人前で話すとき、食事をするとき、大勢の人がいる場所に赴くとき…緊張しすぎていませんか?
妙な緊張をしたり、汗が出る、言葉が上手く出ない、手が震えるといった症状を訴える人がいます。
はたから見ると「人見知りな人」「緊張しやすい人」など、性格的なものと思われがちですが、実はこれ、治療が可能な症状「社会不安障害」の可能性もあります。
どんな症状がある?
社会不安障害の発症率は3~13%ともいわれ、発症する年代の幅広いのが特徴です。
ふだんの仕事は問題なくでき、仲間とのコミュニケーションに支障はないけれども――
- プレゼンテーションや会議の場で、緊張して多量の汗をかき、言葉が詰まってうまく発言ができない
- 大勢の人が行き交う場所(駅や広場など、公共の場)に行くと緊張する
- 食事をしている姿を他人に見られるのが苦痛 など
「緊張しやすい」といったレベルであれば、性格上のものともいえますが、その場面を意識し過ぎて社会生活に困難を来すような人は、治療対象ということもできます。
人はなぜ緊張するのか?
緊張する場面において、人にはさまざまな反応(身体・感情)が生じますが、それは異常なものではありません。
緊張は起こって当然の反応ですし、誰にでもあります。
強すぎるともいえる緊張感は、根底に「人に悪く思われたくない」「嫌われたくない」「失敗したくない」「より良く生きたい」という思いが人一倍強くあるためだといえるでしょう。
他者からの否定的な評価への恐れが強く、必要以上に人の目が気になってしまうという状態です。
緊張や不安が強くなり、結果的に外に出ることや、人とかかわることを避けるようになると、社会生活に支障をきたします。
また、「緊張しないようにしよう!」と、思えば思うほど意識の上にのぼり、その反応に囚われてしまいます。
どうしたら改善するか?
緊張感や不安感が著しく強い場合、SSRIなどの抗うつ薬を服用する方法も考えられます。
抗うつ薬は、主にセロトニンを増やし、不安や恐怖を和らげる働きがあります。
また、必要に応じて抗不安薬を併用し、症状が改善したら徐々に減薬するようにします。
精神科の薬は「依存する」と思われがちですが、治療経過に応じて上手に減薬を行えば、薬に頼らなくても大丈夫な状態になり、いずれは投薬治療を終えることが可能になります。
また、投薬以外の治療法として、認知行動療法もあります。
一番緊張する場面がプレゼンテーションならば、その場面を繰り返し練習し、場面に慣れることを目指します。
まずは家族や友人の前で。
次は気を許せる同僚の前で。
次に2~3人の部署の仲間の前で。
その次は上司の前で…。
段階的に人数や対象のハードルを上げていくことで、場に徐々に自分を慣らしていきます。
なるべく失敗せずに(大失敗を避けつつ、多少のことには目をつむり)、成功体験を積み重ねて行くことで、成功体験は自信となり、自信は不安や恐怖心を打ち消してくれるでしょう。
緊張は生理的反応なので、「一切緊張しなくなる」というのは難しいことですが、経験を重ねることで環境(状況)に耐える力がつき、自信は更なる“やる気”と“気力”を引き出します。
「緊張感が強いのは個人の性格の問題」と捉えてしまうと、個人の努力だけでは克服が難しくなりますが、「症状」として周囲の協力を得ながら取り組むことで「改善」する場合があります。
自然に克服できるのならば、それに越したことはありませんが、難しいようであれば認知行動療法を取り入れてみてはいかがでしょうか。