
2026年3月、東京労働局は、「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果」を公表しました。
この調査は、第14次東京労働局労働災害防止計画で定められた「労働者の健康確保対策の推進」に関するアウトプット指標の達成状況を把握するとともに、職場におけるメンタルヘルス対策などの自主的な取り組みを促進することを目的として実施されたものです。
<調査概要>
【実施期間】
2025年9月30日~2025年10月31日
【自主点検対象事業場】
(1)自主点検対象事業場
東京労働局管内の常時使用する労働者数10人以上の事業場から3,500事業場を抽出
このうち、事業場の廃止・移転などを除く3,269事業場を対象。
(2)回答事業場
955事業場
第14次東京労働局労働災害防止計画とは、職場の安全衛生と労働者の健康確保を推進するための5年間(2023~2027年度)の行動計画です。
この計画では、2027年度までに達成すべきアウトプット指標が設定されています。
アウトプット指標とは、計画の取り組み状況を評価するための具体的な目標値のことです。
今回は、第14次東京労働局労働災害防止計画のアウトプット指標の達成状況と、そこから見えてきた今後の課題を見ていきます。
メンタルヘルス対策に取り組む事業場は9割超
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合は91.9%で、目標である「2027年までに80%以上」を達成しています。
昨年度に引き続き、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合は9割を超えており、多くの事業場でメンタルヘルス対策が重要な取り組みとして定着していることがうかがえます。
メンタルヘルス対策の内容を見ると、「メンタルヘルス不調者の相談体制を整備している」(83.7%)が最も多く、「医療機関等へ取り次ぐ体制の整備」(73.6%)が続きました。

出所:東京労働局「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果について 」
メンタルヘルスに関する相談は、専門的な知識や対応が求められることも多く、社内だけで対応することが難しい場合があります。
そのため、産業医や保健師、EAPなどの外部資源の活用や連携をし、必要に応じて専門機関につなげられる体制を整備することが重要です。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の中でも、いまだに相談体制が未整備である事業場は約2割あり、今後の相談窓口の整備や周知は引き続き課題といえるでしょう。
小規模事業場のストレスチェック実施率は50.3%
ストレスチェックを実施している事業場の割合は全体で69.4%でした。
従業員50人未満の小規模事業場で、ストレスチェックを実施している事業場の割合は50.3%で、目標である「2027年までに50%以上」を達成しています。

出所:東京労働局「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果について 」
今回の調査結果から、従業員10人未満の小規模事業場の実施率がいまだ37.1%にとどまり、4割を下回っていることがわかりました。
一方、従業員50人以上の事業場では実施率が99.2%とほぼ100%に達しています。
事業場規模によって実施率に大きな差がみられ、とくに従業員10人未満の小規模事業場で実施が進んでいないことが、全体の実施率を押し下げる要因となっています。
2025年の労働安全衛生法改正により、従業員50人未満の小規模事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられました(施行日は2028年4月1日)。
制度をはじめとした職場のメンタルヘルス対策を推進することは、働きやすい職場づくりだけでなく、生産性の向上や人材の確保・定着、さらには企業価値の向上にもつながります。
小規模事業場のストレスチェック義務化を契機として、小規模事業場におけるストレスチェックの実施率がどこまで向上するのか、今後の動向が注目されます。
産業保健サービスを提供している事業場は90.6%
必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合は90.6%で、目標である「2027年までに80%以上」を達成しています。
取り組み内容では、「定期健康診断結果に基づく保健指導の実施」が77.9%で最も多く、次いで「食事・運動・睡眠など健康に関する教育の実施」が70.1%となっています。

出所:東京労働局「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果について 」
今回の調査結果から、治療と仕事の両立支援に取り組む事業場は52.5%で、約半数にとどまることがわかりました。
近年は、高齢化や就業期間の長期化などを背景に、病気を治療しながら働き続ける人が増えています。そのため、「治療か仕事か」の二者択一ではなく、治療と仕事を両立できる職場環境の整備がこれまで以上に求められています。
治療と仕事の両立支援の対象は、一般的にイメージされやすいがんに限りません。
難病、心疾患、脳卒中、糖尿病、メンタルヘルス不調など、さまざまな疾病を抱えながら働く人が対象となります。
2026年4月1日には改正労働施策総合推進法の施行により、事業主による治療と仕事の両立支援の実施が努力義務とされ、今後の取り組みの広がりがどのように表れるのかが注目されます。
今回の調査から、多くの事業場でメンタルヘルス対策やストレスチェック制度、産業保健サービスが定着していることがわかりました。
一方、小規模事業場におけるストレスチェックの実施率や治療と仕事の両立支援など、法改正を踏まえ、今後も改善が求められる課題が残っていることも明らかになりました。
社会環境が変化するなか、一人ひとりが安心して働き続けられる職場づくりに向けた取り組みが、今後ますます求められるでしょう。
<参考>
・東京労働局「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果について」
・厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」
・厚生労働省「治療と仕事の両立について」





















