチンの接種が欠かせません。
滞在する地域によって推奨レベルが異なりますので、下記をチェックしてください。
http://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html
③ 医療保険
海外滞在中にケガや病気になった時、適切な医療を受けるためには医療保険への加入が必要です。
海外旅行保険では、日本で診断や治療を受けている疾患・歯科疾患などについては原則給付対象外となります。
※自費あるいは日本の海外療育費制度(健康保険)の利用
※労災保険について※
海外出張者⇒特に手続きの必要なく、所属する国内の事業場の労災保険により給付を受けられます。
海外派遣者⇒事前に事業主が労働基準監督署で特別加入手続きを行っておかなければなりません。
海外出張者と海外派遣者の違い
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-7-05.pdf
④ 現地の医療について把握しておく
インターネット等で海外の現地医療の状況について調べることができます。
下記のサイトなどを利用し、滞在先の情報を把握して緊急時に備えましょう。
http://www.forth.go.jp/destinations/index.html
⑤ 渡航者への事前の健康教育
海外生活では日本にいる時と生活環境ががらりと変わることになるでしょう。
食べ物、気候、言語、人間関係の急激な変化は、心身に大きく影響を及ぼす恐れがあります。
起こり得る健康障害に関して、事前にセミナーなどを行い、渡航する本人にどういったリスクがあるのかきちんと理解させておく必要があります。
※メンタル面にもご注意を!※
最近はメンタルヘルス不調への対応も重視されており、特に海外では、現地の従業員と日本の社員との間で板挟みになり、誰にも不調を相談できずに精神疾患が悪化してしまうケースも目立ちます。
気軽に相談できる相談窓口を設けておくなど、企業努力が求められています。
まとめ
日本は衛生環境・医療のレベルが先進国の中でも非常に高いため、海外での生活は大きなギャップを感じることになると思います。
特に発展途上国での勤務の場合、その変化は著しく心身にダメージを与えることになりかねません。
何かあった時のことを想定して、企業の安全配慮義務としてやっておくべきことも多いので、事前に対策・対応を検討し、準備をした上で送り出すように心がけることが大切です。