予防接種を受ければ安心か―風疹とワクチン―

2018年は28倍超!~特に大都市圏で増加の一途~

すでに何度もニュースになっているように、現在風疹が流行しています。
2018年1月から12月9日までの週の合計患者数は2,586人となり、2017年の年間患者数93人とくらべ、なんと28倍にものぼります。
都道府県別の患者数では東京都が最も多く865人、神奈川県360人、千葉県355人、埼玉県176人、以降は福岡県、大阪府、愛知県と続いています。
人口の集中している地域はそれに比例して患者数が増えていますが、特に関東圏で流行が見られている状況です。

ワクチンを受けていない世代が存在~ワクチンの歴史~

日本では定期的に風疹の流行がみられ、最近では2013年頃にも大規模な流行が発生しました。
風疹は、同じように発疹の出る「麻疹(はしか)」とくらべて症状が軽いことから「三日麻疹」と呼ばれることがあり、子供の時にかかると大人よりも症状が軽く済む場合が多いため、昔は誰かが近所で感染するとわざわざ移してもらいに行くようなこともあったようです。

風疹の予防接種は1977年から始まりましたが、最初は女子だけだったり、副作用の問題で接種率が低下したりとさまざまな変遷がありました。
現在は就学前に2回接種するのが基本ですが、現在の20代後半〜30代にかけての世代では幼少期に接種していない可能性があるため、感染のリスクがあります。
大人になってから感染すると子供よりも症状が重く、また妊娠20週までの妊婦が感染すると胎児が「先天性風疹症候群」となり、白内障・心疾患・難聴を持って生まれてくることがあるため、現在大きな問題となっています。

ワクチンで抗体ができないこともある

風疹の予防には何よりワクチン接種が大切です。
しかし、子供の頃にワクチンを接種していれば安心していいのかというと、必ずしもそういう訳ではありません。
基本的にはワクチンを接種すると約2週間で抗体がつきます。
しかし、約5%の人は体質の問題で免疫がつきません。
そのため、必ず2回接種することが推奨されていて、2回接種することで免疫を定着することができます。
しかし、それでも約1%の人で免疫が十分につかないことがあります。
基本は2回接種ですが3回接種したとしても、そのことによって特別な副反応が出ることがありませんので、医師に相談の上追加の接種が検討されることもあります。

また、「子供の頃にかかったから大丈夫」と思っている人でも、注意が必要なことがあります。
風疹かどうかの診断は、インフルエンザのように診断キットがあるわけではないので、症状や経過から診断しています。
そのため風疹だと診断されたけれど、実は風疹ではなかったということが実際にあるのです。

風疹の抗体があるかどうかは、血液検査で簡単に調べることができます。
病気の検査ではないので自費になってしまいますが、今は補助を出している自治体も増えているため、心配な方にはぜひ抗体価検査をおすすめします。

アメリカ大陸では2015年に風疹根絶宣言

日本ではこのようにまだまだ風疹の流行が繰り返されており、日本以外でも東南アジアやアフリカ大陸では流行がみられていますが、すでに2015年にはアメリカ大陸で初めて風疹の常在感染の終息が宣言されました。(他地域から帰国後の輸入感染は存在する)
日本も2020年までの風疹根絶を目標としているので、各個人でも風疹抗体価のチェック及びワクチン接種の徹底が望まれています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

田中 祥子株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

企業の健康管理室で働いていた経験をさまざまなかたちで皆さまにお届けします。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 【動画あり】休職者、在宅勤務者をサポート「アンリケアサービス」~その魅力と導入の流れ~

一目置かれる健康知識

  1. 夜勤勤務者は、いつ、何を食べると太りにくい?押さえておきたい食事のポイント
ページ上部へ戻る