
日本では、毎年3月が「自殺対策強化月間」として定められています。
この期間は、社会全体で自殺を防ぐための取り組みを強化し、一人ひとりが自殺問題について考える機会となっています。
厚生労働省のデータによると、2024年の自殺者数は、総数が20,268人と2023年とくらべ1,569人減少し、1978年の統計開始以降2番目に少ない数値となります。
一方、小中高生の自殺者数は527人と2023年の確定値とくらべ14人増加となり、統計のある1980年以降、最多の数値となり深刻な状況となっています。
自殺は個人の問題ではなく、社会全体で支え合うべき課題です。
今回は、3月の自殺対策強化月間の意義や、私たちにできる具体的な行動について考えてみたいと思います。
自殺対策強化月間の目的
自殺対策強化月間の主な目的は、「自殺を防ぐための意識を高めること」と「具体的な支援につなげること」です。
国や自治体、民間団体などが連携し、啓発活動や相談窓口の拡充を行います。
特に、年度末の3月は、仕事や学業の節目を迎える時期であり、生活環境が大きく変わることによるストレスや不安が増加しやすい時期でもあります。
そのため、この時期に重点的な支援を行うことで、精神的に追い詰められた人々が適切なサポートを受けられるようにする狙いです。
この期間中には、各自治体や企業、学校などで、メンタルヘルスに関するセミナーやカウンセリングの機会が提供されることが多くなります。
また、SNSやインターネットを活用した相談窓口の案内も強化されます。
こうした取り組みにより、自殺のリスクを抱える人々の孤立を防ぎ、必要な支援につなげることが期待されています。
自殺を防ぐために私たちにできること
自殺を防ぐためには、専門機関による支援だけでなく、私たち一人ひとりができることも多くあります。
最も重要なのは「身近な人の変化に気づくこと」です。
例えば、以前より元気がない、急に連絡が減った、仕事や学業への意欲を失っているといった兆候が見られる場合、その人が深刻な悩みを抱えている可能性があります。
このようなときは、積極的に声をかけ、話を聞くことが大切です。
また、「あなたは一人じゃない」と伝えることも効果的です。
自殺を考えている人の多くは、自分が社会から孤立していると感じています。
たとえ直接的な解決策を提示できなくても、「あなたのことを気にかけている人がいる」と伝えるだけで、その人にとって大きな支えになることがあります。
加えて、必要に応じて専門機関の相談窓口を紹介することも重要です。
日本には「いのちの電話」や「こころの健康相談統一ダイヤル」など、さまざまな支援機関があります。
社会全体で取り組むべき課題
自殺問題を解決するためには、社会全体の取り組みが欠かせません。
特に、働き方改革や教育環境の見直し、経済的支援の拡充など、個人が追い詰められにくい社会づくりが求められています。
長時間労働や過剰な競争、経済的困窮といった要因は、自殺の大きなリスク要因となります。
そのため、企業や政府が協力し、職場のメンタルヘルス対策を強化したり、生活困窮者への支援策を充実させたりすることが不可欠です。
また、メディアやインターネット上の情報発信も重要な役割を果たします。
自殺に関するセンシティブな情報が適切に取り扱われることで、無用な不安を煽ることなく、正しい知識を広めることができます。
特に、若者にとって影響力の大きいSNSでは、誤った情報が拡散されないよう、慎重な対応が求められます。
まとめ
3月の自殺対策強化月間は、自殺問題に対する社会的な関心を高め、具体的な支援につなげる重要な機会です。
私たちにできるのは、身近な人の変化に気づき、適切な支援につなげること、そして社会全体でより生きやすい環境を整えることです。
自殺は決して個人の責任ではなく、社会全体で解決すべき問題です。
この機会に、私たち自身ができることを考え、行動に移していきましょう。
<参考>
・一般社団法人日本いのちの電話連盟「全国のいのちの電話一覧」
・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」
・厚生労働省「3月は『自殺対策強化月間』です」
記事監修:横野凌(ドクタートラスト 保健師)