イマドキ新入社員が仕事電話を怖がる理由

4月になりました。
職場では新入社員を迎え、先輩社員も含めて気持ちを新たにする季節。
各職場では、新入社員研修も準備されていることと思います。
そんな新入社員を迎える側の人にぜひ知っておきたいことを今回はご紹介したいと思います。

最近の若者はコミュニケーション能力が低い?

ご紹介したいのは「電話に出れない」「電話対応がストレス!」
このような悩みを抱える若者が昨今増えているという事実。
みなさんはこれを聞いてどう思われるでしょうか?
「電話ひとつ対応できないなんて」「やっぱり近頃の若者はコミュニケ―ション能力が低下しているんだな」と思うのは少し待ってください!
そもそもコミュニケーション能力が何かは、様々な定義が存在しますが、厚生労働省の若年者就職基礎能力支援事業においては、「意思疎通」「協調性」「自己表現能力」と定義されています。つまり、端的に言って一方向ではなく双方向に、聞き・話し・意思疎通を行うことで人間関係を形成・維持していく能力と考えてよいでしょう。
確かに、メールが大きなコミュニケーションツールとなった今、「意思疎通」や「協調性」「自己表現能力」が低下しているように思われがちですが、通話料金の大幅な値下げもあり、ちょっとした電話などは、昔よりもむしろ増えています。

実際に携帯電話での利用状況は、

1位 インターネット検索・閲覧(76%)
2位 メール(76%)
3位 電話(65%)

であり、「電話をしなくなった」というのは、数字上では当てはまりません。
(※スマートフォンに関する調査(2015年)リサーチバンク調べ)

また、現在の若者がコミュニケーション能力が低下していることを否定する調査結果も多くあります。
コミュニケーション能力が低下していないとしたら、若者はなぜ電話対応が苦手になってきているのでしょう?

「会社電話」は自分に選択権がない

今の若者のコミュニケーションを示すキーワードのひとつに、「選択化」というものがあります。
コミュニケーションを「誰と」「いつ」「どこで」とるかを選択し、自分で選択した人・時間・場所でコミュニケーションをとるということ。
彼らにとっての「電話」というのは、あくまで自分自身が持つ「携帯電話」「スマートフォン」のことなのです。
つまり
1)固定電話に馴染みがない
家庭の固定電話が鳴っても、防犯上の観点から、子どもは出ないようにと言われ育ってきた。
電話はかけたい相手に直接つながるものであり、取り次いでもらった経験がない。
⇒会社電話の、外線・内線ってなに? 転送ってどうやるの?

2)誰から電話がかかってきたか表示される
電話は誰からかかってきたかがわかるもの。
表示された相手の名前を見て、今ここで出るか出ないかを選択する。
出る前に心の準備をする時間がある。
⇒会社電話の誰からかかってきたかわからない電話に出るのが怖い。
⇒話したい相手ではない人が出る。
⇒どうやって相手の名前を聞いたらいいの? どうやって取り次いでもらえばいいの?
⇒自分が何をしていても、鳴った電話にすぐに出ないといけない、どうして?

3)周囲に人がいる状態で会話したことがない
基本的には、周りに会話が聞かれない場所で会話する。家庭では、自分の部屋等
⇒会社の電話のように、周りに自分の対応が丸聞こえの状態って緊張する。

能力不足と決めつけないで!

電話だけでなく、LINEやメールでのやり取りが多い場合、やはり上記のように、相手や応対の時間・場所は自分で選択をすることが可能です。
また、どう返事するか、どう伝えるかも、時間をかけて考えることができます。
こうやって育ってきた世代が、社会人になって、自分の知らない相手から、いつかかってくるかもわからない・いつかけたらいいのかも判断できない会社の電話に対応をするということに不安を抱いたり緊張したりするのは、当たり前に思えますよね。
それらは、彼らのコミュニケーション能力の低さではなく、あくまで経験値の低さという問題です。
なので、そういった新入社員に対して、「電話対応くらいは…」という体で接すると、「電話恐怖症」という、実際に業務に支障をきたすレベルにまで追い込んでしまう可能性もあります。
周りも企業名もわからない(聞き取れない)、保留の仕方も電話転送の仕方も・・名乗り方も、相手の名前の聞き方もそれこそ電話のかけ方も分からないという状態を、もはや「普通」の世代だとまずは捉えていくことが、教育する立場としては必要な時代です。
そして。新入社員自身も含めて能力不足と諦めてしまわないよう、しっかりフォローしていく体制が必要です。
時代が変われば、研修内容も見直していく必要があります。
さて、御社の電話対応における研修内容、今の時代に沿った内容になっていますか?

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山口紗英株式会社ドクタートラスト 精神保健福祉士

投稿者プロフィール

メンタルクリニックでのカウンセリング従事の後、「働く人」を理解すべく一般企業にて勤務。その後ドクタートラストに入社。
自然成長は望めない時代だからこそ、「個」と「組織」の両面に、健康という手段をもってアプローチすること大切だと思っています。知識ではなく、明日から職場で使える「スキル」を発信し、働くことが楽しいと思える社会の構築を各現場から作っていけたらと思います。
【保有資格】精神保健福祉、産業カウンセラー、第二種衛生管理者、健康経営アドバイザー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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