
はじめに
近年、「スポットワーク」と呼ばれる一時的・短期的な雇用形態が注目されています。
スポットワークは、特定の期間や業務に限定された働き方で、従来の正社員や長期雇用と比べて柔軟性が高いことが特徴です。
厚生労働省によると、スポットワークは労働市場の流動性を高める一方で、労働者の健康や福祉に関する課題も浮き彫りになってきました。
スポットワークの増加は、特に若年層や高齢者、フリーランス、パートタイム労働者の間で顕著で、多様な働き方が促進される一方、労働条件の不安定さや社会保障の未整備といった問題も指摘されているようです。
また、スポットワークは、労働者の健康リスクを高める可能性があり、短期的な労働はストレスや過労の原因となりやすく、適切な休息や健康管理が行き届かないケースも見受けられます。
課題と対応策
今後、スポットワークの普及は働き方改革やデジタル化の進展とともに加速していくと考えられています。
企業側は柔軟な働き方を推進し、多様な人材活用のためにスポットワークを積極的に取り入れる動きが見られます。
一方で、労働者の健康や福祉を守るための制度整備や支援策も同時に求められていて、具体的には、以下のような課題と対応策が挙げられます。
1. 労働条件の適正化
スポットワーカーの労働時間や賃金の適正化をする必要があります。
労働時間の管理や休憩の確保、最低賃金の遵守など、基本的な労働条件の整備が重要です。
2. 健康管理の強化
スポットワーカーは、健康診断やメンタルヘルスケアの対象外となる場合が多いため、企業や行政による支援体制の構築が求められます。
たとえば、健康情報の共有や定期的な健康チェックの推進などが考えられます。
スポットワーカーであっても、可能な範囲で他の従業員と同様の健康管理を行うことが望ましいとされています。
3. 社会保障の拡充
雇用形態にかかわらず、社会保険や労災保険の適用範囲を拡大し、スポットワーカーのセーフティネットを強化する必要があります。
なお、雇用保険や健康保険は所定の労働時間や契約期間等の条件を満たす場合に適用されます。
4. 情報提供と教育
労働者に対して、自身の権利や健康管理の重要性についての情報提供や教育を行うことも重要です。
スポットワーカーの健康管理
スポットワークの増加に伴い、産業保健の役割も変化しています。
従来は長期雇用者を中心に健康管理や労働衛生の施策が行われてきましたが、多様な働き方をする方も対象に長期雇用者と同じような健康管理が必要になります。
1. 労働者の健康情報の把握と管理
スポットワーカーも健康診断やメンタルヘルスケアの対象に含め、適切な健康情報の収集と管理を行うしくみが望まれます。
企業は、労働者の健康状態を把握し、必要に応じて早期に介入できる体制を整えることが推奨されます。
2. 健康教育と啓発活動
労働者自身が健康維持や疾病予防に関する知識を持てるよう、スポットワーカーにも健康に関する情報提供や啓発活動を行うことが望まれます。
3. 柔軟な産業保健体制の構築
企業は、雇用形態に応じた柔軟な産業保健体制を構築し、労働時間や勤務場所に応じた健康支援策の導入など、スポットワーカーを含めた包括的な健康管理を推進することが望まれます。
これらの課題から以下のような取り組みにより、従業員のヘルスリテラシーを高める、従業員が長く健康に働けるように働きかけるようにしていく必要があるでしょう。
・ 企業が産業医や保健師を選任し従業員の健康管理を専門職の指導をもとに実践する
・ 従業員のメンタルヘルスの状況を把握するストレスチェックを有効活用し、多様な働き方をする会社でも職場環境改善ができるようにする
・ 相談窓口を開設し、スポットワーカーでもメンタルヘルス、ハラスメントなど様々な相談対応ができるようにする
・ スポットワーカーにおいても健康診断結果などを管理し、産業医や健康管理システムを活用して、結果分析や事後措置を行う
まとめ
スポットワークの普及とともに、労働者の健康と福祉を守るための産業保健の役割は重要性を増しています。
今後、企業としては働き手が減り採用が難しくなると考えられますが、スポットワーカーなど多様な働き手を活かし包括的にケアすることで、採用面でも優位に立ち、戦略的な健康経営を実践できる可能性があります。
<参考>
・ 厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』における留意事項等をとりまとめたリーフレットを作成し、関係団体にその周知等を要請しました。」
・ 厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法が施行されます(PDF)」