
突然ですが、皆さんは昼食後に歯みがきをしていますか?
口腔ケアの一つである「歯みがき」と「労働生産性」には関連があることが報告されており、昼食後の歯みがきは、午後からの集中力向上やリフレッシュに直結すると言われています。
取り入れるべき、非常に有効な習慣ということですね。
なぜ昼食後の歯みがきが生産性に関係するのか、詳しく見ていきましょう。
なぜ、昼食後の歯みがきが生産性に関係するの?
昼食後の歯磨きが生産性に関係する理由は、主に「脳の覚醒」「メンタル面の切り替え」「身体的な健康維持」の3つです。
① 脳の覚醒とリフレッシュ(眠気対策)
自律神経への物理的な刺激
昼食後は血糖値の変動や消化活動によって「副交感神経(休息モード)」が優位になり、どうしても眠気が生じやすくなります。
歯ブラシで歯や歯ぐきなどの口内を刺激したり、冷たい水で口をすすいだりすることで自律神経が刺激され、「交感神経(活動モード)」への切り替えが促されます。
ミント成分による清涼感
多くの歯みがき粉に含まれるペパーミントやメントールなどの香りは、脳の覚醒をサポートし、シャキッとした気分転換(リフレッシュ)をもたらします。
② 集中力の維持と不快感のリセット
オン・オフを切り替えるスイッチ効果
「昼食・休憩」から「午後の業務」へ移行する際、歯みがきを固定のルーティンにすることで、脳に対して「ここから仕事モードに入る」という明確なサインを送ることができます。
口内不快感・口臭不安の解消
口内に残った食べかすやねばつき、口臭に対する懸念は、無意識のうちにストレスや集中力散漫の原因となっています。
口内を清潔で快適な状態に戻すことは、目の前のタスクに集中できる環境を整えることにもつながります。
③ 健康維持と長期的な生産性向上(健康経営)
歯周病やむし歯などの口腔トラブルは、痛みによる集中力低下だけでなく、心疾患や糖尿病など全身の疾患リスクとも関連しています。
日々の口腔ケアで健康を維持することは、長期的な病欠リスクを減らし、安定したパフォーマンスを保つための基盤となります。
では、実際にどれくらいの人が昼食後に歯みがきをしているのでしょうか。
歯みがき、1日に何回していますか?
厚生労働省の調査(2022年)によると、1日2回以上歯をみがく人は79%ですが、3回以上みがく人は28%となっています。
こまめに歯をみがく方は増えている一方で、1日3回以上歯をみがいている人は約3割にとどまっています。
背景には、昼食後の歯みがきが「職場に歯をみがく場所がない」「洗面所が混雑して使いづらい」「ランチ後で時間が足りない」などの理由からスキップされてしまうことも多い、という事情があると考えられます。
このような現状から、今後の労働生産性を向上させる潜在的な伸びしろが大きいと言えるのではないでしょうか。

※厚生労働省「厚生労働省 令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要」をもとに著者作成
とはいえ、昼食後の歯みがきを習慣化するには、環境や時間的制約などさまざまな弊害があり、個人の努力だけでは解決できない問題があることも事実です。
このような状況下で、企業側はどのようにアプローチをすればよいのでしょうか。
企業側が取り組める現実的な対応策とは?
企業側が取り組める方法として、ハード面・ソフト面の両方の視点から見ていきましょう。
① 衛生環境・設備の改善
- 歯みがき専用スペースや洗面台の増設・分離
トイレ内ではなく、給湯室周辺やパウダールームなどに歯みがき・メイク専用の洗面スペースを設置することで、「トイレでみがきたくない」「手が洗えない」といった不満や混雑を緩和できます。 - 洗面台の利用ルールの可視化
既存の洗面台に「手洗い用」「歯みがき用」などの区分けを行ったり、混雑回避のための案内POPを掲示したりするだけでも、使いやすさが向上します。
② 時短・手軽なオーラルケアグッズの導入
- オフィス備品として常備
洗面所に大容量のマウスウォッシュや使い捨てコップを設置することで、歯ブラシを使う時間が取れない方でも数秒の洗口ケアが可能になります。 - 福利厚生として配布
歯みがきシートやシュガーレスガム、携帯用マウスウォッシュなどのケア用品を福利厚生の一環として職場内に配布する方法もあります。
③ 制度や意識の改革
- 時差休憩やフレキシブルな昼休みの導入
昼休みを一斉に取るのではなく、15〜30分程度ずらして取得できるようにすることで、洗面所や休憩スペースの混雑を分散できます。 - 健康経営の一環としての啓発活動
「昼の口腔ケアは午後の集中力向上や口臭予防・むし歯予防に役立つ」といった社内アナウンスやポスター掲示を行い、職場全体で昼に口腔ケアをしやすい雰囲気づくりを進めましょう。
昼食後の歯みがきには、「個人の意識」と「企業側ができる対応」の両方がそろうことが重要です。
従業員一人ひとりの「やりたい・やりづらい」という気持ちに寄り添いながら、社内のニーズや利用状況を踏まえて取り組みを検討することが現実的でしょう。
歯と口の健康を保ちながら生産性向上を図るために、まずは健康経営の一つの取り組みとして検討してみてはいかがでしょうか。
<参考>
・ 左達秀敏、村上義徳、外村学、矢田幸博、下山一郎「歯磨き行為の積極的休息への応用について」(『産業衛生学雑誌』2010年52巻2号67-73頁)
・ 厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要」
。 厚生労働省「歯科口腔保健の推進に向けた取組等について(PDF)」





















