こんにちは、産業カウンセラーの田野と申します。
これから不定期ではありますが、私が産業カウンセラーとして活動するうえで知ったこと、学んだことを少しでも皆さん仕事や日常生活に役立たせることができるように紹介していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに、皆さんは「産業カウンセラー」についてどの程度までご存知でしょか。
臨床心理士、精神保健福祉士といったように近年ではいわゆる「カウンセラー」と呼ばれる資格にもさまざまな種類があります。
本日は産業カウンセラーについて皆さんに少しでも知ってもらえるよう、かみ砕いてわかりやすくご紹介してみようと思います。
知っている! 聞いたことがある! という方もこれを機会に改めて一緒に学んでいただけると幸いです。
産業カウンセラー資格とは?
保健師や精神保健福祉士と比べてみた違いとしてはまず、国家資格ではなく一般社団法人日本産業カウンセラー協会が発行する民間資格となります。(私も本資格に興味を持ち始めた当初は国家資格だと思っていました)
日本産業カウンセラー協会は1960年に創立され、1970 年には社団法人として認可されたており、50年余りも歴史があります。
産業カウンセラー資格は、精神保健福祉士や臨床心理士にくらべて「比較的受験しやすい」といわれているのも特徴です。
受験資格について
1. 4年制大学や大学院において心理学に関わる単位を一定以上収めたもの
2. 産業カウンセラー協会が実施する講座を修了したもの
上記のいずれかに該当することが挙げられています。
私もそうでしたが、多くの人は2番の産業カウンセラー講座を受講することになると思います。
また、2については、通学制講座と通信制講座の2つから選ぶことができます。
試験の内容についてはあまり詳しく紹介は出来ないのですが、年に一度の実施とされている選択式の筆記試験(4〜5択)と「面接+ロールプレイ」の実技試験の両方に合格する必要があります。
また、実技試験については講座の成績によっては免除になることもあるのですが、詳しい基準等は一切公表されていません。
私個人の体験した限りですと、クラスの半数の方は免除されていたように思います。
その時の講師の先生や年度によって基準は異なる可能性もあります。
もちろん実技試験が免除されなかったからといって試験に不合格になるということではありません!
産業カウンセラーとしての使命
日本産業カウンセラー協会の「倫理要綱」には、前提となる「使命」として次の記載があります。
1 産業カウンセラーは、人間尊重を基本理念として個人の尊厳と人格を最大限に尊重し、深い信頼関係を築いて勤労者に役立つことを使命とする。
2 産業カウンセラーは、社会的現象や個人的問題はすべて心のありようにより解決できるという立場をとらず、勤労者の問題は勤労者をとりまく社会環境の在り方と関連していると捉える。
3 産業カウンセラーは、産業の場での相談、教育および調査などにわたる専門的な技能をもって勤労者の上質な職業人生(QWL:Quality of Working Life)の実現を援助し、産業社会の発展に寄与する。
出所元:「倫理要綱」(一般社団法人日本産業カウンセラー協会)
少し難しくなってしまいましたが、この使命こそが産業カウンセラーが他のカウンセラー資格とは異なる大きな特徴でもあります。
産業カウンセラーの大きな特徴
前述の「倫理要綱」にもあるように、産業カウンセラーは主に「勤労者=働く人びと を支援するカウンセラー」になります。
精神科に入院しているクライエントの治療補助や、学校施設での児童に対するメンタルヘルス対策なども行う臨床心理士などとは主な役割が異なっています。
あくまで主な役割が異なるというだけで、それらのクライエントを産業カウンセラーがまったく相手にしないというわけではありません。
実際に私のクラスにはスクールカウンセラーとしての活躍を目指されている受講生の方もいらっしゃいました。
とはいえ、産業カウンセラーがキャリア支援など産業場面に特化した役割を主にしていることは間違いなく、これが他のカウンセラー系資格との最も大きな違いだと思います。
産業カウンセリングの基本は「人間尊重」
前述にもあるように産業カウンセラーは、働く人の上質な職業人生(QWL:Quality of Working Life)の実現を援助し、産業社会の発展に寄与することを使命としています。
日本の社会全体が先行き不透明な状況のなか、非正規雇用の拡大など働くこと、生きることの困難さが増しています。
しかし、そのような深い悲しみや喪失感、そして大きな不安を抱く人々への援助は、簡単なことではありません。
だからこそ私たち産業カウンセラーは、メンタルヘルスの推進、キャリア・カウンセリング、人間関係開発などの専門的知識と技能、これらの根底にある「傾聴」を大切にしています。
健康経営という大きな枠組みを持って会社全体を動かすことももちろん大切ですが、より対象を個人に向け人を人として尊び、その人の話に真摯に心を傾けること。
このことは日々の会社という組織のなかで最も基本的なことかもしれませんが、私たち産業カウンセラーという立場から、皆さんもすぐに実践することができる術を今後は少しずつご紹介していきたいと思います。