腰痛が起こりやすい職業、そして要因は?今からできる対策をご紹介!

突然ですが、「腰が痛い……」というお悩みをお持ちではないですか?

厚生労働省が行った2022年(令和4年)の国民生活基礎調査では、「腰痛」が、有訴者のなかで男女ともに最も多い症状となっています。
私も家族、同僚、友人などから腰痛に悩まされる声をよく聞きます。

男女別の有訴者率上位5症状

国民病ともいわれる腰痛ですが、腰の痛みは「QОL(クオリティ・オブ・ライフ)=生活の質」に大きく関わり、腰を痛めてしまうと日々の業務や生活にも支障をきたします。
なかには「座るのもきつい……」という方がいらっしゃるのではないでしょうか。
誰でもなり得る腰痛の対策は企業や個人にかかわらず行うことが必要不可欠です。

最も腰痛が発生する業種は保健衛生業

厚生労働省が行った2022年の業務上疾病発生状況等調査の「業種別の腰痛の発生割合」をみると、1位が保健衛生業でした。
病院などの医療機関や介護老人保健施設、児童福祉事業、老人福祉・介護事業、障害者福祉事業も含まれます。

次に多いのが商業・金融・広告業です。
商業には飲食料品や機械器具をはじめとするさまざまな卸売業や小売業や理美容業などが含まれ、金融業には銀行業や保険業などが当てはまります。また、広告業には旅行業や職業紹介業など が該当します。

次点に製造業、運輸交通業と続きます。
製造業は野菜、食料品、繊維、木材、化学工業、機械製造業などで、運輸交通業は、鉄道業やタクシー、バスなど道路旅客運送業、トラックなどでの運送業が当てはまります。

〈業種別の腰痛の発生割合〉

全業種平均を大幅に上回る腰痛発生率である保健衛生業における腰痛予防対策の推進は国も重要な課題としています。

介護・看護職や、運送業のように腰痛発生率が高い業種もありますが、それに当てはまらない業種でも、特にデスクワークが多い場合は対策が必要です。

職場における腰痛の要因

厚生労働省が発表した「職場における腰痛予防対策指針及び解説」内で、腰痛の発生には4つの要因があるとされています。

➀腰部に動的あるいは静的に過度の負担を加える動作要因
➁腰部への振動、温度、転倒の原因となる床・階段の状況等の環境要因
③年齢、性、体格、筋力、椎間板ヘルニア、骨粗しょう症等の既往歴または基礎疾患の有無などの個人的要因
④職場の対人ストレス等に代表される心理的・社会的要因

それぞれを具体的にみていきましょう。

動作要因

重量物の取り扱い
人力による人の抱上げ作業
(介護、看護作業などによる抱え上げ作業など)
長時間の静的作業姿勢、拘束姿勢
(立ち作業、椅子に座る作業を長時間続けること)
不自然な姿勢
(おじきや荷物の運搬時にひねる姿勢など)
急激又は不用意な動作
(物を急に持ち上げるなど)

多くの人が行うであろう長時間のデスクワーク作業も動作要因の1つで、重量物の取り扱いなどと同様に腰痛が発生しやすい動作とされています。

環境要因

振動
(車両系建設機械等の操作・運転により腰部、全身に著しく粗大な振動を受けることや、車両運転等により腰部と全身に長時間振動を受けること。
温度・湿度
(寒冷な環境は血流の低下を起こし、多湿な環境は汗の発散が妨げられ疲労しやすく心理的負担も大きい)
床面の状態
(滑りやすい床面、段差等ではスリップをし、転倒をする危険性がある)
照明が暗い
(暗い場所で作業することで転倒や踏み外しのリスクが高まる)
作業空間・設備の配置
(作業空間が整っていないと、不自然な姿勢を強いられ、それが原因で転倒するリスクが高まる)
勤務条件など
(休憩が取りにくい、勤務編成が過重である、就労に必要な教育、訓練を十分に受けていないことなどが影響し、強い精神的な緊張度を強いられ④心理的・社会的要因が生じる)

