集団分析の放置はもったいない!ストレスチェックは組織を救う大きな力になる
- 2019/10/4
- メンタルヘルス
努力義務とされているストレスチェックの集団分析ですが、ストレスチェックを実施した事業場のうち約80%(※1)が集団分析を実施しています。
その集団分析の結果を職場ではどのように活用しているでしょうか?
ストレスチェックの集団分析の結果をみて、「そうそう、うちの会社ってこうだよね」「やっぱりねー」と現状答え合わせのような見方をして終わってしまうのはあまりにもったいないことなのですが、実際にストレチェック後に職場環境改善を実施している職場は、集団分析を実施したうちの約40%程度だそうです(※2)
どうして職場環境改善は浸透しないのでしょうか。
社内における強力な感染症「職場風土」
「隠ぺい体質という風土がそうさせた」
「組織体質が不祥事を引き起こした」
「あの状況下では仕方なかった」
企業不祥事発覚後、涙ながらの謝罪会見で上記のような言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
そこにあったものは悪しき「組織風土」です。
企業の変革に大きく立ちはだかり、企業を破綻にまで追い込む可能性のあるこの「組織風土」は、「暗黙に共有されたその組織独自の思考・行動パターン」といわれています。
そこで働く人たちが、明確にあるいは間接的に感じている、表面化された価値観であり、それによって働く人たちの思考や行動パターンに影響を及ぼすものです。
職場内での暗黙のルール、誰しも必ず一つは思い浮かぶのではないでしょうか。
この組織風土。
目にこそ見えないけれども、各個人ひいては組織に多大な影響を及ぼし、結果的に目に見える職場問題として表れてくるのです。
(良い組織風土も、もちろん目に見える形(業績など)で表れてきます)
ストレスチェックの集団分析では何もわからない!?
集団分析の結果を見て「うちはそういう会社だから」であったり「組織体質ですねー」という現状肯定とも諦めともとれるような言葉をよく聞きます。
そして、こういうワードが出てくるのは、高ストレス者率が20%を超える組織で急に多くなると、日々いろんな企業担当者とお会いする中で実感しています。
まさに、これが「組織風土」が関係しているということです。
ストレスチェックの結果として表面化している問題は、氷山の一角。
原因は氷山の下、水面下にあり、それが「組織風土」なのです。
職場環境改善となると、こういった目に見えない(見ないようにしている?)ところに目を向けていかないといけない。
それこそが職場環境改善が浸透しない一つの要因ではないでしょうか。
たとえば、集団分析の結果から「コミュニケーション不足」や「上司との信頼関係のなさ」という問題が見てとれたとします。
その結果をもってコミュニケーション促進や信頼関係構築のための施策をとる……。
それがもちろんダメなわけではありませんが、その前に、なぜコミュニケーションがうまくいかないのか、なぜ信頼関係が構築できないのか、集団分析の数字から組織に目線を移し、まずは「原因」を探索していく必要があります。
そうしない限り、職場環境改善という業務が増え、組織としては疲弊するだけになってしまいます。
よくストレスチェックでは何もわからないという意見も聞きます。
確かに「原因」は明確に出てこないかもしれません。
しかしながら「結果」は数値として現れてきます。
原因があっての結果、というシンプルな話なのです。
氷山の下の見るか見ないか、それが分かれ目
閉じられた組織の中では、組織風土が組織の「空気」を作り、そこで働く人たちはその空気に感染してしまいます。
それゆえに、その組織の中にいながら、原因となっている組織風土における問題点を見極め、またそれを「問題」として組織全体で取り組んでいくのは、容易なことではないかもしれません。
しかし、ストレスチェックの結果を見たいように見て、聞きたいように聞く……では組織風土を変えることはできません。
ストレスチェックが表している職場環境の「結果」をもとに、心理的安全性をベースとして問題認識の共有を図り、組織としての自浄力を高めていくことは可能です。
組織全体、特に経営層のコミットがあり、問題を見ようとする組織であれば、ストレスチェックが示す結果は、組織を救う大きな力になるものと思っています。
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(※1:厚生労働省調べ)
(※2:厚生労働科学研究班(主任:川上憲人理事長)より、ストレスチェック1年目の実態調査より)