2015年12月よりストレスチェック制度が施行されたことからもおわかりのように、企業で働く人々のメンタルヘルス問題は、これ以上目を背けることができないくらい大きな問題となってきています。
そんななか、厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、2002年から、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年に1回、取りまとめています。
その「過労死等の労災補償状況」の2015年度分が6月24日に公表されました。
「過労死等」の定義とは?
「過労死等」とは、過労死等防止対策推進法第2条で以下のように定義されています。
業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。
2015年度「過労死等の労災補償状況」
1.脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
(1)請求件数は795件で、前年度比32件の増
(2)支給決定件数は251件で前年度比26件の減、死亡件数も前年度比25件減の96件
(3)「業種別」では、請求件数は多い順で「運輸業・郵便業」181件、「卸売業・小売業」116件、「建設業」111件でした
(4)「職種別」では、請求件数は多い順で「輸送・機械運転従事者」161件、「専門的・技術的職業従事者」118件、「販売従事者」95件
(5)年齢別では、請求件数は多い順で「50~59歳」263件、「60歳以上」233件、「40~49歳」198件
(6)1か月平均の時間外労働時間数別支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」105件で最も多く、「100時間以上」の合計件数は120件
2.精神障害に関する事案の労災補償状況
(1)請求件数は1,515件で、前年度比59件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比14件減の199件
(2)支給決定件数は472件で前年度比25件の減となり、うち未遂を含む自殺の件数も前年度比6件減の93件
(3)「業種別」では、請求件数は多い順で「製造業」262件、「医療・福祉」254件、「卸売業・小売業」223件
(4)「職種別」では、請求件数は多い順で「事務従事者」362件、「専門的・技術的職業従事者」325件、「サービス職業従事者」183件
(5)年齢別では、請求件数は多い順で「40~49歳」459件、「30~39歳」419件、「50~59歳」287件
(6)出来事別の支給決定件数は、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」75件、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」60件
上記の通り、脳・心臓疾患と精神障害ともに労災の申請件数は前年から増えている状況です。
ストレスチェック制度の施行によって、今後、従業員個人が自身のストレス状況を知る機会が多くなり、それに伴い、来年度以降の労災補償の申請はさらに増えることも考えられます。
事業主は、その対策をすぐにでも始めるべきではないでしょうか。