個人的要因

年齢や性差
(女性は男性よりも筋肉量が少なく体重も軽いことから作業負担が大きくなる)
体格
(体格と作業台の高さ、作業空間とが合わない(身長が高い人が高さの低いデスクを使うなど))
筋力など
(握力、腹筋力、バランス能力)
既往症及び基礎疾患
(腰痛と関連する既往症例(椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折等の腰痛の既往症、血管性疾患、婦人科疾患、泌尿器系疾患など))

心理的・社会的要因

仕事への満足感や働きがいが得にくい
上司や同僚からの支援不足
職場での対人トラブル

こうした心理的ストレスが脳機能の不具合を起こす場合があります。


腰痛発生は複数の要因によって発生、助長される可能性があります。
こうした多種多様な発生要因によるリスクに対して、「職場における腰痛予防対策指針及び解説」では、職場で作業管理や作業環境管理、健康管理を行い、労働衛生管理体制の整備や、社員に対しての労働衛生教育を継続的に行うことの重要性を示しています。
また、上記の内容を踏まえて、ありきたりな対策だけでなく各事業場の実態に即した対策が必要です。

今からできる腰痛予防「座位姿勢に気を付ける」

職場での作業管理、作業環境管理、健康管理も重要ではありますが、自分の腰を常に守ることができるのは自分自身の管理です。

多くの人が一日のうち、長時間「座る」という姿勢をとります。
実は、この姿勢を長時間続けることは腰への負担が大きいと言われています。
長時間同じ姿勢で座ることはもちろん、以下の画像のような腰に良くない座り方になっていないか確認してみましょう。

背中を丸める猫背の姿勢は、背骨が丸まり椎間板への負担が大きくなります。
また、足を組むことで骨盤の歪みや腰の筋肉が張ってしまい硬くなり、足を投げ出して浅く座り背もたれに寄りかかる姿勢は、腰の骨のカーブを変えてしまう可能性があります。
理想的な姿勢、また環境の整え方はこちらをご参考ください。

非常に細かいですよね。

・画面の正面に体を置き、背もたれ付きの椅子に深く腰掛けて背筋を伸ばしましょう。
・腕は机か椅子の肘で支えて、肘の角度が90度以上になり自然にキーボードに手が届くように配置しましょう。
・ディスプレイまでは40cm以上離し、水平目線よりやや下に設置しましょう。
・椅子の高さは調整できるものを選べると理想的です。足裏全体が床に接しているか確認しましょう。
難しい場合は、机を底上げできる継ぎ足があるので活用しましょう。
・画面に近づきすぎてしまい姿勢が前かがみになってしまうので、暗いところで作業しないことも大切です。
・室温は体に負担の少ない17~28度に設定し、湿度は40%以上を保ちましょう。

ここまで理想的な姿勢について説明しました。
しかし、実際には「理想的な姿勢」は無いに等しいのです。
どんな理想的な姿勢でも、同じ姿勢を続けることで筋肉が収縮し続け、その部分に負担がかかり「良い姿勢」ではなくなってしまいます。
長時間飛行機の狭い座席に座り続けることで血行が悪くなり血栓ができるエコノミークラス症候群ですが、長時間のパソコン作業でも起こる可能性があります。

厚生労働省の情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインでは、「一連続作業時間が1時間を超えないようにし、連続作業の合間には10~15分の作業休止時間を設けること」とされています。
1時間に一度は椅子から立ち上がり、姿勢を変えて体に違う刺激を与えて、負担を軽減させリセットすることがとても肝心です。


座る姿勢を整えることはお金をかけなくても今すぐできますよね。
腰痛でお悩みの方、企業の衛生管理のご担当者さまも、職場で起こり得る腰痛発生の要因を振り返り、対策や呼びかけをしましょう。

・厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
・厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」
・厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
・厚生労働省「職場における腰痛予防の取組を!」

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宮野 友里加株式会社ドクタートラスト 管理栄養士

投稿者プロフィール

年間100人以上の特定保健指導、ダイエットサポートを食事面、運動面から行う管理栄養士。
食事に関するアドバイスはもちろん、自分自身がデスクワークを始めてから悩まされている「肩こり・腰痛」「目の疲れ」の予防、改善方法についてもセミナーや執筆活動を通して積極的に情報提供している。
目標は「働く世代の方々にとってが管理栄養士が身近な存在になること」
【保有資格】管理栄養士
【ドクタートラストの特定保健指導サービス詳細はこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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