
入社直後の「思っていたのと違う……」に寄り添う、メンタルヘルスケアの第一歩
少子化による人手不足が進む昨今、せっかく入社してくれた若手社員に長く元気に働いてもらうことは、どの企業にとっても本当に大切なテーマです。
2026年5月に一般社団法人日本経済団体連合会が発表した報告書「若年社員の活躍推進における5つの課題と対応策」(以下、報告書)でも、若手が直面するリアルな壁が浮き彫りになっています。
今回は、「若年社員の活躍推進における5つの課題と対応策」をもとに、若手社員定着の課題とその対策をみていきます。
入社前後のギャップ「リアリティ・ショック」
課題の一つが、入社前後のギャップによる「リアリティ・ショック」です。
「もっと華やかな仕事だと思っていたのに違うな」といった理想と現実のズレは、想像する以上に若者の心に大きなストレスを与えています。

出所:一般社団法人日本経済団体連合会「若年社員の活躍推進における5つの課題と対応策」
報告書によると、入社後1年未満の離職理由として、どの時期においても「人間関係がよくなかった」「仕事が自分に合わない」「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が上位を占めています。
特に入社3ヵ月未満の超早期においては、「人間関係がよくなかった(52.3%)」に次いで「仕事が自分に合わない(42.1%)」が極めて高い割合となっており、入社直後に感じる強いリアリティ・ショックが浮き彫りになっています。
この時期の不安やモヤモヤをそのままにしておくと、心の体調を崩して休職や早期離職につながってしまうリスクが高まるのではないでしょうか。
「今の若い世代は打たれ弱い」の一言で片付けずに、入社前からポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報も含めて、具体的な仕事内容や職場環境、社風などをありのままに伝え、納得して応募した人を選考すること。
そして入社後は、職場全体でしっかりと迎え入れるの仕組みを作ることが、何よりも大切なメンタルヘルス対策になります。
「ゆるい職場」が本当は不安かも。求める「成長感」とメンタルヘルス
報告書の中で、もう一つ「なるほど」と考えさせられるのが、若手の「キャリアへの焦り」という問題です。
最近は残業を減らす動きが進み、一見すると「働きやすい環境」が増えているように見えます。
その一方で、業務の負荷が少なすぎることやステップアップの道筋が見えず、「自分は他社でも通用するスキルが身につくのだろうか」と不安になってしまう「ゆるい職場」への焦燥感が広がっているようです。

出所:一般社団法人日本経済団体連合会「若年社員の活躍推進における5つの課題と対応策」
報告書によると、現在の職場を「ゆるい」と感じている割合(「あてはまる」「どちらかと言えばあてはまる」の合計)は全体の36.4%にのぼります。
さらに、職場を「ゆるい」と感じている層ほど、退職希望時期が早まる傾向が見られ、「ゆるいと感じる」と答えた人のうち「すぐにでも退職したい」割合は3.5%、「2、3年は働き続けたい(裏を返せば、中期的な退職を視野に入れている)」割合は3.6%となっており、職場のゆるさが若手のエンゲージメント低下やキャリアへの焦燥感に直結していることが示されています。
この「将来が見えない不安」も、大きなストレス要因になります。
体調を守るためには、ただ楽な環境を作るだけでなく、「自分は一歩ずつ進めている」という成長の実感が必要と感じたことは誰しもがあるのではないでしょうか。
定期的にキャリアについての面談を行ったり、先輩たちの歩んできた道を見せたりすることが、若手の心の安定につながることもあります。
最近はリモートワークも増え、昔のように「先輩の背中を見て覚える」というやり方が難しくなりました。
若手社員と管理職の間の「コミュニケーションのすれ違い」や、指導の難しさもありますが、若手社員がこのようない不安を抱えているということを認識することがとても重要になります。
産業医や衛生管理者といった専門スタッフも、ただ「残業時間を減らそう」と言うだけでなく、若手が仕事にやりがいを感じられているかという、一歩進んだ視点でサポートしていくことが求められています。
みんなで育てる、長く健やかに働き続けられる職場へのステップ
若手社員が心も体も元気に、自分らしく活躍できるようにするためには、企業の制度改革と、産業保健による日々のケアがしっかりと手を取り合うことが欠かせません。
定期的なストレスチェックのデータ活用など、「若手が多く集まる部署で、どんなストレスが溜まっているか」を企業全体でキャッチし、職場の環境を少しずつ改善していくことが大切です。
日本では若手のキャリア形成を応援するさまざまな支援策を用意しています。こうした外の力も借りながら、会社全体で若手を育てる体制を作っていく時代が来ています。
若者が「この会社で、これからも健康に頑張っていこう」と思える環境を整えることは、会社の未来を明るくするための、とても価値のある投資です。
参考:一般社団法人日本経済団体連合会「若年社員の活躍推進における5つの課題と対応策」





















