
厚生労働省が発表した2023年の「労働安全衛生調査(実態調査)結果」によると、働く人の約8割の方は仕事に対してストレスや不安を感じています。
特に、春から夏への季節の変わり目は、5月病のように不安感や気分の落ち込みといったさまざまなメンタルヘルス不調が出やすい季節でもありますよね。
メンタルヘルス不調には環境の変化によるストレスや、生活リズムの乱れなどさまざまな要因がありますが、その要因の1つに腸内環境の悪化が関係しているかもしれません。
腸内環境とメンタルヘルス不調の関係
「なぜメンタルヘルス対策に腸内環境が関係しているの?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、メンタルヘルス不調に深い関係のある脳と「脳腸相関」と呼ばれるほど密接なネットワークでつながっているのが腸なのです。
つまり、脳と腸は互いに影響を与え合っており、腸内環境を整えることで症状の改善につながります。
たとえば、試験の前や大事なプレゼンの前に腹痛を感じる、食欲がわかなくなる、便秘、下痢になるなどの経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ストレスを感じると人は交感神経が強く働きます。
緊急時や活動時に優位となる交感神経が働くと、胃腸を動かすエネルギーを体内のほかの機能で使用するために、脳は胃腸に対してその動きを抑制するように指令を出します。
その結果、蠕動運動(ぜんどううんどう)と呼ばれる胃腸の動きが停滞し、消化吸収がうまくできなくなり、不要物が腸内に蓄積することで腸内環境が乱れます。
そのため、ストレスを感じる試験前やプレゼン前には胃腸の不調が起こってしまうのです。
腸内細菌が作り出す神経伝達物質
また、腸は私たちが食べたものを消化吸収するだけではなく、メンタルヘルスに係るさまざまな物質も作り出しています。
・セロトニン
セロトニンの約90%は腸で作られています。
幸せホルモンともいわれ、安心感や幸福感などの心の安定に深く関わり、不足すると気分の落ち込みや不安、イライラの原因になることがあります。
・ドーパミン
ドーパミンの一部が腸内細菌によって作られています。
意欲や快楽、モチベーションに関わり、不足すると意欲の低下や無気力の原因になることがあります。
・GABA
特定の乳酸菌やビフィズス菌から作られています。
ストレスを和らげ、睡眠の質を高める効果が期待されています。
・短鎖脂肪酸食物繊維が腸内細菌によって分解されるときに作られる物質です。
直接的な神経伝達物質ではないですが、腸のバリア機能を高め、炎症を抑えることで、間接的に脳の機能やメンタルヘルスに影響を与えます。
腸内環境が悪化すると、メンタルヘルスに係る神経伝達物質の材料が足りなくなり、不要なものが増えて神経伝達物質を作りづらくなってしまいます。
そのため、メンタルヘルス不調対策には腸内環境を整えることがとても重要です。
腸内環境を整える方法
腸内環境を整えるには食事や睡眠、運動などの生活習慣がとても大切です。
今回はその中でも運動での腸内環境を整える方法をご紹介します。
食事での腸内環境の整え方についてはこちらの記事をご覧ください。
適度な運動は全身の血行を促進し、腸の蠕動運動を活発にします。
また、ストレス軽減にもつながります。
特に、「腸腰筋」という上半身と下半身をつなぐ筋肉を鍛えることがおすすめです。
腸腰筋を鍛えることで、体幹が安定し内臓が正しい位置で保たれやすくなることで、腸の蠕動運動がスムーズに行われやすくなります。
また、血行促進されることで、腸の細胞に必要な栄養や酸素がしっかりと運ばれ、老廃物も排出されやすくなります。
腸腰筋を鍛える運動
・ドローイン
・ニーアップ
腸内環境を整える以外にもぽっこりお腹が気になる方にもすすめの運動です。
座ったまま簡単に行える運動のため、ぜひ取り入れてみてください。
今回はメンタルヘルス対策として腸内環境を整えることについてご紹介しました。
メンタルヘルス対策の新しい方法を探していた方はぜひ腸内環境を整えることを取り入れてみてください。
<参考>
・厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」